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間章:20XX

ほぼ、1か月ぶりの更新です。


それでも本編は開始しません。申し訳!


本編にはあまりかかわりのないので読み飛ばしてもおkです。

「朝です。起きてください。ヴラド様」


僕は、使徒の呼びかけによって、目を覚ます。

今は、9月。残暑が厳しくはあるが、真夏の暑さに比べればだいぶ和らいできている。

この9月という表現も世間一般に浸透している。

もともとこの表現は、ユリオプスの月デージーの日と表現していたものを、兄様が面倒の一言で、アラビア数字による月日の数えを広めた結果だ。

便利さと有用さをもって、爆発的に世界中に広まり、100年余りで、アラビア数字を使わない国はなくなったといってもいい。


「あれ?エレンはどうしていますか?」


ふと、昨日一緒に寝たはずのもう一人の使徒が見当たらないことに気づいた。


「あの子でしたら、朝食の準備をしております。必要でしたらこちらに運ばせましょうか?」

「大丈夫です。下に降りて、食事をしましょう」


眠い目をこすりながらも、支度をする。

服は用意されたものを一人で着たが、長い髪を結うのは彼に任せることにした。

鏡台の前に座り、鏡越しに自分を見た。

金眼銀髪、鬼族の宗主たるスヴィック家の証。


(兄様みたいに、黒眼黒髪だったらかっこ良かったのになあ…)


鏡の向こうでは、彼が僕の髪と格闘しているのがわかる。

本人は何も言わないが、僕の髪がサラサラすぎて、髪を結うのが難しいのだ。

それでも、しばらく眺めていると、きっちり髪を結いあげてくれているのを見れば、さすがの年季といえよう。

僕の使徒になったばかりのころに、髪を結わせようとして困り果てていたのはもう昔のことだ。


「ありがとうございます」


髪が結い終わったタイミングを見て、お礼を言う。

注文どおり完璧に結いあがっている。

それを確認してから、僕は固有異能である『色彩変化』を使用して、眼と髪を黒く染め上げる。


「今日から、大学だからね。金眼銀髪ではいけないでしょう」


髪を染めあげる僕を見て、不満そうな彼に言う。

そう、今日から僕は、ここ都市ヴィエナにある大学に通うことになった。

これまでずっと、使徒2人と僕の3人分の生活費…いや、屋敷から何から何まで、兄様が用意してくれた。

クルールコンツェルンの常任理事である兄様はお金に困っていない。

だけど、僕が、使徒二人と充分満足に暮らせるくらいの広い屋敷に住んでいながら、兄様が1DKのマンションに住んでいることを知った僕は、後ろめたい気持ちになってしまった。

兄様は笑って、『一人暮らしだと広すぎると大変なんだよ。ホテル借りた方が楽なくらい』といっているが、僕はこのことをきっかけに働くことを決意した。


「ヴラド様、何も働かなくても、あの男から十分な資金はいただいておりますのに」

「そんなに、兄様に甘えてばっかりいられないよ。それに兄様のことを『あの男』だなんて、まだ300年前のことが許せない?」


彼は、兄様と仲が悪い。いや、彼が一方的に怒っているだけなのだ。

兄様は、自分が悪かったといって、彼に対しては一歩引いた立ち位置でいる。

それでも、兄様のやったことは悪意のあることではなく、兄様が兄様なりに一生懸命生きた結果だと思う。

それに対して、彼が不利益を被ったことはないし、むしろ利益を得ているはずだ。

でも、その話をしても、彼は『理屈ではそうですが、いまだ心の整理がつきません』という。

その話をする時の彼は、少し恥ずかしそうでもある。

そんな関係が、だらだらと300年ほど続いている。


「あ、おはようございます。ヴラド様!」


食堂に降りると、エレンの元気のよい声が聞こえる。

エレンは今日も元気にブロンドの髪をなびかせながら、エプロンをして朝食の準備をしていた。


「おはよう、エレン」


僕は、彼女の腰に手をまわして、軽くフレンチキスをする。

彼女もなれたもので、僕が解放すると、嬉しそうに笑ってまた朝食の準備に戻っていく。

朝食は、使徒の二人と一緒に取る。

これも、兄様に一人で食事をするのはさびしいと相談したところ、『使徒と一緒に食べないの?』と聞かれて、目からうろこであった。

それからというもの、お客様が来ているとき以外は、使徒と食事をとるようになった。

兄様はいつでも常識から外れたところで真っ直ぐに生きている。


「そういえば、ヴラド様は、今日から大学でしたね。本当にお一人で大丈夫なのですか?」


彼女は、心配そうにしている。

昼間は、鬼族とはいえ、能力は限定されて、ただの人間並みになってしまう。そのために心配しているのだ。


「大丈夫ですよ。この都市は治安もいいですし、もし危なかったら全力で逃げますから。それに夜道でしたら、逆に僕の方が有利ですしね」


この地には、もともと聖パルティア皇国という広大な国があった。

しかし、今をさかのぼること180年ほど前に崩壊し、そのあと小国に別れ、散々戦争をした挙句、いくつかの国に分かれて落ち着いた。

その中でも、都市ヴィエナを中心とした国家、バーゼルは永世中立をうたっている。

そうなったのも、クルールコンツェルンがこの都市に本拠を置き、兄様が周囲ににらみを利かしたからだった。

常に時代の先取りをしてきたクルールコンツェルンは、もはや一国やそこらでは太刀打ちできないほどの軍事力と権力を持っている。


「いえ、送迎はお車でさせていただきます」

「あれ?うちは車なかったよね?」

「あの男に車を用意させました。大学への行き来は車でどうぞ」

「ふぅ…だめだよ。そんなに、兄様に甘えては。これから独立しようとして大学に行くのに、その分余計に兄様に甘えていたら本末転倒じゃないですか」

「そんなことはありません。あの男も乗り気で、ストレッチ・リムジンを送ってきました」


ストレッチ・リムジンは兄様が開発した車で、運転手よりも後部座席の快適さを重視してつくられた車だ。

兄様が、手ずからで選んだということは、多分冷蔵庫やテレビ、電話などいろいろついているだろう。

そんな車で、送迎されたら悪目立ちしてしまう。


「もう…二人ともやめてください。そんな不用意に目立って、鬼族だとばれたらどうするのですか。僕は歩いて大学に行きます。それにそんなに遠いところではないのですから。車の方は兄様に返しておいてください」


彼は、その精悍な顔立ちに少し影を落として、残念そうな顔をしている。

そんなに、僕の送り迎えとしたかったのかなと疑問に思う。

だけど、これだけは譲れない。

かつては、治める領地もあったが、今の僕は完全に兄様のひもなのだ。

無駄に偉ぶったりはしたくない。


「ふふふ。そうですね。変なふうに見られたら、変なお友達しか寄ってきませんものね。私は行ったことが無いですけど、キャンパスライフというものを楽しんできてください」


彼女のさりげないフォローが嬉しい。

僕が今日から通う学部は法学部になる。

兄様に相談したところ、この大学の法学部か医学部を進められた。

医学にはあまり興味がなかったために法学部にすることにしたのだが、兄様には何か考えがありそうだ。






朝食が終わり、食後の紅茶とお菓子をいただいていると時計は9時を指していた。

入学式が10時からなので、そろそろ出かけるにはちょうどいい時間になる。

使徒の二人が、玄関まで見送りに来てくれる。

開けられた玄関からのぞいている景色は、戦争があったことなど忘れたかのように平和を享受していた。

それでも、その景色の向こうにある、あの日々を忘れることはない。

あの辛く、孤独であった日々。兄様が居なければどうなっていたかと思う。

今、僕が笑っていられるのはこの二人の使徒のおかげでもあり、兄様のおかげでもある。


「それでは、いってらっしゃいませ。ヴラド様」


僕は、二人に見送られながら、屋敷から出る。


「それでは行ってきます、エレン。そして…」


さんさんと輝く太陽に顔をしかめながら、今日も暑い日になりそうだと思う。


レミーガ(・・・・)さん」


えーと、大体見習い騎士篇から300年後のお話ですね。

吸血鬼なので、彼らは余裕で生きてます。

ヴラド君もロアン君も何気にブラコンになっております

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