藤森家
1
自宅まで練に送ってもらった後、蹴斗は疲れて部屋のベッドで寝ていた。
「蹴斗ー、夕ご飯よ」
夕食の支度ができて、1階から母が呼んでいる。
ーー返事がない。
「寝てるのかしら。愛蘭、ちょっと様子を見てきて」
「あいよー」
母の隣にいた愛蘭は、2階へ行き、蹴斗の部屋をノックした。
ーー返事をしない。
「爆睡してるな」
返事がないので、ドアを開けて部屋に入っていった。
蹴斗がベッドに横たわり、気持ち良さげに寝ている。
「やっぱり、寝てるじゃん」
呆れて、声を掛けて起こすべきか、寝かせたままにしようかと考えながら、部屋の中を見回し観察する。
相変わらず、きれいにしてるな。
蹴斗の部屋は、整理整頓されている。
ふと、机の上の写真に気がついた。
あの写真。
愛蘭は蹴斗が起きないように、静かに机に近づき写真を手に取った。
写真は、去年の運動会で1等賞をとった時のひなたが1人で写っている。
練ちゃんにもらったって、言っていたよな。
写真が立ててあった瓶の中に、絆創膏が1枚入っている。
ご丁寧に、こんなものまで大切にとっておいてさ。
蹴斗に気づかれないように、写真をそっと元に戻しておいた。
今日は、父さんの帰ってくる時間が早かったよな。そうとなれば、さっさと蹴斗を起こして、夕飯を食べてもらうとするか。
「蹴斗。起きろ」
愛蘭が蹴斗の体を揺する。
「うん…まだ、寝かせて」
眠気が強いようで、瞼は閉じたままで返事をした。
「あっ、そう。じゃあ、このひなちゃんの写真は頂くね~」
机まで行くと、写真を手に取った。
その言葉に即座に反応し、蹴斗が飛び起きた。
「ダメ!持っていくな」
「ほら、起きた」
にやけながら、愛蘭が写真をぴらぴらと振っている。
「あーっ!そんな持ち方するなぁ!!」
写真を取り上げて、大切そうに机へ戻した。
「触るなよ、愛蘭」
「なんだよ、蹴斗のケチ~」
「大切だから。部屋の他の物はいいけど、これはダメ」
愛蘭は蹴斗の真正面に立つと、両手で蹴斗の肩をポンポンと叩いて笑いかけた。
「なんだよ」
「そうだよな。ひなちゃんがいなきゃ、君は、あのままだったと考えるとさ…。ほんと、ひなちゃん様々だよ」
蹴斗が、気にくわない顔をしている。
「桂木がいなきゃ…そうだけど」
「ひなちゃんには、未だそのことを話せてないんでしょ」
「そうだけど」
「言ったらいいのに」
「うん。でも、今はそんな時じゃないから。桂木はフェアリーリングのことで、手一杯だよ」
「まぁ、確かにね」
ひなたの大変さを目の当たりにしているだけに、2人はそれを理解している。
「いつかは、言わなきゃ。桂木には感謝してるから」
「そうだねぇ、フェアリーリングのことが落ち着いたらね」
「うん…」
とりあえず、今はフェアリーリングのアイテム探しの手伝いに専念しなくてはならない。
「蹴斗ー、愛蘭ー」
1階から、母が呼んでいる。
「そうだ、夕飯で呼びに来たんだよ。今日は父さんが早く帰ってくるから、さっさと食べちゃおう」
「うわっ!やばい、急いで食べなきゃ」
2人は急いで1階に降りて、夕食を食べた。
しばらくすると、玄関のドアが開き、父が帰宅した。
こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。
次回は明日の夜に更新する予定です。
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