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その八十二
五日連続のお昼寝に挑戦である。しかしきょうはどうもうまくうとうとできなかった。連続記録は四日でストップである。
ぼくは定期的にお昼寝を習慣化させようと取り組んでいるのだが、あんがいこれが定着しないのである。図書館での秒単位の仮眠よりも連続記録が伸びないほど苦戦してしまうのだ。
「シャミーが帰ってきたから、神経がピキッとしちゃってるのかな」
とはいえ、きょうは昼寝をせずにピキッとなっていてよかったともいえる。和泉さんが先ほどのメールを受けて、たずねてきてくれたからだ。
「しばらくです、和泉さん」
「その節はお世話になりました」
「こちらこそ、あのときは助けていただいて」
「あいかわらず、お元気そうですね」
「おかげさまで。ところで王子みつかりましたか」
「ぜんぜん。目撃情報も一つもないんです。従者たちはもう途方に暮れてます」
和泉さんはぼくに渡したいものがあって、お越しになったという。
「ピーチオーレの職場の同僚が話題にしてたものですから」
和泉さんが持参してくれたものは、二リットルパックの「住乃井、生貯蔵酒」と「くらしにベルク生貯蔵酒」だった。
「これ、同僚がいうには中身おなじみたいなんです」
「そうなんですか! それは知らなかった」
「新倉さん、この研究に日々取り組んでおられたでしょ。ですから」
「そうですか。それはわざわざすいません。ありがたく頂戴いたします」
ぼくは山城さんがこの酒の検証に現在没頭していることは伏せておいた。この問題にはいっさい関与したくないからである。マンモス不毛な事柄だからである。
ふと見ると、和泉さんは棚のうえに飾ってある絵画を凝視していた。棚には山城さんが先日もってきた先の二種の生貯蔵酒がまだ残っている。
まずいことになってしまった。ぼくはいま、この二種の生貯蔵酒にたいし、知らぬ存ぜぬを決め込んでしまったのだ。どう言い訳しようか……大ピンチである。
「この絵は、まえはなかったですよね」
「え、絵、絵、ああ、こ、これはですね、笠戸さんという方の作品なんですよ。丸先輩のやつは売れちゃいましてね」
「この絵はどこで描かれたのか、ご存知ですか?」
「知ってますよ。田上温泉旅館って、ところです」
「わたし、そこに行きたいんです」
「A島だから、ちょっと遠いですよ」
和泉さんは立ち上がると、笠戸さんの絵にちかづいていって、さらにまじまじと作品をみていた。生貯蔵酒にはまったく気がついていないようであった。
「そんなに気に入ったんですか、この絵」
「いえ、あの……」
「譲ってもいいですよ。作者も理由を話せば逆によろこんでくれますよ」
「いえ、ちがうんです。この絵のモデル、王子なんです」
「えっ! まちがいないですか」
「ええ。王子自体はかなり盛って描いてあるけど、この時空飛行船は実物とまったくおなじですから」




