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その八十三
紅茶を飲み終えた和泉さんは、
「いまから旅館行ってきます」
とダイハツココアで去って行った。
軽自動車はこちらで借りたのか、あのココア自体が時空飛行船なのかは謎であった。
「こっちの免許はなかったはずだけどな……」
三時ごろ、二時間ウォーキングに出ようとしていると、アンダーソンさんからメールが届く。メールの内容は、
「呪術師等総動員で散々調べましたが、メカメトロンの所在は確認できませんでした」
というものだった。ぼくは「お手数おかけしました」と返信する。
シャミーがもどってきた。サッポロ黒ラベルの六缶パックをもっていた。どうやら親父にもらったようだ。
「飲むでしょ?」
「うん」
「冷蔵庫に入れておくね」
普段安い酒を飲むよう心がけているぼくだが、たまにはこういう優良美酒を飲んでもいいだろう。二時間ウォーキングを十キロランニングに変更する。これはコンディションをビール仕様に調整するためである。
「一時間くらいでもどってくるから」
「はーい」
ランニングのあとは風呂に入り、さて晩酌の用意である。シャミーに牛鍋と焼き肉どちらがいいかたずねると、
「牛鍋」
とのことだった。ぼくもどちらかといえば牛鍋のほうがいい。満場一致である。
牛鍋のほかは手を抜くことにする。漬物とかチーズとか、調理しなくてもそのまま食べられるやつを何品か出しておく。
「ねえ、このお酒、めずらしいね」
シャミーが見ていたのは「住乃井、生貯蔵酒」と「くらしにベルク生貯蔵酒」であった。
「それ、さっき和泉さんにもらったんだよ」
「和泉さん、来たんだ」
「うん。山城さんにもおなじやつもらったんだけどね」
「あっ、ホントだ。棚にもある」
シャミーはビールは苦手らしく、山城さんにもらった開封してあるほうの酒を飲もうとしていた。
「シャミー、それ料理酒として使うから、飲むんなら、そっちの開けてないやつ飲みな」
「うん」
ぼくはその二つの酒は中身がおなじなんだとシャミーにおしえる。
「これもおなじなの」
「うん。おれも飲んでみたけど、たぶんおなじだな」
シャミーも交互に飲む。
「どうだ?」
「うん、おなじかも」




