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      その八十四


 シャミーは親父の商売をまたぞろ手伝うらしく、翌日朝飯を食べていると、


「お弁当つくって」


 といってきた。


「わかった。とりあえずきょうはあるものでつくるからな」


「うん」


「あしたからはリクエストに対応する。かんがえておきな」


「じゃああしたはオムライス」


「オムライスな。鶏肉もうないからきょう買っておくよ。あと、たまねぎとケチャップも補充しておくか」


「グリーンピースはなくてもいい」


「わかった――ところで何時までやるんだ?」


「五時まで」


「なんだか本格的になってきたな」


「今度正社員になるんだもん」


「え!」


「おとうさんがそういってたの」


 親父とは揉めたくないので、この正社員問題にかんしても沈黙を守ることにする。


 やがてシャミーは自転車に乗って、


「いってきまーす」


 と出ていった。


 ぼくは仲麻呂と留守番である。仲麻呂は麻呂のように高性能ではないらしく、部屋のすみで硬直していた。どうも歩行することはできないみたいだ。


 ぼくは爪でカチカチッとやったのちに語りかけてみる。


「メカメトロン、放っておいちゃダメなんですかね」


「当初はそう思ってたんだけど、メカメトロンが暴走してるっていう噂があるんだよ」


 仲麻呂はサンマルチノさんの声でこうこたえた。


「メカメトロンて、フルオートコントロールなんですか?」


「ちがう。だから誰かが改造した可能性もある。そのへんはまだわからないんだ」


「どんな外見なんですか」


「スマホ出して」


 仲麻呂はぼくのスマホをしばしガン見した。


「おお、写真送られてきている。デカいな。大きさどれくらいなんですか」


「約十メートル」


「みつけたら、どうするんですか」


「廃棄する。危険だから」


「数年まえに製造したファンヒーターとか、たまに大々的に回収してますよね。あんな感じなんですか」


「うん、そうだね。まあこっちは秘密裏に回収して廃棄するわけだけど」


「なるほど、そういうことなんですね――御意であります」


 お昼まえ、愛しの愛さんがお越しになる。ぼくは「四十路の女たち」を鑑賞していたので、あわててそれを押入れに放り込んだ。


「どうぞどうぞ、あがってください。もうすぐお昼だから、なにか食べてってよ」


「つくってくれるの」


「愛さんのためなら、なんでもつくりますよ」


「そんなこといってたら新妻に怒られるわよ」


「新妻?」


「シャミーちゃん。結婚するんでしょ」


「ちがうんですよ。あれはシャミーが抹茶オーレにいたくないから、自分の親父さんにそういってるだけなんです」


「シャミーちゃん、妊娠してるって、いってたわよ」


「あはははは、あの子もしょうがないな」


「若いの好きじゃないとか、いっときながら、誰かさんはそういうことしてたのね」


「誓ってなにもないです。ぼくは愛さんが好きなんですよ」


「でも実際問題として、父のことはやっぱり一人にはしておけないのよ」


 愛さんは、


「これ、祝儀の品」


 といって、新生児用の服やおもちゃをぼくに渡してきた。この誤解はいずれ解かれるだろうが、愛さんとの結婚はやはりむずかしいみたいだ。


「でも、こうやってお昼食べたりとか、そういう交流は今後もお願いしますよ。ね?」


 愛さんは、


「ラジャ」


 といって敬礼した。


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