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その二十三
お昼に和泉さんは帰ってきた。案の定しょぼくれている。
「K市の住民じゃないと出店できないみたいです……」
「あしたおれの知り合い、青空市に店出すから、となりでやっちゃえばいいよ」
「平気なんですか?」
「だいじょうぶ。一人代表のやつが登録して、あとはまわりでてきとうに好きなもの売ってるんだもん、実質」
「じゃあ、お店出せるんですね、わたしでも」
「うん。さっき義姉さんにきいて、カセットコンロと、あとブルーシートも借りてきたよ」
「えっ、すごい、すいません」
「お昼、そばでいいかな」
「あっ、はい」
そんなわけでぼくはそばを茹でる。もりそば、あるいは、ざるそばである。そばには天ぷらがベストかもしれないけれど、揚げ物は要警戒なので、厚揚げを焼いて出す。
「あっ、そうだ。おれ今晩、ちょっと外で飲むからさ、すいませんけど、留守番お願いします」
「わかりました」
「酒、好きなだけ飲んでいいからね」
「そんな……申し訳ないです」
「ぜんぜん気にしなくていいですよ。安酒だし」
「四天王ぜんぶですか?」
「うん。ぜんぶ安酒。だって、ぜんぶおなじだもん」
「でも、このまえは……」
「いや、ゆうべおれは確信した。『くらのすけ』も『蔵そだち』も『蔵だより』も、すべておなじ酒、決定です。ボンジュールです」
「わたしはちがうと思いましたよ。すくなくとも『蔵そだち』と『蔵だより』は辛さがちがいますよ」
「うーん、そうかな……そうかもしれないな」
またぞろ迷宮に入り込んでいると、義姉からメールが送信されてきた。
「田上温泉旅館の助っ人、延期ではなく中止」
とだけ記されている。ぼくはそばを食べ終えると実家に向かった。
「義姉さん、親父がいってたんですか」
「うん、さっき電話かかってきたの」
「おれとしては、よかったけど、でも何でですかね」
「田上温泉旅館、予約が入って、てんてこまいなんだって」
「客が来ないから、おれミック・タイガーやる予定だったんだけどな」
「こないだ、あのあたりにクマ出たの知ってるでしょ」
「うん。それで最初延期って、なったわけだからね」
「そのクマがね、白骨で発見されたんだって」
「え」
「それも三頭も」
「三頭もいきなり白骨化してるの」
「うん、不思議でしょ。だからなんとか愛好会みたいな人たちも『宇宙人の仕業だ』って騒いで、どんどん旅館に宿泊しに来てるみたい」
「あはははは。旅館サイドの仕込みかな……まあでも、よかったじゃないですか」
実家のチャイムが鳴った。宅配だった。義姉は礼をいって品を受け取る。
「お義父さんの育毛剤。置き配にしてるのに、あの人、いつもチャイム押すのよ」
「義姉さんに会いたいんじゃないですか」
「なんで?」
「やっぱり男は綺麗な人をちょっと見たいもん」
義姉は、
「うそー」
といいつつ鏡を何度もみていた。サービス精神の発動である。積立である。




