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その二十四
義姉と話しているあいだに丸先輩からメールが送られてきていた。とりあえず電話をかけてみる。
「もしもし」
「ああ、さっきの話なんだけどね」
「ええ」
「戸賀いま、おれのアトリエに来ててさ」
「うんうん」
「だからきいたんだよ、となりで茶の湯やっていいかって」
「うん」
「そしたらさ、あいつほら、女苦手じゃん」
戸賀先輩は女子がそばにいると、極端にもじもじそわそわしてしまうのである。
「だから、できないって、いってるんだよ」
「えー、そこをなんとかお願いしますよ」
「新倉くん、直接戸賀に説明しなよ」
「じゃあ茶の湯やる子といっしょに、いまからそっち行きますよ」
「うん、それがいいよ。待ってるから」
和泉さんに先のことを告げたのちに、ふたたび義姉のところに行き、今度は自転車を借りる。
「クルマも空いてるわよ」
「いや、丸先輩のところに行くんです」
「ああ、アールッチのところに行くんじゃ、自転車のほうがいいわね」
丸先輩のアトリエまでは自転車で十分くらいで行ける。あっという間に到着である。
「ごめんくださーい、ごめんなさい」
アトリエのなかに和泉さんと入ると、二人は案の定芸術について議論していた。
「おお、戸賀、新倉くん来たぞ」
「戸賀先輩、しばらくです」
「うん」
「この子が茶の湯やりたいっていってる和泉さんです」
「和泉千鶴です」
「あっ、どうも」
「となりでやってもいいでしょ、先輩」
「うーん、でも一日中ずっとだとさ……」
「なにいってんスか先輩、いいじゃないですかぁ」
「まあでもほら新倉くん、戸賀もさ、絵を売るために観にきた人にアピールしなくちゃならないだろ」
丸先輩が割り込んできた。話をまとめようとしている。なにか妥協案を二人で事前にかんがえていたのかもしれない。
「宣伝?」
「うん」
妥協案はチラシであった。戸賀先輩は青空市のさい、チラシをつくって茶の湯を宣伝してくれるというのである。そもそも茶の湯だったらバザーの場ではなく、ぼくの住まいでやればいいというのだ。
「新倉くんのウチは、三畳間もあるじゃないか。あの部屋は茶の湯にぴったりだよ」
なるほどたしかに一理ある。
「どうする? 和泉さん」
「ご迷惑かけてもわるいですし……それに新倉さんのおウチでできるのであれば、道具も運ばなくていいから」
「チラシはこっちでつくるし、なるべくいろいろな人に頼んで配布してもらうからさ」
「うーむ……」
「だからこのあたりで勘弁してくれよ、な、新倉くん」




