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その七十九
これまで何度か披露させていただいていることのなかにいわゆる〝コンコン〟がある。
なにかミスをしたときなどに、かわいくあたまに二個ゲンコをお見舞いする例の所作である。
このコンコンは通常反省する事柄があった場合に敢行されるわけだが、ごくまれに、その逆の場合にも執り行われるのである。
まあそのさいのコンコンはいってみれば音譜付きのコンコンなのである。自画自賛のコンコンということもできる。
さて、先ほどわたくし新倉三千世は、
「コンコン♪」
とかわいくあたまに二個ゲンコをお見舞いさせていただいた。ご覧の通り音譜付きである。なぜ音譜が付いているのか――それは、とってもいいことを思いついたからなのである。
前章ですでに記したが、シュゾンちゃんはさっきまでアブノーマルなナース服を着ていた。しかもシュゾンちゃんはそんなナース服を何着も買っている。そしていま飲んでいるこの甘酒は健康に良く〝飲む点滴〟とも謳われている。点滴を打つのはおもにナースさん、甘酒は飲む点滴。
「もう一回やっちゃお。コンコン♪」
つまりである。シュゾンちゃんはあのナース服を着て甘酒の販売をすればいいのだ。
じつはもうさっき、このことは竹膳さんにメールで伝えてある。もちろん竹膳さんもわたくしジュジュマンの提案だからだろう、たいへん乗り気になってくれた。
「これから開拓しようと思っている国で大いにやってもらいましょう」
「キッチンカーみたいなの、ありますか?」
「ありますあります。すべてはチュツオーラで用意します」
「アブノーマルなナース服以外はね」
「そういうことですな、わはははは」
竹膳さんはいまどこかちがう国に行っているようだが、用が済み次第、こちらにお越しになるそうだ。
「これでニート塾ってやつも体裁がつくぞ。しめしめ」
五時すぎ、竹膳氏到着である。
「新倉様、さっそく、その子のウチに行きましょう」
「いまからですか?」
「そうです。善は急げですよ。ささ、行きましょ行きましょ」
竹膳氏のクルマで向かう。
クルマのなかでおききしたのだが、竹膳さんはなんでも最初はチュツオーラ製菓のバイト掃除員だったそうである。それがいまでは幹部クラスにまで出世しているのだ。
「そういえば竹膳さんて、やることがなんでも早いですもんね。出世する人って、やっぱりそういう人なのかな」
「思ったことはすぐ実行する。その娘さんも、わたしはぜったい説き伏せますよ」
宣言通り竹膳さんは猛烈な情熱をもってシュゾンちゃんをスカウトした。シュゾンちゃんも立派なもので、それに、
「やります」
と即答したのちに竹膳さんに例のアブノーマルなナース服まで着てみせていた。
「おお、いいですなー」
二人は明朝出立することと決まった。
竹膳さんに、
「どうかお母様も、お召しになって」
と頼まれたシュゾンママは、かなりノリノリでピンクのナース服を着ていた。ちなみに小柄系童顔熟女大好き紳士のぼくは、いうまでもなく、娘よりもその母のアブノーマルな姿に感銘を受けていたのだった。
「お母さんお母さん、あのう、こっちのですね、穴空いてるやつのほうもですね、ぼく、ちょっと着てほしいかなーとか、内心思っちゃったりしているんです」




