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その二十七
愛さんは手の込んだ料理をいろいろつくってくれていた。まずコールスローサラダをいただく。
「どう?」
「とてもおいしいです」
つぎに豚の角煮をいただく。
「どうかな」
「これも超うまい。愛さん料理上手だね」
ぼくは普段自炊していることを愛さんに話す。
「じゃあ、普段マックとか食べないんだ」
「うん」
「ぜんぜん?」
「ぜんぜんだね。ラーメンもね。あとお菓子とかも」
「新倉さん、スリムだもんね」
「気をつけてるんですよ」
いま父上様がエンセイしている抹茶オーレ帝国は肉を食べることも魚を食べることも法律で禁じているらしく、それを破ると懲役刑だか禁固刑だかになってしまうという。
「豚の角煮も食べられないわけだ」
「イワシの甘露煮もね」
愛さんはブラックニッカをロックで飲んでいた。四リットルペットボトルの扱い方も慣れている感じである。
ふと思って買ってみたのだが、正解であった。ブラックニッカは安ウイスキー界隈の「くらのすけ」ということもできるのである。
「安ウイスキー世界の『蔵だより』じゃない?」
「あはははは。おなじですけどね」
「『蔵人三代』もね」
ぼくは山城さんの新説を愛さんにおしえた。二リットルパックの「くらのすけ」と三リットルパックの「蔵そだち」とは味がちがううんぬんという例のやつである。
「だからぼくはいま、『蔵だより』の三リットルパックを探してるんですよ。このへんのスーパー、どこにも置いてなくてね」
「新倉さん、『蔵だより』の三リットルパックはそもそもないわよ」
「えっ! そうなんですか?」
「うん。『くらのすけ』の三リットルも『蔵そだち』の三リットルも『蔵人三代』の三リットルもあるけど、『蔵だより』だけは三リットルパック出してないの」
「それは確かなんですか」
「ええ。ネットで調べてみたら」
とりあえずぼくはスマホで検索してみた。なるほどたしかにアマゾンにもヨドバシにも「蔵だより」の三リットルパックはない。
捜索は打ち切りである。山城さんに報告である。
「でもね、わたし現物みたわけじゃないけど、父がいうには抹茶オーレ帝国には『蔵だより』の三リットルパック売ってるんだって」
「キャオ!」
「雑誌にも載ってるから、まちがいないと思うわよ」
愛さんは先ほどみせてもらった研究室にいったんさがって、その雑誌をもってきた。
「これ、向こうで発行されてる週刊誌。みて、ここ」
雑誌には若者が公園で花見をしている写真がカラーで載っていた。
男女六人がすわっているブルーシートの上にはたしかに「蔵だより」の三リットルパックが置いてある。
ちなみに六人の若者は男も女も全員髪の毛が緑色だった。愛さんにたずねてみる。
「抹茶オーレの人たちは基本、髪の色と瞳の色はグリーン系みたいよ」
「地毛なんだ」
ブラックニッカを飲み終えた愛さんは、
「最初はそのまま飲も」
と今度は「くらのすけ」をちがうコップに注いでいた。




