87
その八十七
竹膳さんがいうには身代金を要求している奴は態度もデカいが図体もじっさいに大きいとのことであった。
「ジャイアント馬場くらい大きいんですか?」
「そんなもんじゃないですよ。その五倍はデカいです」
「あはははは、それじゃあ、十メートル以上の巨人じゃないですか」
竹膳さんはその巨人の写真を送ってきた。巨人はメカメトロンだった。メカメトロンは王子らしき人物を片手で握って身動きが取れないようにしている。
とりあえず和泉さんとアンダーソンさんにこのことを伝える。シャミーを加えた四人で今夜は作戦会議である。
「四人分のつまみと酒、用意しなくちゃ」
自宅にもどったのちに自転車で近所のスーパーに行き、豆腐やタラコや刺し身の盛り合わせなどを買う。ストックはじゅうぶんにあるが、いずれ飲むので「くらのすけ」も二本買っておく。
まだ目標にした歩行距離には達していないが、ウォーキングは中止にした。きょうは特別である。ぼくは早めに入浴し、晩酌の用意をはじめる。
最初にシャミーが帰ってきた。つぎに和泉さん、最後にアンダーソンさんが旧大伯母邸に集まってくれた。
「まずは一杯やりましょ」
和泉さんは黒ラベル、アンダーソンさんは甲類焼酎をハイサワーのレモンで割って飲んでいた。ぼくとシャミーは「くらのすけ」のぬる燗である。
「先ほど皇帝に連絡しました。戦艦は手配済みです」
和泉さんはお刺身を食べながらこういった。
「あのヤマトみたいなやつですか?」
「ええ」
「でも、王子さんが人質になってると、攻撃もむずかしいですね……」
アンダーソンさんは割るならハイサワーを飲みながら百科事典を拾い読みしていた。
「あっ、いいのめっけた」
「ホントですか!」
「新倉さん、ピンクスネーク使いましょう」
「ピンクスネーク?」
「ええ。ピンクスネークにメカメトロンを縛り上げてもらうのよ」
アンダーソンさんにそのページをみせられた和泉さんは、
「この単語、ぜんぜんわからない。アンダーソンさん、すごいですね」
と感心していた。
「新倉さん、ピンクスネーク呼んでみたら」
とシャミーがいった。ぼくは壺と笛を用意する。
「みなさん、いきますよ」
「はーい(三人そろって)」
「ピンクスネーク・カモン」
デタラメにリコーダーを吹く。
「あっ、出てきた」
ピンクスネークは壺から顔を出した。ピンクスネークもレッドスネークやグリーンスネークとおなじようにおもちゃ然としていた。
「すごーい、ピンクもいたんだね」
ぼくはピンクスネークに縛り上げの件をお願いする。ピンクスネークはお口をパクパクッとやっていた。きっと了承してくれたのだろう。
「スローダウン」
ピンクスネークは壺にもどった。




