↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/77

第31話 プラタはフェーゴと再会する

「懐かしいな三角湖《トライアングルレイク》。ここに来たのはいつだったろうか」


 プラタは三角湖に来た。大頭船《ビッグヘッドシップ》のエルハヴァ号に乗ってだ。ヒスイとコハクの生まれ故郷でもある。

 フビはヒル系の亜人が住むハナ村出身でここから離れていた。イエロだけここにはいない。

 

「そんなにも経ってないだろう、と言いたいがあんたと付き合っていると一年が十年単位に濃い時間を過ぎたと錯覚するな」

「あのね~、コハクもそう思うの~」


 ヒスイは腕を組みながら答えた。実際は数か月も過ぎていないが、故郷に帰ってきたのは何年ぶりと思えてくる。それほどプラタとの付き合いに中身が濃いというわけだ。


 三角湖は上空から見ると三角形のように見える。その角が川と繋がっているのだ。

 プラタたちは西側の川からやってきた。東に行けば黒蛇河《くろへびかわ》で上流を目指すとエビルヘッド教団の所有するガリレオ要塞にたどり着く。

 北へ行けば塩の町サルティエラに行けるのだ。


 とりあえずプラタたちは東側にあるジライア村へ向かった。この村は水運業を営む村である。西側はヘビの住むオロチマ村で、南側はナメクジが住むツナデ村があった。

 ジライア村では何も得られなくとも別の村で情報収集すればいいのだ。


 エルハヴァ号はジライア村の港に接岸する。そこにカエルの亜人たちが走ってきた。よその船が来れば何をするかわからない。害がないと分かれば入港税を要求するのだ。

 

「あっしはワライガエルのアチャコでございます。本日はどの様な用件で……」


 アチャコと名乗ったワライガエルはプラタに話しかけた。すると横に見知った顔を発見する。


「!? ヒスイお嬢にコハクお嬢じゃありませんか!! おふたりは遠い国に嫁いだはず。するとこの御仁はおふたりの旦那様!!」

「いや嫁いでないぞ! こいつは旦那ではない!!」


 ヒスイはアチャコの勘違いに抗議する。しかしコハクは照れくさそうに語った。


「そうなの~? 確かに嫁いだともいえるよね~」

「コハクは黙ってろ!!」


 くねくねと腰を振り、真っ赤になるコハクに対し、ヒスイは足に蹴りを入れる。ぶよぶよした肌なのでダメージは大したものではない。


「その通りだな。ふたりは俺の仲間だ、死ぬときまで俺たちは一緒だ。だから伴侶と言っても差し支えないな!!」

「お前も黙ってろ!!」


 ヒスイのかかと落としがプラタの頭上にさく裂した。目玉が飛び出し、鼻水が飛び出す。

 もっともすぐに気を取り直すのもプラタならではだ。


「ははは、ヒスイは照れ屋だな。恥ずかしがることはないのに」

「仲間になっても結婚した覚えはない!! 勝手なことを言うな!!」

「そうです! 結婚式を挙げてないのに結婚するのはありえないのです!! 私なら教会で結婚式を挙げたいのです!!」

「フビも黙ってろ!!」


 フビの空気を読まない発言にヒスイはヒステリー気味に叫んだ。

 周りにいる人間はその様子を微笑ましく眺めていた。アチャコは満足そうな表情を浮かべている。


「ヒスイお嬢があんなに生き生きしてるのは初めてだね。赤子の時から知っているお嬢たちが幸せそうで何よりだ」


 アチャコは嬉し涙を浮かべていた。


「そうそうガマグチ親分は留守でございます。ナガレさんが代理を務めてますが正直頼りないですね。代わりにあっしがやっております」

「やっぱりな。でもナガレは荒くれ者を相手にするのは無理だ。ツナデ村で婿養子になって職人になる方があいつにとって幸福だろうな」

「ですが他の連中はそう思いません。むしろ気弱で優しいナガレさんを利用して自分たちの悪事を押し付けようという腹を持つ者もいます。

シロアゴの奴はまさにそれでして、うちも頭を悩ませておりますよ」


 アチャコとヒスイは顔を合わせ、ため息をついていた。ナガレとはヒスイとコハクの弟でナガレガマガエルの亜人らしい。

 気の弱い性格でジライア水運を任せるほどの度量はないという。逆に手先は器用で百年に一度の天才とも呼ばれている。

 生まれてくる村を間違えたと、憐れむ声もあった。


「ところで私たちは人探しをしているんだ。バグベアとゴブリンの亜人が、金色の人魚の女性と鯛の魚人の子供を四人連れているんだよ。そいつらを見なかったか?」


 ヒスイはアチャコに訊ねた。バグベアの亜人、マクレガー・ポヤイスは人魚のオウロたちをエビルヘッド教団に奴隷として売るといったがどこまで本当かはわからない。

 一応、すれ違う船から話を聞いて三角湖へ向かったのはわかっている。


「それって赤青黄色の鯛の魚人の子供ですか?」

「その通りだ。どこへ行ったか教えてくれないか」

「いや、教えるも何もそのひとりは今うちにいますよ」


 アチャコの答えにプラタたちは目を丸くしたのであった。


 ☆


「おお兄者! 待ちくたびれたでござる!!」


 アチャコに連れられてプラタたちは木造の建物に案内された。宿屋らしく多くのカエルの亜人が働いていた。

 そこの食堂へ行くと、テーブルが十脚ほど置かれてあり、広かった。

 まだ昼飯時ではないので散乱としているが、とあるテーブルに赤色の肌の鯛の魚人の子供が米の飯を食べていたのである。

 その向かいにはノミの亜人が座っていた。


「フェーゴ! 無事でよかった心配していたぞ!!」


 プラタは小さいフェーゴの身体を抱きしめた。ノミの亜人はその様子を見て安堵している。


「よかったなぁ、にいちゃんと再会できて。ああ、わしはサスケというもんや。ここの宿屋の主人でガマグチ親分の遠縁なんよ。これでも村で知らんことはあらへんから、なんでも聞いてな」


 サスケは気さくな口調で話しかけた。プラタは弟を保護してくれたことに感謝しつつ、サスケの話を聞く。


 昨日ジライア村に不思議な一団がやってきた。オルデン大陸では見かけない妖精の亜人たちだった。さらに人魚と鯛の魚人に鉄の鎖の首輪をつけていた。

 彼らは上陸しようとしたが金がない。アチャコは不審な集団なので金を吹っ掛けたのだ。それでもバグベアの亜人は、執拗に銭はないと言い張る。

 そこでアチャコは子供をひとり奴隷として売れと勧めた。バグベアの亜人に不審なものを感じたのである。できれば子供たちをすべて買い取りたかったが、難色を示したのだ。


「できるだけ犬畜生のように扱ってや」


 マクレガーと名乗る男はそう言ってフェーゴを手放した。その様子は大変不機嫌であり、残った子供たちは離れ離れになるのを嫌がり、泣き叫んだが取り巻きのゴブリンが蹴りを入れたので黙り込んだ。


 フェーゴは奴隷として買われたが、わけありなのでサスケに預けることにした。もしかしたら不正に奴隷にされたのかもしれない。本当はフエゴ教団の許可なしに奴隷売買は禁止されているのだ。ジライア村にも教会はある、そこを担当する司祭に相談しようと思った。


 ところがその晩サスケの宿に不審者が現れた。サスケは宿屋のおやじだが大人しい性格ではない。理不尽な行為をするものに対しては容赦なく鉄拳を食らわせることはある。

 相手はゴブリンだった。フェーゴを取り戻そうとこっそりと深夜に侵入し、宿の人間を統べて殺すために放火用の油と火打石まで用意していたのである。

 ゴブリンは教会に連行された。おそらくは放火未遂に不法侵入の罪で犯罪奴隷にされるだろう。今度こそナトゥラレサ大陸へ送られるに違いない。重労働で追い詰め、苦しめた挙句殺すのだ。奴隷とは名ばかりなのである。


「なんというかなぁ、マクレガーというおっさんは正気とは思えへんのよ。あんさんらの話を聞いていると、なんで国から追われる重罪人が人質を取ってとんずらしとるのが理解できへんわ」


 サスケは頭をひねっていた。プラタたちから事情を聴いたがそれでもマクレガーの行動は異常であった。

 それはプラタたちも同意見であった。

 そもそもマクレガーは犯罪者として囚われていたのだ。誰が彼を逃がしたかは不明だが、彼のとる行動は逃げることのはずである。

 なのにプラタの家族であるオウロとフェーゴたちを誘拐したのがわからない。


 ちなみにマクレガーが逮捕されたのは、プラタたちが妖精王国海軍、ハロルド・ウエスト大尉を海上で倒した日と同じである。

 もともとマクレガーとハロルドが手を組んでいたのは調査で分かっていた。ハロルドは本国で資格を剥奪する手筈だったのだ。それを海軍少将、ビヨンド・ハッシュが永久に抹消する方へ変更したのである。


 そしてハロルドの死亡が伝えられたのは三日後である。マクレガーたちは留置所におり、外部からの情報は一切入れてなかった。プラタたちが関与していたことなど知る由がないのである。


 そのマクレガーが謎の爆発で脱走した。そしてプラタの義理の家族を襲撃し、オウロと三つ子たちを誘拐したのである。

 すべてはプラタに対する復讐だと大声で叫んでいたそうだ。なぜプラタが関わっていることを知ったのかは不明である。だが推測はできた。脱走を手助けした者がマクレガーに教えた可能性が高い。

 その相手はまったくわからなかった。ヒコ王国では犯人を捜しているが、見つからないでいる。


「まったくわけがわからないな。イエロも行方不明だし、いったいどうなっているのやら」


 プラタは頭をひねるばかりである。フェーゴはすぐに返されることとなった。アチャコは奴隷の購入費として払ったが、ヒスイとコハクの旦那から金は受け取れぬと固辞したのである。もちろんヒスイは否定し、コハクが頬を染めたのは言うまでもない。


「イエロ? ひょっとしてアイアンメイデンのお嬢さんの事かね。わしは知っとるよ」


 サスケが答えた。アイアンメイデンは珍しい種族なのですぐにわかったという。サスケの話では巨大ウシガエルに船を乗せて走るカエル船で一路黒蛇河に向かったそうだ。

 その後にマクレガーたちがジライア村に泊ったというのである。


 話が本当ならイエロはマクレガーたちを無視したことになる。


「あの子もかわいそうなんよ。十年前にアイアンメイデンの住むライゴ村がデカ頭に全滅されてしもうたからな」


 サスケはそうつぶやいた。

 作中のワライガエルのアチャコと、ノミのサスケはトゥースペドラーにも出演しております。

 ちなみにサスケは今回で台詞が付きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。