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その五十
ホテルにもどり、お父上の部屋をノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
「ごくろうさん。どうだった?」
「きいてきましたよ。ザ・ムー原人の撃退法」
ぼくはペットボトルのことを話す。
「そうか。うんうん、これで人類は救われる」
「胡散臭くないですか? あの人」
「胡散臭いな」
「信用できるんですか」
「それはできる」
お父上は持参してきた水をひと口飲むと、手帳に撃退法の詳細をボールペンで書き込んでいた。
「もうやることないですよね」
「うん」
「じゃあ、ゆうべも今朝もろくなもの食べてないんで、早く帰りましょう」
「そうしよう」
「あっ、そうだ、『蔵だより』の三リットルパック、買いたいんですけど」
「〈マクベス〉っていうスーパーでみたんだよ、わたしは」
ホテルをチェックアウトしたのちに、さっそくその〈マクベス〉まで案内してもらう。
「おお!」
〈マクベス〉に「蔵だより」の三リットルパックはほんとうに売っていた。
手に取ってまじまじとみてしまう。
たいしてお買い得でもなかったが、記念なので、とりあえず二本ほど購入する。
「お父上は買わないんですか?」
「わたしはいいよ。『くらのすけ』と中身はおなじだし」
愛しの愛さんも、
「わたしもべつにいい。二リットルのほうが注ぎやすいもん」
とのことだった。
お二人とも至極ごもっともである。
イナバ物置が着陸している駐車場に向かう。
うしろからぼくを呼び止める人がいた。
振り返ると、髪が緑色の初老の男性がぼくに向かってお辞儀をする。
「お忙しいところ、すみません」
「はい」
「わたしは、サンマルチノというものです」
サンマルチノさんは名刺を差し出してきた。「サンマルチノ電器産業株式会社」とか「代表取締役」などと記されてあった。
どうやらちゃんとした人のようだ。
「じつはお話ししたいことがありまして」
「ぼくにですか?」
「ええ」
サンマルチノさんはぼくにちかづくと、小声で、
「シャミーのことです」
と耳打ちしてきた。
ぼくはお父上と愛さんに、ちょっと待っててくれませんかとお願いする。
「わかった。じゃあイナバ物置のなかで休んでるから」
「愛さん、この『蔵だより』よろしく」
「うん。カバンも置いていけば」
サンマルチノさんの提案で、ここからいちばん近いレストランへ向かう。
サンマルチノさんが背負っていたリュックからロボット犬がちょこんと顔を出した。




