第58話 作戦会議
「というわけでオウロを助けに行くぞ」
プラタは仲間たちの前でそう宣言した。ここは北にあるホッドミミル王国で、とても寒い。小さな島国で人口は一万人ほどだ。
プラタの仲間たちはニホンアマガエルの亜人で航海士のヒスイ。
バナナスラッグの亜人で総舵手のコハク。
アイアンメイデンという鉄の皮膚を持ち、コックを務めるイエロ。
ヤマビルの亜人で船医のフビ。
これに新しく入った大頭船の治療師で、オークウッドの亜人であるベルフェゴール。
そしてビッグヘッドのロビンヘッドの6名であった。
ちなみにロビンヘッドはスイカほどの大きさで、赤い帽子と手袋に靴を履いている。どれも毛で出来ていた。毛を矢のように放ち、網などの罠を作ることができるのだ。
「オウロを助けに行くのは賛成だけど、作戦はあるの?」
「ないよ」
ヒスイの問いをプラタはあっさりと答えた。その姿はあまりにも堂々としている。
予測通りであったが、思わずイエロも額を手で押さえる。
「さすがプラタだよね~。細かいことなんかどうでもいいんだね~」
「はいです! 作戦なんてプラタには必要ないのです!!」
一方でコハクとフビは絶賛していた。まるでカルト教団を崇拝する信者のようである。
そんなコハクを見て、双子の姉であるヒスイに憐憫の情を抱いていた。
その様子をベルフェゴールが眺めている。ロビンヘッドは猫と遊んでいた。
やれやれと首を横に振り、ため息をはいた。
「……作戦はうちが考えたるわ。プラタはんはその通りに動いてくれたらそれでええ」
その言葉にヒスイとイエロは表情が明るくなった。プラタも彼女の言葉に従う。ベルフェゴールを先生とあがめているからだ。
「ベルフェゴール先生なら任せても大丈夫だ。よろしく頼む」
「まかしいや。せやけどなんでうちのこと先生と呼ぶねん?」
ベルフェゴールは胸をどんと叩くのだった。プラタの彼女を見る目は尊敬の目であった。
ロビンヘッドは猫としゃべれるのか、おしゃべりをしている。
☆
ホッドミミル王国の南方にある港でプラタとピークォド海賊団が勢ぞろいしていた。
シロナガスクジラの亜人であるピークォド・ホーキンスが船長である。
彼女の部下はアムールトラの亜人トラファルガー。
クロサイの亜人サイクロプス。
コアラの亜人コアラーズ。
そして長い間海賊団と離れていたカスピトラの亜人アニトラがいた。船員女性だ。
「お前たち、俺たちはこれから妖精王国に喧嘩を売る。プラタの妹オウロを救うためだ。もしかしたら死ぬかもしれない。だがプラタのためならこの命を捨てても構わないと思っている!」
ピークォドは右腕をあげ、声を張りあげた。
それに応じて他の船員たちも声を上げる。
トラファルガーの部下はキツネで、サイクロプスの部下は猪。
コアラーズの部下はたぬきで、アニトラの部下は猫であった。
全員で200人ほどいる。
「私たちも同じ気持ちだ。プラタは他の男とは違う、思わず腰を振るほどのすさまじさだ!!」
「その通りですわ! 初めてお父様以外の男性に惚れてしまいましたわ!!」
「ぐぅ……」
「コアラーズ寝るなってば」
トラファルガーたちの言葉に、船員たちも盛り上がる。その横でバンドウイルカの亜人スカアハがハンカチを片手に泣いていた。彼女は留守番である。
「ああ、お姉さまたち……。すっかりあの男に心を奪われてしまうなんて。なんて嘆かわしい……」
「スカアハ。俺たちが無茶をすると思っているだろうが、安心しろ。俺たちは必ず生きて帰るからな」
「あら、そこは心配しておりません。なぜならお姉さまたちなら妖精王国など火の海にかえると信じておりますもの。むしろあの男が足を引っ張らないか心配ですわ」
スカアハはけろっとしていた。彼女はあくまで男が嫌いであり、ピークォド立ちに対しては絶大な信頼を抱いているのである。
さて作戦は簡単だ。ピークォド海賊団は東にあるプレスリーに赴き宣戦布告をする。
その間に西にあるベリーの港にプラタたちが向かうのだ。
妖精王国はホッドミミル王国を目の敵にしていた。ピークォド海賊団が来れば海軍が対応するのは必然だ。
妖精海軍は元帥のタリエシン・ハッシュを中心に、大将にドワーフのキング・キンクスと、マッシュルームの亜人のエターナル・ストーンズ。
中将はケットシーのホワイト・サバスに、トロルのピンク・ハッシュ。ドワーフのフロイド・ハッシュにアカギツネの亜人アトムハート・クリムゾンがいるという。
どれも粒ぞろいでひとりで海賊百人を相手にできる実力を持っているそうだ。
「ハッシュってもしかしてビヨンド大佐の身内なのか?」
ヒスイが質問した。それをスカアハが答える。プラタに含むものはあるが、説明はきちんとできた。
「そうです。タリエシンは父親で、ピンクは妹、フロイドはその人の夫です。もっとも血の繋がりはないそうですが。フロイドは大将キングの弟で、大将エターナルの息子はビヨンド大佐の妹スパイスと結婚しておりますわ。スパイスは実の妹だそうです」
それとアニトラの部下であるレジーナは、ホワイト・サバス中将の娘だという。
ほとんどが身内の状態にプラタは呆れていた。海軍家族というがここまで親戚が多いのも問題と思える。
もっともスカアハの説明では、昔はこうではなかったという。
ビヨンド大佐が人脈を利用して結婚を勧めたという。アトムハートの場合は孤児院出身で出世など無理だったが、貴族のクリムゾン家に嫁入りしたため中将になれたのだ。
「というか大佐ってそんなにすごいものなのか?」
プラタは首を傾げた。父親のネプチューンヘッドから聞いたがそれほどの権力を持っているとは思えなかったのだ。
「すごいのは~、プラタだよ~」
「はいです! 大佐如きにプラタをどうこうできるわけがないのです!!」
コハクとフビが叫んだ。まったく空気を読まない発言に呆れていた。
こちらはいつものことなので無視することにする。
「ビヨンド大佐は、階級はともかく、独自の情報機関を持っているのです。その力で貴族や上官の弱みを握り、それらを利用して部下たちを出世させたのです。おそらく18年前に我が国から奪った黄金を利用したのでしょう」
スカアハの言葉にプラタたちは絶句した。なぜそこまで執念を燃やすのか理解できなかった。
さすがのスカアハもわからない。
「とにかくオウロを助けに行くことだ。ビヨンド大佐が何を企んでいるかはどうでもいい」
プラタはそう決意したのであった。これから始まる戦いに対して熱を帯びている。
「あれ、もうお話は終わった?」
猫と遊び終えたロビンヘッドはやっとしゃべった。




