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その三十八
紅茶のお礼をいって、まっすぐ自宅にもどる。
自転車を置いてきたので今度は徒歩である。納屋横の縁台の下のフックにカギは引っかかっていた。シャミーはまだ帰ってきていないようだ。
旧大伯母邸に行こうとすると母屋からシャミーが出てきた。義姉に自転車を借りたとのことだった。
「新しいの買うか?」
「うん」
「よし、いまから買いに行こう。灯油も補充するから」
大伯母の仏壇がある三畳間はエアコンがないので、冬はファンヒーターで暖を取るのである。灯油タンク専用のキャリーカートを引いて、もよりのホームセンターへ向かう。自転車もそこで買うというわけだ。
「合鍵もつくるか」
ホームセンターに行き自転車を選ぶ。自転車を調整してもらっているあいだに合鍵はできあがっていた。最後は灯油タンクを満タンにして終了である。
「新倉さん、ありがとう」
「まあ『くらのすけ』と『蔵そだち』の件は、おれにも責任あるからな」
自宅にもどり、三畳間のファンヒーターのタンクに灯油を入れる。まだ半分くらい残っていたけれど、ついでである。さらについでに、ぼくは日課のウォーキングを済ませてしまうことにする。
戸賀先輩の製作所から歩いて帰ってきた分とホームセンターの行き帰りの分はいつもの二時間から今回は引くことにする。きょうは休足重視よりの日である。
「そのまえにバナナ一本食べておくか。シャミー、もうオムライス食べたのか?」
「うん、食べた」
里山ゾーンに登ると笠戸さんが街全体をえんぴつでスケッチしていた。笠戸さんは子どもの絵が上手なのだが、最近はこういう風景画に凝っているようである。
「さっき戸賀先輩に会いましたよ」
「わたし、しばらくあの人には会いたくないわ」
戸賀先輩は女性が苦手でほとんど話もできないのに、なぜか笠戸さんにだけは、ときどき辛辣になる。気の毒である。
ぼくは戸賀先輩の女性にまつわるエピソードを話して笠戸さんを笑わせた。
「新倉さんて、お話上手ね」
「戸賀先輩のおもしろエピソードなら、まだまだありますよ」
話の流れで笠戸さんはふいに、
「わたしいま、島に関心があるの」
といってきた。
「どこの島?」
「どこでもいいの。とにかく島に行ってみたいのよ」
笠戸さんはそこでじっくり絵を描きたいらしい。
「島なら、たまに行ってますよ、ぼく」
「えっ! すごい! どこどこ」
「A島。そこの温泉旅館、親戚ではないんだけど、まあけっこうそれにちかい感じで、お付き合いしてるんですよ」
「うそー。紹介して」
「ええ。ぜんぜんいいですよ」
「ホント!」
「うん。笠戸さん気にいるか、わからないけど」
「どんなところ?」
ぼくはその温泉旅館は全国宇宙人研究会だか全日本異星人勉強会だかの常宿になっているとおしえる。笠戸さんはキャキャッとわらって、さらにぼくにかじりついてきた。




