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勝つのはどっちだ!?

花南町美術館に到着すると、入口にはイベントの担当者が待ち構えていた。


さすが、練ちゃんのお父さんだ。案内する人を手配してくれている。


すぐに、ひなた達は展示品が搬入されている部屋へと案内された。

展示品を梱包された箱が、広い間取りの部屋の中で、犇めくように置かれている。

「あとは、ひなちゃん達にお任せするわ」

練は気を利かせて、イベントの担当者を連れて別室に移動した。

ひなたと藤森兄弟だけになり、心置きなく手首につけたフェアリーリングを元の大きさに戻した。

「よし、見つかればいいけど」

フェアリーリングを梱包箱に近づけて、アイテムが入ってないか、1箱ずつ調べていく。

全体の3分の2程度の梱包箱を調べたが、フェアリーリングは反応しない。

……。


あれ?話し声がする。これは前と同じ。


……。


ここにいる?


ひなたには、話し声が聞こえた。

「あっちだ!」

部屋の左奥の梱包箱だ。

「桂木、聞こえたのか?」

「うん、あの箱から聞こえる」

ひなたが梱包箱を指差し、3人が行こうとするとーー。



ドン!と音がして、勢いよく部屋の扉が開いた。

「!!」

3人が振り向くと、幅広いつばのついた帽子を目深に被った、女の子が立っていた。


ソードのあの子!!


ひなたが先に手に入れようと、急いで梱包箱へと向かう。

女の子も急いで、梱包箱に向かいながら。フェアリーソードを使い、かまいたちを放ってくる。

「卑怯だってば!」

フェアリーリングから風を巻き起こし、かまいたちを相殺した。

その隙に、女の子は梱包箱へ辿り着き、梱包箱を開けて、例のブレスレットのアイテムを取り出した。

「私の勝ちね!」

「……っ!」

帽子で顔はよく見えないが、女の子は勝ち誇った様子だ。

「早く、フェアリーリングを寄越しなさい」

右手を出して、じりじりと、ひなたの方へ近づいてくる。

ひなたは胸にフェアリーリングを固く抱えて、渡す物かと身構えている。

以前は、フェアリーリングの使い人になるのが嫌だったけど、今は誰にも手渡したくない。

「私が勝ったら渡すと、約束したわよね」

女の子の右手が、あと数十センチで、ひなたに届きそうになった。

「や、だよぅ…」

ひなたの手に力が入り、更にフェアリーリングを固く抱えた。


アイテムが勝手に逃げられたらいいのに。


……わかったわ……

「えっ?」

女の子が持っているアイテムが、強い光を放った。

強い光は一瞬で、光が弱まると共に、アイテムが透けてきて姿を消そうとしている。

「まさか」

光が消えると同時に、アイテムも消えた。

「消えた…わ。まさかあなた!?」

女の子が、ひなたの両腕を掴んだ。

ひなたが、ニヤニヤと笑って目線を逸らす。

「アイテムを持ってないなら、フェアリーリングは渡せないな」

「ちょっと!もしかして、アイテムに逃げろとか命じたんじゃないでしょうね!?」

女の子が、ひなたを揺さぶった。

ひなたが、ほくそ笑んでいる。

「ひなちゃん、やっちゃいましたね」

「やってくれたね。振り出しに戻ったじゃん」

女の子は下を向き、怒りで震えている。

「今回は引き分けよ。でも今度やったら、絶対に許さないから!」

「許すも許さないも、フェアリーリングの使い人を甘くみるからだよ」

「何よ!選ばれてるからって、偉そうにして」

女の子は手に入れられず、悔しそうに部屋から出ていった。

それから、間を空けずに練が入ってきた。

「ひなちゃん、今、知らない女の子とすれ違ったけど、大丈夫だった?」

「うん。大丈夫だったけど、アイテムがどこかに行っちゃった」

「えーっ!?」

「ごめんね。せっかく、練ちゃんがお父さんにお願いしてくれたのに」

ひなたが申し訳なさげに、練に謝った。

「いいのよ。ひなちゃん達に怪我がなかったんだから」

「うん、ありがとう」

帰りは、練の厚意で送ってもらうことになり、花南町美術館を後にした。

「残念だったね、ひなちゃん。やっとアイテムまで辿り着けたのに」

「うん」

「でもさ、不思議だよな。桂木が行くところにいつも出没するんだからさ」

「そうなんだよね。私の行動を知ってるみたい。偶然なのかな?」

「わからない。でも、フェアリーリングとフェアリーソードは繋がっているものだから、何かあり得るかもしれないな」

「うーん」


繋がってるか…あの子の方が能力を使いこなしているから、あり得るかも。そうなると、私の方が不利だよね。


「それよりも、ひなちゃん。さっきのは、ひなちゃんがアイテムに逃げろって命じたの?」

「そうだよ」

「じゃあ、ひなちゃんが命じれば、アイテムを手元に呼ぶ事だって、できるんじゃないかな?」


その手があったか!


「やってみる!」

命じることに集中するため、目を閉じ、アイテムが手元に現れるようにお願いした。

「うーん…」

しばらく試すが、アイテムは現れない。

「逃がすことはできても、呼ぶことはできなさそうだな」

蹴斗が気を落としている。

ひなたは、大きな溜め息をついた。


私の能力が未熟だからかな。


「そうみたい。いいよ、フェアリーリングが奪われなかっただけでも良かったんだから」

「そうだよな、桂木。あっ、そうだ」

蹴斗が何か思い出した様子だった。

「何?」

「母さんが、ドレスの修復が終わったってさ」

「そっか、もう直してくれたんだ。ありがとう、いつ受け取りに行けばいいの?」

「そうだね、母さんに聞いておくよ」

「あと、今度の試合の場所教えておくよ。あと、今度の試合の場所って教えたっけ?」


あれ?


「今度の試合…?」

「桂木、忘れたの?今度、試合出てくれるって約束したよね」

「そうだった。日曜日が試合だったね」

「ごめん、ドレスの借りだけどさ」

「いいよ。オッケー、オッケー!絶対、勝たせるよ」

愛蘭がひがんだ様子で、こっちを見ている。

「どうしたの?愛蘭くん」

「どうしたも、こうしたも、ひなちゃんが試合に来るなら、俺、全力で応援するしかないじゃん!例え、試合の相手チームだとしてもさ」

「……。いやいや、愛蘭くんの応援、要りませんから」

ひなたが手を振って、断った。

「何でー?ひなちゃん冷たいよー」

「冷たくない、いつも通りだよ」

そのやり取りを見て、蹴斗と練が笑っている。

「あっ、蹴斗も練ちゃんも笑うことないじゃん。いいさ、俺は絶対にひなちゃんの応援をするからね」

「だから、要らないんだって」

しばらくは車中で、こんなやり取りが続いた。


こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。

更新、お待たせいたしました。次回は明日の夜に更新予定です。

どうぞ、よろしくお願いします。

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