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その八十
シュゾンちゃんが出立したのちの三日間はプリントゴッコさんの弟以外だれとも話さなかった。弟のデオ氏とは古書店でばったり会ったのである。
「ゴッコさん、元気ですか」
「ええ、おかげさまで」
きょうもいまのところ平和であった。メールもないし電話もない。十時になるのを待ってスーパーに行く。
買い出しから帰ってくると、
「おや」
はなれのなかに人がいる気配があった。出るときにカギはちゃんとかけている。
新種のなんとか原人がジュジュマンとの手合わせを臨んでお越しになっている可能性もあるので、大根を利き手で構えつつとりあえずチャイムを押す。
「はーい」
出てきたのはシャミーだった。そういえばシャミーはこの旧大伯母邸のカギを持っているのだ。ちょっとびくびくしすぎであった。
「帰ってきたのか」
「うん」
「連絡くれればよかったのに」
「あの携帯、ぜんぜん繋がらないんだもん」
お父上のガラケー改造はどうやら失敗だったようだ。
シャミーの横には麻呂がちょこんとすわっていた。いちおうぼくは麻呂にも声をかける。
「新倉さん、この子は麻呂じゃないよ」
「べつのロボット犬か」
「うん、この子は仲麻呂。尻尾の色がちがうでしょ」
仲麻呂の尻尾は黒だった。麻呂が何色だったかはおぼえていなかった。ぼくはてきとうに、
「あっ、ホントだ。黒だ黒だ」
といっておく。
仲麻呂はサンマルチノさんのいわゆる使者としてシャミーに同行してきたという。
「お父さん、新倉さんにお願いがあるみたい」
シャミーが人差し指の爪でカチカチッと仲麻呂のあたまを叩くと、仲麻呂はサンマルチノさんの声でそのお願いとやらをこちらに伝えてきた。
「うーん、そういうことなのか……」
さて、サンマルチノさんがぼくに頼んできたことは、つぎのようなことであった。
サンマルチノさんの会社は以前、メカメトロンという怪獣型の巨大ロボをつくった。
これは外見は怪獣みたいだが、じっさいは危険地帯で作業をする一種の重機なのだそうである。
このメカメトロンの試作品はほかの時空の国でまずは実験されることとなっていた。過酷な環境で使えるかどうかの試験である。
しかし時空管理局の手違いで当初予定されていた国にロボは届かず、そのまま行方不明になってしまったらしいのである。
「それを探してほしいと」
「新倉さん、ほかの時空の人に、知り合いいっぱいいるでしょ」
「いっぱいってほどじゃないけどな」
「その人たちに声かけておいてほしいんだって」
「なるほどね。わかりました。ところで何年まえの話なんだろうね」
「ちょっと待ってね」
シャミーはまたぞろ爪でカチカチッと仲麻呂のあたまを叩いた。
「何年まえの話なの」
「五年まえ」




