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その五十五
丸先輩を見送ったのちに、とりあえず真壁さんに電話をかける。
「もしもし、先日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「チケット、すみません」
「いえいえ」
真壁さんの知り合いの五十路ものを売っている人は、鷲宮駅から歩いて二十分くらいのところにある空き地であした店を出すという。
「鷲宮駅って、降りたことないな」
「東武線ですよ。東武スカイツリーライン」
真壁さんは五十路の写真集を売っている田辺さんという人の写真を送ってきた。
青空市で本を売っている田辺さんはまるポチの付いた派手なニット帽をかぶっていた。
「あした行ってみますよ」
「そうですか。じゃあわたし、田辺に連絡しておきますね」
真壁さんはしばらくしてからもう一枚写真を送ってきてくれた。
店のまえに出している旗の写真である。
「タナベ」とカタカナで記されているその旗とまるポチのニット帽を目印に探していけば、まあなんとかなるだろう。
さて、そろそろ入浴、そして晩酌である。
今晩のシャミーのリクエストはボロネーゼのスパゲッティであった。
わたくし新倉三千世はスパゲッティに一時期凝っていたことがある。
トマト缶も紙パックの赤ワインも買ってきたので、本日はガチバージョンのボロネーゼである。
「よし、いっちょ上がり」
サラダもつくって、いよいよ晩酌開始である。
「たまには赤ワイン飲むか」
「その湯呑みでいいの?」
「うん、これでいいや」
赤ワインを湯呑みでグビグビやりながらシャミーにあした抹茶オーレ帝国へ行く旨を伝える。
例の手紙は、
「もう書いてあるよ」
とのことだった。
「偉いな、ちゃんと書いたんだ」
「うん」
ぼくはあす、鷲宮駅に行くついでに東武線でそのまま新田駅にも行って、例の特権を実行してみようと思っている。
サンマルチノさんに早く手紙を渡して安心させてあげたいのだ。
もちろん放っておくのもちょっときまりがわるいので、早く片付けてしまいたいという気持ちもある。
まあいったいにぼくはせっかちなのだ。
シャミーはボロネーゼをおいしいおいしいと食べていた。
まあ自分でもうまくつくれたと思う。
シャミーは赤ワインは苦手だということで、酒はいつもの蔵シリーズだった。
今晩のぼくはボロネーゼ用に中栓を抜いたので紙パックの赤ワインを飲んでいるけれど、ボロネーゼは日本酒にもかなり合うと思っている。
スパゲッティ、サンドイッチ、シチュー、豚汁、まあなんだって、酒のつまみにはぼちぼちなるのだ。
「抹茶オーレのお父さんに写真送ってやれば」
「そういうのは、こっちからじゃ、できないもん」
「おれ撮って、お父さんにあげようかな」
「うーん……」
「撮っていいか?」
「うん」
ぼくがスマホを構えると、シャミーは首をすこしかしげた。




