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その五十八
バカデカい男たちも、そのあとぼくの目のまえにすわった店長っぽい男も、みんな大きいマスクにゴーグルメガネをかけていた。
ゴーグルは七色に光っていて、相手の表情はわからない。
「おまえは嫌がらせでペットボトルを出したのか?」
「いえいえ。ただ単に飲むためですよ。事前に断りましたし」
「ペットボトルの水とはいわなかっただろ」
「ええ、それはまあ」
「おまえ、おれたちがペットボトル苦手だと知ってて、いじわるしたんだろ」
「まさか」
「ホントのことをいえ!」
「ホントですよ」
「ぶん殴られたいのか」
「ぶん殴られたくないですよ。お願いしますよ――ん! ペットボトルが苦手……」
ぼくはここでピンときた。
この世のことならなんでもできる神々の父氏はペットボトルを配置しておけばザ・ムー原人は近寄ってこないといっていたのだ。
ペットボトルのワインよりビンのワインのほうが好きだとか、そういう人ならけっこういるけれど、ペットボトルをリュックから出したくらいで、こんなに取り乱して激昂するなんて普通はありえない。
ということは、つまりこうである。
「ああ、わかった。お宅さんたち、ザ・ムー原人でしょ」
「なに!」
「ほらっ、動揺しちゃってるもん。やっぱりザ・ムー原人なんだ」
「貴様、われわれを知っているのか」
「ええ、知ってますよ。日本も侵略しようとしてるんでしょ。欲張っちゃダメですよ。なんでも腹八分目。大伯母さんも、腹八分目を心がけてたから長生きしたんだもん」
「そうなのか」
「ええ。旦那もクマとか食べまくってるんでしょ、肥満は万病の元ですよ。あっ、そうかそうか、だからこの店、熊肉を売りにしてるんだね。仕入れから自分たちでやってるんだね」
「よく知ってるじゃないか――で、長生きしそうか」
「いまのところ健康ですよ」
「そうか、それはよかったな」
「おかげさまで」
「はい、城に連行」
「え」
バカデカい男たちに担ぎ上げられると、ぼくは大型船のようなものに放り込まれた。
「なにするんですか!」
「ザ・ムー原人号、発進用意」
「ちょっとちょっと、どこ行くんですか」
「発進!」
「ままま待ってください、ちょっとちょっと、わー、あなたたち、あなたたちー」
大型船は空に飛び立った。
そしてしばらく飛行すると誰かがこういう。
「ワープ!」
「えっ、ワワワ、ワープって、ワープしちゃったらワープしちゃったらぁぁぁ」
このあとぼくは気を失う。
「くらのすけ」と「鬼ころし」と「ブラックニッカ」と「すごいも」の二十五度をビッグカツとキャベツ太郎と蒲焼さん太郎とポテロングをつまみつつ同時進行でがぶ飲みしても、こんなふうには卒倒しないだろう。




