学業とアイテム探しの両立
1
ひなたは朝起きて、真っ先にハウスメイドから新聞を預かると、昨夜の出来事が記事に書かれていないかを確かめた。新聞の記事には、その事が書かれてなく、ひなたは安堵した。
ばれなくて良かったぁぁ、犯罪者ってこんな気持ちになるんだなぁ。
新聞を丁寧に畳むと、いつもお父さんが新聞を読む、リビングのテーブルの上に置いた。
お父さんが毎日、報告しなさいって言われたな。今日、帰って来てからでいいかな。
ハウスメイドがひなたに声をかけた。
「ひなたお嬢様、もうすぐ7時30分になりますよ」
「やば!遅れる」
ひなたは急いで制服に着替え、ハウスメイドに髪を結ってもらいながら朝食を食べた。
学校指定のリュックサックを背負うと、同じテーブルで朝食をとっていたさやかに抱きつき、いってきますと挨拶して玄関を出た。
玄関の前には、学校送迎用の外国車の車が停まっていたが、ひなたは何食わぬ顔で素通りした。
車の中から運転手が出てきた。
「お嬢様、ぜひとも今日くらいは学校まで送らせて下さい」
運転手は困った顔で言った。
ひなたは振り向くとニカッと笑って答えた。
「嫌だと言ったら?」
「追いかけてでも乗ってもらいます」
「じゃあ、追っかけて来てね」
ひなたは運転手にバイバイと手を振り、正門とは違う方角へと走って行った。
「お嬢様!そちらの方角では柵にぶつかります」
運転手が言った瞬間ーー。
ひなたは柵の下のレンガを足台にして、ひょいひょいと柵を登り、柵を乗り越えて柵の向こう側へと降りた。
「じゃあ、いってきま~す」
ひなたは柵越しに運転手に手を振ると走り去って行った。
運転手は暫く唖然としていた後、ハッと我に返り、ひなたを追いかけた。
ひなたは通常の通学路を通らずに、ひなた独自の通学路?を通って登校した。
学校の門の前に着くと、約3分後にひなたの乗る予定だった車が着いた。
車は、ひなたに当たらないように気をつけながら、緩やかにひなたの前に停まった。
運転手側の窓が開いて、運転手が話しかけた。
「今日もお嬢様の勝ちでしたが、今度こそは私が先回りして、車に乗ってもらいますからね」
「うん、その時は観念して乗るからね。わざわざ学校まで来てくれてありがとう」
運転手は楽しんでいる様子で、ひなたに笑いかけ、一礼すると帰宅していった。
入学以来、私の全勝だね。毎朝、運転手さんも快く付き合ってくれるよね。運転手さんも近道とか調べて早く学校に着くようになったけど…。ま、今の通学路が最強だから、私が勝つに決まっているけどね。
「遊んでいるようでさ、そうじゃないんだよね。車で送迎とかすごーく恥ずかしいから送迎不要なんですけどね」
ひなたは小声でぼやいた。
ここが英和学院小学校、ひなたの通う学校です。ちなみに小中高一貫校です。
ひなたが門の方に足を向けると、後ろに2台のの黒い高級車が停まった。
黒い高級車の先頭の車から、上品な振る舞いでちょっぴり癖毛気味、セミロングヘアの可愛らしい女の子が降りてきた。
女の子は嬉しそうに、ひなたに寄ってきた。
「ひなちゃん!おはよう」
「練ちゃんおはよー」
「また、送迎車と競争して来たの?」
「だって、目立つでしょ。降りるときなんかすごく恥ずかしいんだもん」
ひなたはもじもじした。
「うん、ひなちゃんなら仕方ないわよね。そんな控えめな、ひなちゃんが大好きよ」
練はひなたの左腕をとり、腕を組んだ。
「さぁ、教室まで一緒に行きましょう」
「やっぱり練ちゃぁん、わかってくれてる~」
ひなたはスキップしながら、練と教室へ向かった。
下駄箱に着いた所で、廊下の左側から誰かが話しかけてきた。
「桂木、大門おはよう!」
この声は。
「あら、藤森くんおはよう」
練は蹴斗に手を振った。
「ひなちゃんのもう1人のファンの登場ね」
練はひなたにウインクした。
「ファンは練ちゃんだけで良いのですよ」
ひなたは不機嫌そうな顔をした。
「毎回、部活の朝練がある日は、下駄箱で私の事を待ち伏せするのやめてよね」
ひなたは仁王立ちになり、蹴斗を指差した。
蹴斗は軽く首を左右に振った。
「待ち伏せてはいないけど、桂木が学校に来る時は体育館の裏の柵から入ってくるから、すぐわかるんだよ」
ちっ、ばれてる!
「近道だからね」
ひなたはそっぽを向いて答えた。
「正門から学校に入って来ないこと、先生に言っちゃうよ」
蹴斗は、にやりと笑ってひなたに言った。
「朝練…来てくれるなら、言わないでおこうかな」
蹴斗はひなたに精一杯の笑顔で言った。
あー、これはいつものバスケ勧誘ですよ。
「桂木のずば抜けた運動神経なら、女子バスケ部も強くなるんだけどな」
「男子バスケが強いんだから、指導すればいいじゃん。かといって、藤森くん目当ての女子ばっかりだから練習に集中出来ないってとこじゃない」
蹴斗は勢いよく数回、うなずいた。
「桂木、わかってくれてるな」
「藤森くんには悪いけど、私は藤森くんには興味ないからね、楽勝でバスケ勝てちゃうけど」
ひなたは余裕の表情を浮かべた。
蹴斗はガックリと肩を落とした。
「うん、知ってる」
練は蹴斗が落ち込んだ様子をみて、すかさず、蹴斗を慰めようと両肩に手を置いて言った。
「藤森くん、大丈夫よ。ひなちゃんはそんなに冷たい子じゃないわ。何かあったら、絶対助けてくれちゃうんだから。ね、ひなちゃん」
練は、ひなたが言い返せないくらいの笑顔を見せた。
「練ちゃんが言うなら…」
ひなたはしぶしぶ言った。
「やれやれ」
ひなたは制服の上着を脱ぎ、長袖のシャツを肘の上までまくりあげると体育館へ歩きだした。
「ちゃちゃっと、朝練片付けるよ!」
「うん!」
「ひなちゃんはそうでなくちゃ」
蹴斗と練は嬉しそうに、ひなたの後をついて行った。
練は歩きながら、ひなたにばれないように蹴斗に耳元で囁いた。
「頑張ってね、藤森くん。ひなちゃんは極度の鈍感さんよファイト!うふふっ」
蹴斗は練が知っていると理解して狼狽えた。
「かっ、桂木には内緒で」
「知ってるわ、あの事件からだもんね」
「なっ、何であの事件って…知ってるの!? 」
「ひなちゃんに関することは、ぜーんぶ大門練がお見通しよ!」
練は自分の唇にしーっと指をあてて、秘密にする仕草をした。
恐るべし、大門練。
「ひなちゃん大好き同士、頑張りましょ!」
「わーっ、大門!そんな大きな声で言わないで!」
ひなたの後ろで練と蹴斗が楽しそうにやりとりしているのを、ひなたはほっとして見ていた。
2人とも仲が良いよね。私、昨日からなかなか大変だけど、練ちゃんが応援してくれてるし頑張るか。
その日の朝練は、女子バスケ部も男子バスケ部も、張り切ったひなたに、ガッツリ特訓させられることになった。
こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。
次回更新は明日の夜を予定しています。
よろしくお願いします。




