↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/10

1-2 一般兵ですが、王宮に連れて行かれました

1-2 一般兵ですが、王宮に連れて行かれました





 二人の騎士の間に挟まれて、逃げ出されないように囲われながら連れて行かれた先は、王宮だった。

 男に挟まれる趣味はないんですけどー。

 ていうかなんで王宮。

 王宮勤めは、士官学校を出た兵士たちの憧れだ。

 一般兵で活躍したり実力を認められたりした者だけが、王宮騎士の勤めとなる。

 俺たち一般人は、そういうことでもしないと、近付けない場所だ。

 街の祭典や式典なんかでは、仰々しく王家が姿を表して話題になっている。

 特に、姫様が美人なんだ。

 前の式典で、街の警備をしていたときに、王家の皆さんを連れた馬車が目の前を通った。

 そのときに間近で見た美しさは、忘れることができない。

 何処か物憂げに外を見つめていた横顔は、まるで絵画みたいだった。

 あんなにきれいな人がいるんだと、感心したものだ。

 そういえば、この姫様は、小さい頃は隠された存在だった。

 今の王子の兄、つまるところ第一王子が不慮の事故だか病気だかで亡くなったあと、実は――と存在を公表されたのが、この姫だった。

 姫には王家のしがらみに囚われないで自由に生きてほしいと思って存在を伏せていたようなのだが、第一王子が亡くなったことで公表せざるを得なくなった、とかいう噂を聞いたことがある。

 だがそんな細かい王家の事情は、姫の美しさの前では、取るに足らないことだった。

 俺も、出来ることならまた直接見たいなと思ったのだが、まさか、こんな形で見かけることができるとは。

 王宮を進んだ先、階段を上って、王室まで辿り着いた。

 玉座に座る王様の両隣に、姫と王子が座っていた。

 こちらを見下ろす姫の眼差しはある意味冷たいけれど、でも、青い瞳がやっぱりきれいで小さく息を呑んだ。

「カイル・フォードだな」

「はっ、はい!」

 王様に名を呼ばれ、びくっとして背筋を伸ばして返事をする。

 仰々しい騎士団も、まるで式典のときのように、姿勢をよくして微動だにしない。


「今日からお前を、姫の護衛兼世話係に任命する」

「――へっ!?」


 王様の口から出てきたのは、信じられない言葉だった。

 一般兵の俺が、姫様の護衛兼世話係!?

 なぜ!? どーして!?

 自慢じゃないが、俺の成績は下の中だ。

 一生懸命やってない。

 罰さえ受けていないが、勲章なんか上げたこともない。

 そんな俺が受ける仕事ではないのではないでしょーか。

「な、なんで!? どーして!?」

「口を慎め」

 思い浮かんだ疑問がそのまま口をついて出てしまったら、隣に立っていた(俺の肩をずっと掴んでいたヤツだ)騎士の一人が低い声で注意を促してきた。んん!? この声、聞き覚えがあるぞ。兜に隠れている顔をじいっと見つめて、ピンと閃いた。

「おまえ、同期のクリスじゃん!」

 本名、クリストファーくんだ。

 そうかそうか、士官学校の同期の中でも真面目で一生懸命だったけど、王宮付きの騎士団に出世していたとは。やるねえ。

「く、ち、を、つ、つ、し、め」

「はーい」

 低い声でゆっくりと言われて肩を竦めながら返事をした。相変わらず真面目だ。

「護衛兼世話係になった暁には、何不自由ない生活を約束しよう」

 えっ、マジで!?

 少し惹かれる。

 一般兵は給料がそんなによくないから、毎日美女と飲み歩くなんてことは出来ないんだよなあ。

 何不自由ないってことは、給料いっぱいもらえて、さらにはきれーなおねーさんと飲み放題できちゃったりして。

「ただし、王宮からは出られない」

 都合の良い妄想を繰り広げて鼻の下を伸ばしていると、王様の現実的な言葉が聞こえてきてハッとする。

「そして、王宮の内部事情を外に漏らせば、死だ」

「ええっ!? 不自由しかなくない!?」

 外に行けないだけじゃなく、死が待っている!?

 何不自由ないどころか、不自由しかない!!

「――姫がな」

 気付いてしまった俺に気付いた王様が、ごほんと咳払いをして、隣に座る姫を見た。

 姫は相変わらず、きれいな顔で、俺を見下ろしているが、何を考えているのかわからなかった。

「きみにしか頼めないと言ってるのだ」

「な、なんでえ……?」

 それこそクリスとか、いやもっとえらい騎士団長とか、頼れるイケメンならいっぱいいるでしょうが!!

 一体全体、なんでどーして、俺なんだ!!?

 しかし、これは……。

 周囲には騎士団の皆様。

 前方には真面目な顔をした王様と、少し困った顔をした王子、そして国一番のきれーな顔のお姫様。

 かくいう俺は、なんの後ろ盾もない、一般家庭の一般兵だ。

 これって、もしかして、拒否権ナシってヤツじゃないでしょうか……。

「一度家に帰るチャンスはあげよう。しかし、準備が出来たらすぐに王宮に来なさい」

「ええ」

「お前は同期だったか。連れて行け」

「はっ」

 王様の言葉に反応した騎士団長に命じられたクリスは、すぐにお行儀の良い返事をして、俺の腕を掴んだ。

 えー。

 家にまで連行っすか。

 どうせなら、街のかわいこちゃん全員に挨拶したいんですけども。

 王室を出る前に振り返ると、姫は、俺のことをじっと見つめていた。

 誰も声を聞いたことがないってのは、本当みたいだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。