↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/91

59


      その五十九


 さて、ここは、いわゆるひとつの牢屋である。


ぼくはザ・ムー原人の国に到着するなり、すぐここにぶち込まれたのである。


 とりあえずペットボトルの水をリュックから出して飲む。


「ん!」


 足音がきこえてきた。


素早くペットボトルをしまう。


「おい、お知らせだぞ」


「はい」


「貴様の刑が確定しそうだ」


「はあ」


「知りたいか?」


「ええ、まあ」


「懲役三〇〇〇年から四〇〇〇年だ」


「またまたぁ」


「死刑の可能性もあるぞ。ギャハハハハ」


「もっと軽くしてくださいよ」


「それはおれにいってもダメだぜ。もっと上の人に訴えるんだな」


 下っ端のザ・ムー原人は木製の内格子にしっかり錠前をかけると去って行った。


「えらいことになったな……」


 もう一度ぼくは水を飲む。


スマホをみると、山城さんからメールが入っていた。


「きき酒しながらマジナイする人もいるみたいです。いまツテをさがしてます」


 というようなことが記されている。


「きき酒か――『蔵だより』と『蔵そだち』は、じっさいおなじ酒なのかな……」


 今後ぼくは、山城さんとこのような検証はできなくなるのだろうか……急激に寂しさが込み上げてくる。


 山城さん、丸先輩、戸賀先輩、愛さん、シャミー、ピカチューくん、手作りクッキーを売っている小柄な子――ぼくはいろいろな人を思い浮かべた。


そして、もう二度とこの人たちに会えないのかもしれないと思うと、泣き出しそうになった。


「深くかんがえちゃダメだ。希望をもたなくちゃ」


 とりあえず一縷の望みを託して義姉にメールを送ってみる。


「抹茶オーレ帝国に用があって行ったら、ザ・ムー原人に捕まっちゃいました。現在はそのザ・ムー原人の国にいます。城内の牢屋に入れられています。この牢屋は水戸黄門感があります。大江戸捜査網感もあります。ちなみに死刑の可能性もあるそうです。助けてください」


 いちおう送信されたみたいだったけれど、これを読んでもおそらく義姉は冗談だと思うだろう。


誰だってそうだ。


 四時間後、食事がはこばれてくる。


チロルチョコ一個である。


「あんまりですよ」


「つべこべいうな」


 ぼくはチロルチョコを食べる。


「なんか不安になってきたな……楽観的にかんがえよう」


 しかし悪いことしか、かんがえられなかった。


「スマホは充電を減らしたくないし、本でももってくればよかったな」


 ぼくはリュックに「五十路の女たち」が入っているのを思いだした。


「とりあえず、あの写真集でも鑑賞するか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。