学業とアイテム探しの両立
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その日の4時間目、国語の授業中。
ひなたは、ノートを書きながら考えていた。
今晩、お父さんへ報告するでしょ。報告してから、7時半を過ぎてなければ、近場でアイテム探しもありかな。お父さんが、美術品に限らず、古美術や骨董品にも紛れ込んでいる可能性があるって言ってたし。近所の骨董品屋に探しに行ってみようかな。しかし…私ってば、こんなに不法侵入ばっかりして、そのうちプロの泥棒さんにでもなっちゃいそうだよ。
「はぁーっ…」
つい、大きいため息をついてしまった。ため息は静かなクラスに響き渡った。
「桂木さん、授業中にため息か。どうした、先生の授業がつまらなかったのか?」
やばっ、大きなため息が出ちゃった!
クラスのほとんどの子が、ひなたの方を見ている。中にはくすくす笑っている女子もいる。
「あの、えっと…」
ひなたは慌てて、別の言い訳を思いついた。
「あー、朝練ハードだったんで、お腹すいたから、お昼のお弁当が待ち遠しいなって考えてました。あははっ」
頭を掻きながら笑ってごまかした。
クラスの皆が笑った。
「ははっ、桂木さんらしいな。あと15分くらいで授業は終わるから、もう少し頑張って」
「はーい」
ひなたはなんとか、やり過ごした。
もー、恥ずかしいよぅ。
恥ずかし過ぎて、誰とも目を合わせたくなくて、机に顔を突っ伏した。
フェアリーリングを恨みたい。
隣の席から、練がひなたの肩をトントンと叩いた。
ひなたが練の方へ振り返ると、練が先生に聞こえないように、小声で話しかけてきた。
「朝練、頑張ったものね。今日、デザートにプリンをつけてもらったから、一緒に食べて元気出しましょ!」
ひなたは喜んで頷いた。
ひなたは単純だった。
すっかり元気を取り戻した。
先生から黒板に書いた事を、ノートに書き写すように言われたので、書いた字が、読めるか読めない程の速さで書き始めた。
15分後。授業が終わりのベルが鳴った。
「はい、今日はここまで。桂木さん、しっかりお昼ご飯食べるんだぞ」
「はい、がっつり食べておきます!」
また、クラスから笑いが巻き起こった。
先生がクラスを立ち去れば昼休み。
ひなたの学校の昼休みは50分。その間に昼食を済ますようになっている。
昼食は学内であれば、教室以外のどこで食べても良く、カフェテリアや中庭のベンチ、校庭の芝生の上でレジャーシートを広げて、遠足気分で食べる子達がいたりと、昼休み時間だけは学内全ての生徒が、各々の場所で過ごしている。
ひなたと練はいつもの場所へと移動した。
その場所は、小学校の校庭の片隅にあり、そこには、間伐材の欅で作られたテーブルと椅子が設置され、雨風で傷まないように屋根がついている。
2人とも、同級生の女子が苦手ではないが…女子トークで、私はクラスの○○くんが好きなの~、などと、キャーキャーと盛り上がる事にはあまり興味がないため、2人だけでゆったりと昼休みを過ごしている。
練は慣れた手つきで、テーブルの上に上品な花柄模様のランチョンマットを広げると、お洒落なサラダ、ピンチョス、ローストビーフ、フルーツが入った容器の蓋を次々と開けて並べて、食後の紅茶の準備までした。
小学生の昼食とは思えない豪華さだ。
練は小さなクーラーボックスをランチョンマットの横に置くとにっこり笑顔で言った。
「ひなちゃん、これは後で食べましょ」
「やったぁ、プリン!ありがとう、練ちゃん」
「うふふっ」
練は、ひなたが笑顔になり、嬉しくなった。
お弁当を食べ始めると、練が朝練の件で話してきた。
「今日はひなちゃん、朝からすごく頑張ったわね」
「うん、自分でもそう思う…」
藤森くんを手助けするとはね。
「藤森くん、意外と苦労人だからね。ちょっとくらいは手助けしてやってもいいかなって思ったんだよね」
「あら、私はそれ初耳よ。藤森くんが苦労人なんて…どこから聞いたの?」
「えっ!? 」
そういえば、まだ、練ちゃんに美術館で藤森くんと会ったよって言えてなかった。
「あのね、練ちゃん」
練は自分の知らない間に、ひなたと藤森くんがどこで急接近していたのか、わくわくして目をキラキラと輝かせて頷いた。
「どこから話せばいいんだろ…びっくりするだろうけど、練ちゃんには隠したくなくて」
「うんうん」
「私の家にフェア…」
そう言いかけた時に小さい女の子の声がひなたの耳元に囁いた。
ーまだ、練ちゃんには秘密だよー
ひなたは驚いて、声が聞こえた方に振り向くが誰もいない。
「そっか…」
練に対して、申し訳ない気持ちになった。今までに、練に隠し事をしたことがなかったから余計につらい。
なんとなくだけど、今のはフェアリーリングが言った気がする。まだって言ってたから、時期が来たら言えるのかな、練ちゃんには隠し事したくないのに。
ひなたががっくりと肩を落としたので、練は心配になり、ひなたの隣に座り、背中をさすった。
「いいのよ、ひなちゃん。ひなちゃんのタイミングで話してくれれば」
「ありがとう、練ちゃん」
すると、テーブルの向かいの椅子に誰かが座った。
「大門と桂木、俺も一緒に食べて良い?」
カフェテリアのベーカリーのパンが入った紙袋を片手に蹴斗がやって来た。
「朝練が厳しかったから、弁当だけじゃ足らなくてさ」
ひなたと練が唖然として見ている中、目の前でメロンパンをモグモグと食べ始めた。
「藤森くんってば」
練は笑った。
「それと、桂木に」
紙袋の中をごそごそ探ると、チョコがたっぷり詰まったチョココロネをひなたに手渡した。
「あらあら、ひなちゃんのファンは好きな食べ物まで知っているのね」
「だって、桂木がベーカリーでチョココロネばかり買ってるから」
!?
「ひ、人の好みを…いちいち毎回チェックしてるなんて!? 」
「朝練のお礼だよ」
蹴斗はにやっとした。
「もう!せっかく昨日、見直してやろうと思っていたのに、そんな事されたら、クラスの女子に勘違いされるでしょ」
ひなたは地団駄を踏んだ。
「俺はいいけどな」
蹴斗は頬杖をつき、にやにやしてひなたを見た。
「えっ、ひなちゃん!昨日、藤森くんと会ったのね?」
練は再び、目をキラキラさせた。
「うん、桂木と美術館で…2人だけでね」
蹴斗は恥ずかしそうにもじもじした。
「きゃ!2人だけで!」
「もう、違うのっ!練ちゃん偶然だよ!美術館に1人で行ったら、藤森くんに会ったの」
ひなたはすぐさま否定した。
「あら、残念ね、デートではないのね」
「私が美術館に下見に行って…あっ、違う」
「下見?」
練が聞き返した。
「お父さんがたまには美術品でも見て、目を養って来なさいってね。大変なのよ~、古美術商の娘も」
練ちゃん、嘘つきでごめんなさい。
「うふふ、ひなちゃんって本当に真面目さんね」
「でしょ!」
ちょうど昼休みの終了5分前の音楽が流れ始めた。
「やばい、急いで食べて行かなくちゃ」
ひなたが慌てて急かした。
3人は急いで、昼食を食べ終えると教室へ向かった。
もう少しで、放課後か。今夜も頑張ろう。
段々と…夜が近づいてきていた。
こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。
次回更新は明日の夜の予定です。
どうぞよろしくお願いします。




