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その四十九
「時計をみせてください」
この世のことならなんでもできる神々の父氏邸に翌朝おもむくと、氏は開口一番こういった。
「この腕時計ですか?」
「ええ」
「はい、どうぞ」
「おお、たしかに〝エイモス〟だ。まちがいない」
「大伯母にもらったんですけどね」
「お宅さんは真の〝ジュジュマン兼ジュクジュクマン〟です」
「ほー。これが証明になるんですか?」
「はい」
今回エンセイしてきた第一の目的は、ザ・ムー原人の撃退法をこちらのこの世のことならなんでもできる神々の父氏より伝授してもらうことである。
そして第二の目的は――美人局疑惑が解消された現在ではほぼほぼおまけだが――一種の護身術を授けていただくことである。
真のジュジュマン兼ジュクジュクマンと正式に認めてもらったぼくは、そんなわけでさっそくまずは第一の目的のほうをおききする。
「それはね、超かんたん」
「そうなんですか」
「うん。ペットボトルあんじゃん、奴らは、あれが嫌いなの。家のまえとかに置いておけば奴らは来なくなるよ」
「野良猫対策みたいな感じでペットボトルを配置しておけばいいんですね」
「そうそう。ペットボトルのなかに水入れておくと、さらに効果的だからね」
眉唾物である。
このペットボトルをもちいての野良猫対策は、こんにちではほとんどの人が効果がないと知っているからだ。
しかしまあ、これは野良猫ではなく、あくまでもザ・ムー原人の話である。
ぼくはいちおうスマホのメモアプリに「ペットボトル」と書き込んだ。
つづいてぼくは第二のほうをおききする。
「おウチにリコーダーある?」
「ないです」
「じゃあリコーダーだけは、お国に帰ってから買ってください。わたしがつかっているやつじゃ嫌だろうから」
この世のことならなんでもできる神々の父氏はいったん奥にさがると、縦笛と壺をもってきた。
「こうやるの。見ててね」
「はい」
「レッドスネーク・カモン」
この世のことならなんでもできる神々の父氏はこう述べると、笛をピヨピヨとかなりてきとうに吹いた。
「あ」
すると、壺からおもちゃ然とした赤いヘビが、ニョロニョロッと顔を出した。
「スローダウン」
赤いヘビは壺のなかにもぐった。
「グリーンスネーク・カモン」
また笛をてきとうに吹く。
すると今度は緑色のヘビが、壺から顔を出す。
緑もおもちゃみたいだった。
「スローダウン」
緑のヘビも壺にもぐった。
「これが護身術なんですか?」
「うん。この魔術を見せつけてやれば、どんな奴でもビビッて逃げ出すよ」
ぼくはこの壺を、この世のことならなんでもできる神々の父氏より特別価格の二千円で購入した。




