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その八十一
ぼくはここで、ザ・ムー原人がメカメトロンにたいし、わたくし新倉三千世を生贄として捧げようとしていたことを思いだした。
シャミーにカチカチッとやってもらったのちに仲麻呂にそれを伝える。
「なになに――ふむふむ」
仲麻呂いわく、ザ・ムー原人サイドにはすでに確認を取っているとのことだった。
ザ・ムー原人たちは信仰の対象として定期的にお供え物やオンラインサロン等は開催しているが、メカメトロンがどの時空のどの国にいるかは把握していないらしい。
「ザ・ムー原人はメカメトロンを信仰してるのか――太陽神みたいに思ってるのかな」
「ザ・ムー原人たちは、あっちこっちの国で熊肉屋さんの屋台出してるんだって。だから噂話みたいな感じで、メカメトロンのまちがった伝説をきいたのかもしれないね」
「どこの国にも試食スターさんみたいに話をオーバーにする奴がいるんだろうな」
シャミーに昼飯の希望をきくと、案の定オムライスが食べたいとのことだった。
お昼はそばにしようと思っていたのだが、予定変更である。ぼくは二人分のオムライスをつくった。冷凍庫の残りの鶏肉をぜんぶ投入した、チキン多めのオムライスである。
「またすぐ帰るんだろ」
「帰らない」
「でもまだ、ちょっとしかあっち行ってないじゃん。もうちょっと親孝行してこいよ」
「お父さんには新倉さんと結婚することになってるって、いってあるの」
「ええ!」
「そうでもいわないと、なかなかこっちにもどれそうになかったの。でもそういったら、旦那さんにわるいから、早く帰りなさいって」
「だいじょうぶかな……そんなこといっちゃって」
「愛さんは、お父さんの研究のお手伝いしなくちゃならないから、新倉さんと結婚はできないみたいよ」
「やっぱり父親のほうを取ったか……」
先月あたりからぼくもそんな予感はしていたのである。まあしかし所詮ぼくは、のらくらものの冷飯食らいである。妻を娶るなんて最初から無理だったのである。
親父から借りた三百万と兄貴から借りた二百万は、とりあえずなにかしらの理由をでっちあげて、あずかっておいてやろう。
「愛さんのこと、どうするの?」
「あきらめるよ」
「わたしがいるから?」
「あはははは、さすがにシャミーをもらうわけにはいかないよ」
「どうして?」
「どうしてって、まあほら、おれ、小柄系童顔熟女大好き紳士だしさ」
「和泉さんとか、アンダーソンさんとか、バザーで手作りクッキー売ってる子とか、みんな熟女じゃないじゃん」
「クッキーの子は三十代半ばくらいだよ、たぶん」
ぼくは話を変えるために、とりあえず和泉さんとアンダーソンさんにメールを送信した。他時空国籍のお二人に、先のメカメトロンのことを頼んでおくのである。
シャミーはお昼を食べ終えると食器を片付けて、
「つぐみさんとおとうさんのところに、あいさつにいってくるね」
と出ていった。




