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その五十六
もより駅ちかくのコンビニでシャミーの写真をプリントしてから電車に乗る。
やがて鷲宮駅に到着すると、ぼくはスマホのアプリをつかってバザーが開催されている幼稚園跡地を探した。
「あの信号を右か」
たしょう苦戦したが、なんとか開催地にたどり着くことができた。
便利な世の中になったものである。
幼稚園跡地を探すのには苦戦したけれど、田辺さんは思いのほかすぐみつけることができた。
旗もすぐわかったし、ニット帽も目立っていたのである。
ぼくは声をかけた。
「ああ、すいません。真壁から話はきいてます」
「『五十路の女たち』ください」
「はい! ありがとうございます」
ぼくは二万円を渡す。
田辺さんは麦川いづみの写真集をサービスで付けるといってくれたが、そちらはやんわり遠慮しておいた。
麦川いづみは何の問題もない。
じつは真のど真ん中である。
ただ今回は五十路に集中したかったのである(その写真集はすでに所有しているという説もある)。
さて、おつぎは新田駅である。
電車にしばらく乗り、まずはパスモをピッとやって改札口を出た。
「抹茶オーレ帝国は水よくないから買っておこ」
天然水を駅前のスーパーで購入し、リュックに詰める。
〈うなぎ食堂〉で買ったたぬきそばの食券を改札口の例の機械に入れて駅構内に入る。
電車がやってきた。
それに乗って春日部駅で降りる。
「マ・シェール!」
たしかに抹茶オーレ帝国である。
先日泊まったホテルも向こうにみえた。
こちらの国ではスマホは繋がらないので、ぼくはもよりの公衆電話に四半世紀以上財布に君臨している上村香子のテレホンカードを差し込んでサンマルチノさんに連絡する。
「早々にすいません」
「駅前で待ってますから」
サンマルチノさんは今夜のディナーに誘ってくれたが、ぼくは辞退した。
理由は単純である。
この国にはうまいものがないからである。
三十分ほどでサンマルチノさんはやってきた。
「シャミーは春に帰るといってました。これ、手紙です」
「すみません」
「あとこれ、シャミーの写真です」
「おお!」
「あはははは、変わりましたか?」
「うん――やっぱりちょっと大人っぽくなってるね」
サンマルチノさんは何度もお礼をいっていた。
これから午後の会議があるらしく、抹茶オーレ帝国を案内できないのを詫びていたが、そもそも観光で来たわけではないので、それはぜんぜん問題なかった。
マンモスノープロブレムである。
サンマルチノさんは専属の運転手に目的地を告げると、クルマで去っていった。
「ん!」
ロータリー付近で茶色い髪の三十前後の女性が緑色の髪の男三人になにかいわれていた。
女性は三人組の男たちにあたまをさげている。
「どうしたんですか?」
ぼくは茶色い髪の女性に声をかけた。
「因縁つけられちゃってるの」
「お宅さんたち因縁つけてるのですか?」
「いや、髪の毛栗色だからさ、あれ、旦那は黒いね。染めてるの?」
とりあえずぼくはケント・デリカットのものまねで対抗することにした。
「チッガウヨォ! ソジャ、ナイヨー!」
「わあ、なんだこの人、なんでこんなにムキになってるんだ」
三人組の男たちは逃げていった。




