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その五十一
「麻呂から、いろいろききました」
こういうと、サンマルチノさんはロボット犬のあたまを撫でた。
「このロボ犬は『麻呂』という名前なんです」
「麻呂~」
ぼくはとりあえずその麻呂に愛想笑いをする。
麻呂は国家機関などにも使用されている捜索機能に特化したロボットとのことである。
なんでもサンマルチノさんの会社が製造しているらしい。
「ぼくはシャミーから孤児だって、きいたんですけど」
「まったくしょうがない子だなぁ」
シャミーは孤児ではなく、サンマルチノさんの娘だった。
実の父いわく、じゃじゃ馬娘とのことである。
まあ時空のちがう日本に勝手に家出するほどなのだから、じゃじゃ馬娘もいいところだろう。
「これも麻呂からきいたのですが、あちらでは、ずいぶん新倉様にお世話になっているようで」
「日本では肉も魚も食べさせてます」
「それはかまいませんよ。あちらにいるのですから。こちらで食べたら大問題ですけど」
サンマルチノさんはぼくに、こちらに帰ってくるようシャミーを説得してくれないか、と頼んできた。
まあ当然である。
ぼくはもちろんそれを了承した。
「ただシャミーが素直にそれをきき入れるか……」
「まああの子のことですから、すぐにというのはまず無理でしょう。近々で良いのです。それにこっちにもどったら、もう永遠にあちらに行ってはいけないということでもないのです」
「行き来してもいいと?」
「ええ。わたしの高齢の母も孫の顔をみたがってるものですから」
「サンマルチノさんは最初からシャミーが日本にいることを知っていたのですか?」
「知りませんでした。どの国かも、どの時空かもわからなかったのです。すべては麻呂のおかげです」
麻呂は時空のちがう国々を散々捜しまわってようやくシャミーを見つけたようだ。
ぼくは犬も猫もじつはちょっと苦手なのだが、麻呂にたいしては尊敬の念が芽生えてきた。
敬礼である。
ぼくはシャミーに手紙を書かせて後日こちらに届けるとサンマルチノさんにいった。
サンマルチノさんは、
「よろしくお願いいたします」
と深々とあたまをさげてきた。
サンマルチノさんの電話番号は先ほどいただいた名刺に記されてあるという。
話は終わりである。
ぼくはイナバ物置にもどった。
「なんだったの?」
「いやぁ、たいしたことじゃない」
ぼくは現時点ではシャミーのことは伏せておくことにした。
シャミーが抹茶オーレ生まれだということを他者におしえるのは、いちおう本人の許可を得てからのほうがいいだろう。
「帰りましょう、愛さん」
「おなかすいたね」
「今晩はちらし寿司でもつくろうかな」
小森のおばちゃま然としたファミコンのキャラクターがスポーツクライミングがとっても得意なのだということをいい終えると、愛さんはお父上の指示に、
「ラジャ」
としたがって、またぞろブラウン管テレビのチャンネルをガチャガチャまわした。




