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美術館の中にて

美術館の入口は、正面に1ヶ所と横側に2ヶ所ずつあり、計5ヶ所ある。

ひなたが防犯カメラを避けながら、入口を見てまわって確認すると、全ての入口は閉じられていた。


まぁ、夜だし。当たり前だよね。他に入れそうなとこがあるかな。


昼間に下見にきたことを生かそうと、窓や入口の場所がどこにあったかを思い出した。


確か、美術館の上に窓が。


美術館の上の方の方を見上げると屋根に近い所に、小窓が並んで設置してあった。

小窓は数カ所だけ、換気の為に開いている。

小窓のサイズは、ひなたの体が余裕で行き来できそうなくらいの大きさだ。更に、小窓の下には人が足を置けそうなくらいの、平らなへりがあった。


あれからなら行けるかも。


ひなたは近くに生えている木につかまり、木を登り始めると、ひょいひょい木をよじ登った。

あっという間に、高い木の枝まで辿り着いて枝の上に立つと、枝から枝へとぴょんぴょんと飛び移った。

そして、登り始めてから僅か数分で小窓の前へ来た。

ひなたは、足音が出ないように注意を払いながら、枝から小窓のへりにそろりと足をのせた。


へへん。こんなの簡単、簡単!小さい頃にターザンごっこして、家の庭の木登りをしすぎて、お父さんにお説教された事があったけど、あれが役に立ったよ。


ひなたは、窓から美術館の中をそっと覗いた。薄暗くて見えづらいが、警備員は見当たらない。

窓から飛んで着地するには高さがありすぎる。もし、できたとしても大きな足音が響くだろう。

ひなたはリュックから、フック付きのロープを取り出した。


なぜか倉庫にあったんだよね。

どうして、家の倉庫にあるのか謎だけど、これ持ってきておいて良かった。


フックを窓の下枠に引っかけて、静かにロープを垂らすと、美術館の床までロープの先が届いた。


うわ、いよいよ本当に美術館に入るよ!

緊張でドキドキする。


ロープに手をかけて、降りる音がしないように注意を払い、静かに下へ降りた。


入っちゃった。不法侵入しちゃった。とうとう、私もどろぼうさんの仲間入りだ。


ひなたは辺りをぐるりと見渡した。

やはり、警備員はいなさそうだ。


なんか、今ならどろぼうさんの気持ちがわかる。


複雑な気持ちになった。


美術館内は、月明かりと非常口灯の影響で、美術品をみて歩きまわるには充分な明るさだった。


私がひとり暗闇探検ごっこで使ってた、暗視ゴーグルを持ってきたけど、いらなかったね。


ひなたはリュックの中からフェアリーリングをとり出すと、一番近い展示物にフェアリーリングを近づけてみた。

フェアリーリングは沈黙している。


これを近づけて反応したら、探しているアイテムが反応してくれると思うけどな。まぁ、こんなすぐに見つかったら奇跡だよ。とにかく、警備員さんが来る前に、さっさと他のも見てまわってしまわなくちゃ。


手前から奥の方へと順番で、美術品にフェアリーリングを近づけては反応を確かめた。20品目の美術品あたりになると、フェアリーリングの反応のなさに何だか不安になってきた。


うーん。果たしてこのやり方があっているのかな。初めてフェアリーリングの反応を止めさせた時も、全然わからなくて色々と試したんだよね。でも、他に良いやり方が思い浮かばないから、このやり方しかないよね。


引き続き、また反応を確かめては止まり、進みを繰り返した。

3フロア進んだ奥の大きな美術品の前まで来ると、物音が聞こえた。

人の足音の音だ。

ひなたの心臓の鼓動が早くなった。


警備員さんかな、どこかに隠れなきゃ。


急いで、隠れられそうな場所がないか、フロア内を見回すと、フロアの隅には装飾が施された衣服が縦長のガラスケースに入り、立てかけられて展示されている。その展示台の裏は狭そうだが身を潜められそうだった。

ひなたは急ぎつつも足音がしないようにして、その後ろに膝を抱える様にして隠れた。

段々と足音が大きくなり、警備員が懐中電灯を持って現れた。

「さっき、物音がしたように聞こえたけどな」

警備員が独り言を言って、大きな美術品を隅々まで懐中電灯で照らした。

美術品には異常がないようだった。

「きのせいか」

警備員が立ち去ろうとした瞬間。

身を潜めていたひなたがバランスを崩して倒れた。



「あっ、どうも」

ひなたは動揺して、倒れたままの姿で警備員ににこりと挨拶した。

「子供か!こんな所で何をしているんだ」

警備員は歩み寄って来た。


見つかった、とにかく逃げよう。


ひなたが警備員から逃げようとした時、もう1人の警備員が現れ、ひなたの前に立ち塞がった。


まじか!


「子供でも、たちが悪いな。警察につき出してやるぞ!」

警備員が、ひなたを挟み撃ちにしようとにじり寄ってきた。

「大人2人がかりで、ずるいでしょ」

「こんな時間に美術館へ忍び込むほうが間違っているだろ」


ごもっともです。


ひなたは左右に揺れ、どちらかに逃げるフェイントをかけた後、正面にいる警備員の脇の下をするりと抜け出て、隣のフロアへと逃げ込んだ。しかし、隣のフロアは行き止まりになっていた。


まずい!


警備員2人がひなたを追い詰めてきた。ひなたの背後には壁があり、警備員はじりじりと迫って来る。


逃げられない。


ひなたはフェアリーリングを握りしめた。


こんな時くらい、役に立ってよ!!


そう強く思った瞬間。


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