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勝つのはどっちだ!?

次の日の午後ーー。

ひなたと蓬介は、昼食を急いで食べると書斎へ入った。

書斎には、先に藤森兄弟が案内されており、蹴斗はソファーに座り、愛蘭は書斎の中の美術品や骨董品に触れて、騒ぎ立てていた。

蓬介が書斎に入ると、蹴斗が立ち上がった。

「初めまして、藤森蹴斗です」

深々と丁寧に、お辞儀をした。

書斎の棚の辺りで、それに気づいた愛蘭は

「あっ、ひなちゃんのお父さん。どうも~、弟の愛蘭でーす」

美術品を持ちながら、軽く会釈した。

「愛蘭っ!人に挨拶するときは、手に持っている物を置いてから、お辞儀しろって言ってるだろ」

「なんだよ~、ひなちゃんのお父さんの前だからってさ、格好つけちゃって」

「格好つけてないよ!いつも、お前がちゃんとしてないから、言ってるんだよ」

「あ~?だいたいは、ちゃんとしてるよ」

「してないっ!」

藤森兄弟のやりとりを見て、蓬介が笑った。

「ははっ、ごめんね、笑ってしまって…兄弟っていいね」

「全然、良くないですよ。蹴斗は、時間は守るし、礼儀正しいし…あれ?俺、なんだか…蹴斗のこと褒めてる」

愛蘭が首を傾げる。

「褒めてるね。良くできたお兄さんだね。ひなたも頼るはずだ」

蓬介は満面の笑みで、ひなたを見た。

「やめて、お父さんっ!藤森くんには協力してもらっているけど、そんなんじゃなーい!」

「そっか、お父さんは良いと思うけどね」

蹴斗は、顔を赤らめている。

蓬介に認められたようで、嬉しくなった。

「あ、ありがとうございます」

「も~、ありがとう。じゃないって!お父さんも、藤森くんもやめてよー!」

ひなたが半泣きになりそうだったので、蓬介はハウスメイドを呼ぶと、ひなたの好きなお菓子を添えて、お茶を出すように伝えた。

「ごめんね。あんまりにも、からかい甲斐があっ…おっと、いけないね。わざわざ、藤森くん達に来て頂いたのだから、本題に入らないとね」

3人に向かってウインクをした。

「うん、早くそうして欲しかった…うぅ」

蓬介は、3人にソファーへ座るように促すと、書斎の引き出しから3枚の紙を取り出してきて、渡して見せた。


紙にはフェアリーリングのことを調べた内容が記されており、使い人としてアイテムを揃えることが必要なこと、フェアリーリングに対してフェアリーソードがあること、全てが揃ったら、どこかの場所で契約の儀式をすると記されてあった。

「お父さん、これは、おじいちゃんの字だよね?調べていたんだ」

「うん、おじいちゃんは、亡くなる間際まで頑張ったんだけどね。やっと、これだけなんだよ」

ひなたは頷いた。

「ソードは知ってたんだ…だけど、アイテムの数とかは、わからなかったみたいだね。ふむふむ、そして…フェアリーリングとソードは対の関係…でも、いつか…ソードは吸収される!?守護者になる儀式?」

ひなたは魔女がやりそうな、怖い儀式を想像した。

「怖っ!もし、私がアイテムを揃えたら、私が儀式をするってこと!?」

藤森兄弟もフェアリーリングの儀式を想像した。

魔法のような力が使えるアイテムだ。容易い儀式では済まなさそうだ。

「体の一部を、代償にさせられたりして」

「ほら、インディジョーンズの話にありそうなやつみたいな」

インディジョーンズは知らないが、藤森兄弟が怯えている様子から伝わる。

「いやぁぁーー!!やだ、やだ!早く、あの子にあげよう」

「ひなた、放棄しないで。ひなたは契約しているから有利なんだ。憶測だけど、フェアリーリングも守護者がいなければ困るし、その結果、ひなたを大事にするだろうから、そんな大げさな契約にはならないはずだよ」

「そうかな…?」

「お父さんはそう考えるよ」

確証はないが、蓬介には自身がある様子だった。

「うん、そうだよね」

少し不安が和らいだ。

「それで、新しいアイテムのことは、聞いてきたのかな?」

蹴斗が頷いて答える。

「次のアイテムは、ブレスレットです」

「ブレスレットか…特徴は教えてもらったかな?」

「あっ、口頭で言われたのをメモにとりました」

蹴斗がリュックから、ノートを取り出し見せてくれた。ノートにはブレスレットの絵が描かれており、赤色のブレスレットに、黄色と紫色の宝石が付いている。

蓬介は首を捻り、以前に見たり、話を聞いたことがあったか、思い出そうと努力した。

3人は期待して、じっと様子を見ている。


残念ながら、蓬介の記憶の中には、心当たりがあるものは全くなかった。

「うーん、申し訳ないけど、僕には心当たりがなさそうだ」

3人はガックリと肩を落とした。

「やっぱり、また美術館や博物館巡りかな」


また、不法侵入を繰り返すの、嫌なんだけど。


ひなたが、憂鬱そうな顔をしている。

「それが正攻法だろうね」

蹴斗も、それがアイテムを手に入れる近道だと思った。

蓬介は3人の様子をみて、何か良い案がないか考えた。


ふと脳裏にひらめきが過る。

「…いや、まって、うん…そうだ。これなら、いけるかもしれないよ」

「えっ、お父さん、何か思いついたの?」

「うん、我ながら良い案だと思うんだけどね。今度、うちでホームパーティーをするよって言ったよね」

「うん。お父さん、言ってたね。それとどう関係が…」

3人に早く気づいて欲しいと思い、ニコニコして、返答を待っている。

藤森兄弟はすぐに、ピンと気づいた。

ひなたは、なかなか気づかない。


ホームパーティー…?


藤森兄弟と蓬介がニコニコして待っている。

「わかんないー、教えてよ」

自分だけがわからないので、もどかしい。

「桂木、ホームパーティーって、どんな人達が集まるんだっけ?」

「えっと、お父さんのお仕事仲間さん達」

「何の仕事してる?」

「古美術商…あれ?」


トレジャーさんもいるはず!!


やっとわかると、大きく頷いた。

「ひなちゃん、そこで情報収集できるでしょ」

「できる!お父さん、さすがだね!」

「ふふっ、お父さんもやっと、ひなたの為に役に立てそうだよ」

早速、蓬介はホームパーティーの招待客の中で、裏でトレジャーをしている人を教えてくれた。

「結構いるんだね。…そして、藤森くん達のお父さんも…まぁ、そうだよね。藤森くん達にさせているくらいなんだから」

「藤森さん、来てくれるといいけどね」

蓬介は微妙な面持ちだ。

「父さん、あまりそういう場が好きではないから。来なかったら、すみません」

蹴斗の表情が強張っている。

蓬介は蹴斗の表情を見て心配になった。

「蹴斗くん、参加は無理強いではないし、子供の君が、代わりに謝らなくていいんだ。僕の方こそ、ごめんね。君に気を遣わせちゃったね」

蓬介の優しさが身に染みる。

「いいんです。ありがとうございます」

隣に座っていた愛蘭も、安堵した様子だ。

「藤森さんには僕が直接、電話してお誘いしてみるね」

蹴斗の強張った表情も緩んできた。

「はい、お願いします」


「失礼致します」

タイミング良くハウスメイドが、お茶とお菓子を運んできた。

「ひなたの好きなお菓子も頼んであるよ」

「やっほう!さすがお父さん」

ひなたはぴょんぴょんと跳ね回った。

「さてと。じゃあ僕は、さやかさんの機嫌でも、とりに行ってくるね」

「うん。きっとお母さん、拗ねてると思う」

蓬介を見送ると、3人でお菓子とお茶を頂いた。

「うーん、やっぱり、いちごタルト最高!」

昼食を食べた後なのに、ひなたはパクパクとお菓子を食べている。

「ひなちゃん、良く食べるね」

「頭使ったから、お腹空いちゃって…」

「ひなちゃん、そんなに頭使ったっけ?」

愛蘭がくすくすと笑う。

「愛蘭くん、失礼だなぁ」

ふと、蹴斗を見ると、ほとんどお菓子に手をつけていない。

「藤森くん食べないの?それとも、お腹痛いとかかな?」

甘いものが好きな蹴斗が、お菓子に手をつけないので心配になった。

蹴斗の顔を覗き込むが、顔色は悪くなさそうだ。

「大丈夫?」

ひなたの優しさは、蓬介譲りなのだろう。

「うん、大丈夫だよ。本当に優しいね。桂木も、桂木のお父さんも。俺の父さんも、そうであったら良かったのに…」

「優しい?そうかな、ありがとう。ちなみに、藤森くんのお父さんって」


さっき、藤森くん、お父さんの話をして、暗い顔をしていたし、これ以上は触れない方がいいのかな。


「ううん、やっぱり何でもない。藤森くん、このお菓子ね、メロンパンの皮みたいにサクッとして美味しいんだよ」

「メロンパン!食べてみるよ」

蹴斗は、お菓子を食べ始めた。

「うまっ!」

「でしょ?」

ひなたはハウスメイドを呼んで、お茶とお菓子の追加を頼んだ・

ひなた達の優しさに、蹴斗のモヤモヤした気持ちは解消された。


こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。

昨夜は投稿できず、今回は長めのストーリーとなっております。

次回更新は、明後日の夜までの予定です。

どうぞ、よろしくお願いします。

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