勝つのはどっちだ!?
8
花南町美術館に到着すると、入口にはイベントの担当者が待ち構えていた。
さすが、練ちゃんのお父さんだ。案内する人を手配してくれている。
すぐに、ひなた達は展示品が搬入されている部屋へと案内された。
展示品を梱包された箱が、広い間取りの部屋の中で、犇めくように置かれている。
「あとは、ひなちゃん達にお任せするわ」
練は気を利かせて、イベントの担当者を連れて別室に移動した。
ひなたと藤森兄弟だけになり、心置きなく手首につけたフェアリーリングを元の大きさに戻した。
「よし、見つかればいいけど」
フェアリーリングを梱包箱に近づけて、アイテムが入ってないか、1箱ずつ調べていく。
全体の3分の2程度の梱包箱を調べたが、フェアリーリングは反応しない。
……。
あれ?話し声がする。これは前と同じ。
……。
ここにいる?
ひなたには、話し声が聞こえた。
「あっちだ!」
部屋の左奥の梱包箱だ。
「桂木、聞こえたのか?」
「うん、あの箱から聞こえる」
ひなたが梱包箱を指差し、3人が行こうとするとーー。
ドン!と音がして、勢いよく部屋の扉が開いた。
「!!」
3人が振り向くと、幅広いつばのついた帽子を目深に被った、女の子が立っていた。
ソードのあの子!!
ひなたが先に手に入れようと、急いで梱包箱へと向かう。
女の子も急いで、梱包箱に向かいながら。フェアリーソードを使い、かまいたちを放ってくる。
「卑怯だってば!」
フェアリーリングから風を巻き起こし、かまいたちを相殺した。
その隙に、女の子は梱包箱へ辿り着き、梱包箱を開けて、例のブレスレットのアイテムを取り出した。
「私の勝ちね!」
「……っ!」
帽子で顔はよく見えないが、女の子は勝ち誇った様子だ。
「早く、フェアリーリングを寄越しなさい」
右手を出して、じりじりと、ひなたの方へ近づいてくる。
ひなたは胸にフェアリーリングを固く抱えて、渡す物かと身構えている。
以前は、フェアリーリングの使い人になるのが嫌だったけど、今は誰にも手渡したくない。
「私が勝ったら渡すと、約束したわよね」
女の子の右手が、あと数十センチで、ひなたに届きそうになった。
「や、だよぅ…」
ひなたの手に力が入り、更にフェアリーリングを固く抱えた。
アイテムが勝手に逃げられたらいいのに。
……わかったわ……
「えっ?」
女の子が持っているアイテムが、強い光を放った。
強い光は一瞬で、光が弱まると共に、アイテムが透けてきて姿を消そうとしている。
「まさか」
光が消えると同時に、アイテムも消えた。
「消えた…わ。まさかあなた!?」
女の子が、ひなたの両腕を掴んだ。
ひなたが、ニヤニヤと笑って目線を逸らす。
「アイテムを持ってないなら、フェアリーリングは渡せないな」
「ちょっと!もしかして、アイテムに逃げろとか命じたんじゃないでしょうね!?」
女の子が、ひなたを揺さぶった。
ひなたが、ほくそ笑んでいる。
「ひなちゃん、やっちゃいましたね」
「やってくれたね。振り出しに戻ったじゃん」
女の子は下を向き、怒りで震えている。
「今回は引き分けよ。でも今度やったら、絶対に許さないから!」
「許すも許さないも、フェアリーリングの使い人を甘くみるからだよ」
「何よ!選ばれてるからって、偉そうにして」
女の子は手に入れられず、悔しそうに部屋から出ていった。
それから、間を空けずに練が入ってきた。
「ひなちゃん、今、知らない女の子とすれ違ったけど、大丈夫だった?」
「うん。大丈夫だったけど、アイテムがどこかに行っちゃった」
「えーっ!?」
「ごめんね。せっかく、練ちゃんがお父さんにお願いしてくれたのに」
ひなたが申し訳なさげに、練に謝った。
「いいのよ。ひなちゃん達に怪我がなかったんだから」
「うん、ありがとう」
帰りは、練の厚意で送ってもらうことになり、花南町美術館を後にした。
「残念だったね、ひなちゃん。やっとアイテムまで辿り着けたのに」
「うん」
「でもさ、不思議だよな。桂木が行くところにいつも出没するんだからさ」
「そうなんだよね。私の行動を知ってるみたい。偶然なのかな?」
「わからない。でも、フェアリーリングとフェアリーソードは繋がっているものだから、何かあり得るかもしれないな」
「うーん」
繋がってるか…あの子の方が能力を使いこなしているから、あり得るかも。そうなると、私の方が不利だよね。
「それよりも、ひなちゃん。さっきのは、ひなちゃんがアイテムに逃げろって命じたの?」
「そうだよ」
「じゃあ、ひなちゃんが命じれば、アイテムを手元に呼ぶ事だって、できるんじゃないかな?」
その手があったか!
「やってみる!」
命じることに集中するため、目を閉じ、アイテムが手元に現れるようにお願いした。
「うーん…」
しばらく試すが、アイテムは現れない。
「逃がすことはできても、呼ぶことはできなさそうだな」
蹴斗が気を落としている。
ひなたは、大きな溜め息をついた。
私の能力が未熟だからかな。
「そうみたい。いいよ、フェアリーリングが奪われなかっただけでも良かったんだから」
「そうだよな、桂木。あっ、そうだ」
蹴斗が何か思い出した様子だった。
「何?」
「母さんが、ドレスの修復が終わったってさ」
「そっか、もう直してくれたんだ。ありがとう、いつ受け取りに行けばいいの?」
「そうだね、母さんに聞いておくよ」
「あと、今度の試合の場所教えておくよ。あと、今度の試合の場所って教えたっけ?」
あれ?
「今度の試合…?」
「桂木、忘れたの?今度、試合出てくれるって約束したよね」
「そうだった。日曜日が試合だったね」
「ごめん、ドレスの借りだけどさ」
「いいよ。オッケー、オッケー!絶対、勝たせるよ」
愛蘭がひがんだ様子で、こっちを見ている。
「どうしたの?愛蘭くん」
「どうしたも、こうしたも、ひなちゃんが試合に来るなら、俺、全力で応援するしかないじゃん!例え、試合の相手チームだとしてもさ」
「……。いやいや、愛蘭くんの応援、要りませんから」
ひなたが手を振って、断った。
「何でー?ひなちゃん冷たいよー」
「冷たくない、いつも通りだよ」
そのやり取りを見て、蹴斗と練が笑っている。
「あっ、蹴斗も練ちゃんも笑うことないじゃん。いいさ、俺は絶対にひなちゃんの応援をするからね」
「だから、要らないんだって」
しばらくは車中で、こんなやり取りが続いた。
こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。
更新、お待たせいたしました。次回は明日の夜に更新予定です。
どうぞ、よろしくお願いします。




