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仲間と共に

邸宅に入ると真っ先に、出迎えたハウスメイドに声を掛け、さやかが在宅しているか確認した。

さやかは外出中だった。

「18時頃には、帰宅されるようですよ」

「わかった、ありがとう」


ふー、良かったよ。お母さんには悪いけど、急に同級生の男の子とか連れて来たら、お母さんがすごく、はしゃぎそう。そうなったら、ゆっくりとフェアリーリングの話をしている場合ではなくなるから。


ひなたは慣れた感じでハウスメイドに、お茶やお菓子の準備を頼んだ。

来客時に対応できるようにと、さやかから仕込まれた賜物だ。

「ひなたお嬢様のボーイフレンドですか?」

ハウスメイドが、ひなたに聞いてきた。

「ぜっんぜん、違う!」

勘違いされたくないので、即座に否定した。

「あら、残念です。奥様もおられたなら喜ばれて、はしゃがれたでしょうね」

「やっぱり?」

ハウスメイドは、ひなたにウインクして、こっそりと囁いた。

「ご心配なく、今、ハウスメイドは私のみです。奥様が帰る前にお二方を帰せば、秘密にできますよ」

「ありがとう。お母さんにはお菓子が減っていることを上手くごまかしておくよ」


秘密にするつもりはなかったが、さやかが練と似たタイプである。

ひなたがクラスの男の子の話をした場合には、目をキラキラと輝かせて聞いてくるのだ。


お嬢様育ちは、みんな性格が似てるのかな。あっ、でも、私はお母さんとは似てないな。じゃあ、お父さん似かなってなるけど、あんな穏やかな性格ではないし。


「早く、ひなちゃんの部屋に行きたいなー」

愛蘭が待ちきれなくて、急かしてきた。

「あっ、待たせていたんだった。ごめん、ごめん。私の部屋はこっちね」

藤森兄弟を連れて、自分の部屋に案内した。


「どうぞ」

ドアを開けて、藤森兄弟を長椅子に座らせた。ひなたは机の引き出しの中から、ブレスレット状の

フェアリーリングを持ってきた。

「フェアリーリングって言うの」

長椅子の正面にあるテーブルの上に置いた。

「これがあの時の?前に見たのと違うよ」

「あっ、ごめん」

フェアリーリングに大きくなれと心のなかで命令すると元の形になった。

「すげぇ!!」

藤森兄弟は、まじまじと見つめた。

「これで飛んだのか」

「桂木、これ触っていい?」

「いいよ」

フェアリーリングを蹴斗に手渡した。

その瞬間、蹴斗が急に大荷物を持ち抱えたような状態になった。

「重っ!桂木、よくこんなの持てるな」

「えっ、冗談でしょ。羽根みたいに軽いんだよ」

「いや、10キロ以上あると思う。普通に片手で持てない」

「蹴斗、俺に貸して」

蹴斗が愛蘭に手渡す。

愛蘭が手に持つと、フェアリーリングからチクチクと針みたいな痛さが伝わってくる。

「これ、まずいやつだ。ひなちゃんに返す!」

愛蘭がフェアリーリングをひなたに手渡した。

ひなたの手元に戻ってきたフェアリーリングは何事もなかったかのようにしている。


愛蘭がため息をついた。

「これ、ご主人様が誰か、わかってるよな」

「うん、多分。契約とかいるやつ」

蹴斗が頷いた。

「さっきのブレスレットから、この形になるのは最初から?」

「うん」

ひなたはフェアリーリングを優しく撫でた。

「初めは、ブレスレットになって手首から外れなくなってさ、困ったりしたんだよ」

「やべぇ、呪いのブレスレットじゃん」

愛蘭が苦笑いしている。

「変形してもね、月の光を浴びたりしないと元に戻せないとかあったんだよ。だけど、何回かフェアリーリングの力を使ってからは、心で命令を伝えれば、私の言うことを聞いてくれるようになったよ」

「ちなみに、桂木はこれと契約したの?」

「契約…かな。わからない。選ばれたってお父さんが言ってた。どうして選ばれたかさえ、理由がわからないんだよ。わかっているのは、他のアイテムを探すことだけ」

藤森兄弟は疑問に思った。

「どうして?他にさがすのさ。これだけで充分な力だよね」

ひなたは首を振った。

「これだけでは力が安定していなくて、アイテムを揃えてセットで使う物だと、おじいちゃんが言ってたんだって」

「力が安定していないのか」

「まだ、力が強くなるのか…」

愛蘭も蹴斗も相当、危険なアイテムに出会ったと確信し沈黙した。

「ごめんなさい。危ないって感じるよね。この事を秘密にしてくれるかな?……それでね、やっぱり、アイテム探しは私だけで探すよ。ただし藤森くん達に、ばったり会った時は、お手伝いするからね」

ひなたが寂しく笑った。

蹴斗は、ひなたの手をぐっと掴んだ。

「!」

ひなたは驚いた表情で蹴斗を見た。

「そんなこと、桂木だけにはさせないよ」

「藤森くん…」

「やれやれ、蹴斗がそういうなら、俺も協力しなきゃね。それに、可愛いひなちゃんを一人で大変な目に合わせるわけにはいかないよ。俺達なら、知識と経験があるから、必ず、助けになるよ」

愛蘭は、蹴斗とひなたの手の上に、自分の手を重ねた。

「ひなちゃん。先に言っとくけど、自分を責めたりしなくてもいいからね。蹴斗も俺も自分自身で決めた事だし、俺も将来のトレジャーとして経験を磨くつもりでさ」

愛蘭がにんまりと笑う。

「ありがとう」

「桂木、大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」

「藤森くん。うん、ありがとう」

蹴斗と愛蘭の姿がぼんやりと目に映る。


いけない、泣いてる場合じゃない。


「早速だけど、次に行く場所を決めておこうと思うの」

「ふっふっふっ、ひなちゃんがそう言うと思って…」

愛蘭は自分の学校のリュックから、ノートを取り出した。

ノートには近隣の美術館、博物館などの場所、内部の間取り、入口や扉、窓などの位置、防犯カメラの設置場所、警備員が巡回する時間まで調べて、詳しく書き込んであった。

「すごい…愛蘭くん、全部調べたの?」

「当然だよ、下調べは大事だよ。あと、念のため、忍び込む当日の昼は下見にいくけどね。それは蹴斗の役目だから」

「そう、どこに何を把握するのは大事なことだからね。昼に詳しく下見をしておけば、より安全に夜に忍び込む事ができるんだ」

「そっかぁ」


本来は、ここまで準備を整えてから、忍び込むのか。私がしていた事は全然、足りてないね。うーん、仕方ないか。私、初心者だし。


「それだけじゃないよ~、俺達は目利きもできるんだよ」

「愛蘭の方が、目利きは良いんだ」


すごい、すごい!この人達、最強でしょ!


「役に立てそうでしょ、俺達」

蹴斗がひなたを見ると、何度も頷いており、力強い味方を得て、満足しているように見えた。

「あのね、多分…なんだけど、フェアリーリングは、近くにアイテムを呼び寄せる力があるらしいの」

「それなら、好都合じゃん」

「呼び寄せる力があるのであれば…よいしょ」

蹴斗が花南町内から、周辺の町までを記した地図を広げた。

地図には美術館、博物館らしき位置に赤丸が印してある。


こんなものまであるの!?


「桂木が行った所、全部教えてくれる?」

「うん、わかった」

ひなたが地図を指差して、蹴斗が青色のペンで印を付けていき、侵入した美術館や邸宅の全てに印を付けた。

「そうだな…」

蹴斗が1つの見解を見出した。

「桂木、この付近にはないかも」

「えっ、でもお父さんがどこかのトレジャーさん宅にはあるかもって」

「うん。その考えも正しいけど、フェアリーリングを見た感じの年代から考慮すると…ここかな」

蹴斗が隣町の中心地から離れた博物館を指差した。

「明後日から、この博物館にはイギリスの古代、中世の展示が始まるんだ」


「……!」

遠くで誰かが、ひなたを呼ぶような声が聞こえた。


「藤森くん、そこに行くよ。ううん、そこに必ず行かなくちゃいけない気がする…」

蹴斗と愛蘭は、ひなたの様子から何かがすあるだろうと確信して、お互いに頷いた。

「わかった。じゃあ、待ち合わせ場所と時間を決めよう」


3人で待ち合わせ場所と時間を決めた。

今週の金曜日に行く事となった。

その後は速やかに藤森兄弟を帰し、ハウスメイドと後片付けに勤しんだ。

頼もしいハウスメイドとの連携のおかげで、なんとか、さやかにばれずに済んだ。


お父さんにはどう説明しようか。


蓬介に藤森兄弟の件を報告しなくてはならない事が、ひなたの頭をもたげた。

しばらくは、どう伝えた方が良いのか迷っていたが、とりあえず先手を打って、手紙を書き、書斎の机の上に置いておいた。


夕食を済ませて部屋に戻ろうとした時、蓬介が帰宅した。


書斎に行った蓬介が、ひなたを呼んだ。

「ひなた、お父さんが食事を食べてから、ちょっとお話しようか」

蓬介の声がいつもより低く、心なしか怒っている様に感じ取れた。


やっぱり、フェアリーリングの事、他人に知られてはだめだったのかな。


「う、うん」

「食事が終わったら、ひなたを呼ぶね」

「はい」

部屋に戻り、ドキドキしながら呼ばれるのを待った。どんな言い訳なら、蓬介を納得させる事ができるのかーー。


こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。

2夜投稿出来ませんでしたので、今回は長めにストーリーをあげています。

次回は明後日の夜までの投稿を予定しております。

どうぞ、よろしくお願いします。

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