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ひなた、美術館に不法侵入する

19時30分。

ひなたは黒の耳付きのフードのパーカーに、黒のハーフパンツ、黒のハイソックスに黒のシューズの服装に着替えた。

美術館では全身黒なら暗闇に紛れ込んでも見つからないだろうと考えたのだ。

「お父さんに言われたけど、お母さんには秘密にするようにって言われたなぁ…」

ひなたはつぶやいた。


多分、美術館に不法侵入なんて…お母さんが知ったら卒倒するかもしれない。


さやかはトレジャーハンターの娘といえども全くそんなタイプではない。お嬢様で上品な佇まいで、曲がった事は好ましく思わない性格だ。

「ぜぇーっったいに反対するよね!」

「…。私だって、やりたくないけどさ」


今はやるしかないもん!


ひなたは、さやかに気付かれないようにするため、部屋に細工をし始めた。

部屋の外まで聞こえるようにポップスを流し、念のため、ベッドの中に大きいぬいぐるみを入れて、ひなたがベッドの中に潜りこんでいるかのようにもしておいた。

ひなたはこれで大丈夫だと思ったようにうなずくと、肩に黒のリュックと黒のインラインスケートをかけ、手首にフェアリーリングを通した。

昼間に、倉庫のロープをこっそり拝借して本棚の後ろに隠しておいたので、それを取り出すと部屋のベランダの柵にくくりつけて、ロープを垂らして2階から静かに降りた。

垂れたロープは、ひなたの部屋の階下の部屋の窓から見えないように、1階の窓横にある雨戸の外側に這わせて、ロープの下の先端を雨戸と窓枠の隙間に挟んで見えないように工夫して、帰って来たらすぐに登れるようにしておいた。

そして正門からではなく、庭園の方の奥にある通用口から外へと出た。

美術館はバスで5停留所離れた先にある。

ひなたは、家を取り囲む柵の土台になっているレンガの上に座った。


自分に家なのに、こそこそして不思議な感じ。まあ、慣れていかないと。えっと、バスを使うと、こんな時間に黒い服装の子供が1人だけ乗ると怪しまれるから、この前に買ってもらったインラインスケートが役に立つね。


シューズを脱いでリュックを入れると、インラインスケートに履き替える。

夜道を走るのでなるべく、目立たないようにしたいのと、ご近所さんにも気付かれたくない。たまたま、滑走音があまりでないようなタイプだったので、ラッキーなアイテムだ。

インラインスケートは走り出すとなかなかのスピードがあり、運動神経が抜群なひなたは、人通りがない、狭い裏路地を器用にちょいちょい小回りして、10分弱で美術館まで辿り着いた。


美術館まですぐに着いちゃったな。心の準備をする時間もなかったから、自分の運動神経を恨むよ。


ひなたは、今から自分がすることを考えると涙目になった。


だめだめ!しっかりしなくちゃ。アイテム見つけるまでは泣かないぞ!



ひなたは袖で涙を拭うと美術館を見上げた。

美術館は周りが木々で囲まれており、木々の外側には疎らに街頭があった。

街頭は、美術館の全景がわかる程度の灯りが、ぼんやりと美術館を照らしている。

入り口を見ると、門は閉じられ、更に門には金属のチェーンが厳重に巻かれていて、錠前がかけられていた。

全体的に薄暗く、辺りはシーンと静まりかえっていて、ひなたは少し怖く感じた。ましてや、初の美術館侵入だ。11歳のひなたが怖くないはずがないだろう。


下見に来た時に防犯カメラの場所を把握しておいたので、死角になる場所へと移動すると、シューズに履き替え、監視カメラがひなたの顔を確認しづらいように、フードを深めに被った。

インラインスケートをリュックに入れて、準備ができたと思った所に、リュックのポケットに入れていたスマホのアラームが、小さくブーブーとなった。

ひなたはスマホを取り出して時間を確認した。

スマホの画面は20:00を表示している。電源を切ってリュックに入れた。


準備は整えた。犯罪者の道に一歩足を踏み込んだよ。後には退けない。さぁ!行くぞ!



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