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その五十三
翌朝の朝食はゆうべのちらし寿司の残りである。
シャミーに食べたいものをきくと、
「わたしも残り食べる」
とのことだった。
大根のみそ汁をつくって朝飯の支度は完了である。
きょうぼくは朝イチで大型ショッピングモールに行こうと思っている。
リコーダーを買うのである。
シャミーは休みのようだが、リコーダーだけ買ったらまっすぐ帰ってくる予定なので、留守番を頼んだ。
「留守番て、べつに出かけてもいいけどな」
「どこにも行かないと思う、きょうは」
「そうか」
「お掃除しておくよ」
モールまでは自転車ではなく、徒歩で行く。
きょう一日の総歩行距離を十八キロ以上にしたいからである。
十八キロ以上にしたいのは脚力強化のためではない。
朝の体重が設定している上限以上に増えていたからである。
体重のたしょうの上下に一喜一憂してはいけないのはわかっているけれど、水分だろうとグリコーゲンだろうと、とにかく増えてしまっている体重の数字をみると、有酸素運動を増やしたくなってしまうのである。
シャミーに晩飯の要望をきいたのちに出発する。
一キロ十分ペースで歩いて無事モールに到着である。
まずは案内係にリコーダーが売っているところを調べてもらう。
だいたい見当はついているが、係の女性がぽっちゃりバージョンのレネー・ゼルウィガーにちょっと似ていたので、あえてたずねたのである。
レネー・ゼルウィガー似の婦人がおしえてくれた店に行っても、
「あのう、リコーダーって、どこですかね」
とまずはたずねる。
今回は単純に探すのが面倒だからであった。
「こちらです」
「すいません」
目についた茶色のやつを手に取り、さっさと買ってモールを出ようと思ったのだが、
「あれ」
緑色のリコーダーもなにげに売っていたので、ぼくは茶色、緑と二本買うことにした。
まあ洒落である。
「シャミーが吹いても、レッドスネーク壺から出てくるかもしれないしな」
おつぎはまたぞろ愛さん邸である。
先ほどメールが届いたのだ。
先日貸したチュツオーラ百科事典にすごいことが載っていたようなのである。
リコーダーをリュックに入れて徒歩で向かう。
「おじゃまします」
「三千世くん、お昼おうどんなんだけど、食べる」
「お昼時にすみません」
「いいのよ。食べるでしょ」
「はい。いただきます」
「三千世さん、やっぱりジュジュマン兼ジュクジュクマンは凄いんだね」
「お父上、どんなことを発見したんですか?」
「うーん、どっから話そうかな」
このあと長い説明があったのだが、それは端折ることにして、お父上が百科事典より解読したものは要はつぎのようなことだった。
まずK市内にある〈うなぎ食堂〉というところで、たぬきそばの食券を二枚買う。
そしてパスモをつかって電車に乗って東武伊勢崎線の新田駅でいったん降り、再度先の食券を乗車券として機械に投入して今度はおなじく伊勢崎線の春日部駅で降りる。
するとそこは抹茶オーレ帝国の首都の駅になっているというのだ。
帰りは首都の駅から食券を投入すれば、つぎの駅がこちらのもより駅になっているという。
「帰りはもっと楽ですね」
「この時空超えの方法が使えるのはジュジュマンかジュクジュクマンだけみたいだよ」
「ぼくなんかジュジュマン兼ジュクジュクマンですもんね」
「特権だね」
「行きの電車代はぼちぼちかかっちゃうわね、三千世くん」
まあそれでもイナバ物置でワープしなくても良いのはありがたいことではある。
あのワープ時の昏睡状態は、あたまがグラングランするし、喉はからからに乾くしと、決して楽ではないからだ。
「さて、そろそろ行こうかな。愛さん、ごちそうさま」
そんなわけで、つぎの行き先はその〈うなぎ食堂〉である。




