同業者達
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次の日の夜。
書斎で蓬介に、昨日までの結果を報告していた。
「おつかれさま、ひなた。今のところは何もトラブルが起きてなさそうだね、安心したよ」
ひなたは頷いた。
「美術館ではヒヤヒヤしたけど、何とかなったから」
「そうだね。そして、フェアリーリングに手助けして貰えるようになったね」
「うん、やっとね…。魔法みたいな力なんだよ。人を眠らせたり、風を起こしたり」
「なるほど…本当に不思議なアイテムだ」
テーブルの上のフェアリーリングを眺めた。
「時々、使っててね。力の威力に怖くなる…」
蓬介が頷いて、ひなたの頭をポンポンと撫でた。
「うん、良く頑張っているよ、ひなたは。自慢の娘だよ」
うぅ、お父さんに褒められると、もっと頑張らなくちゃって気持ちになるよ。
「ひなた、明日はどこに行くか決めたかな?」
「うん、隣町の美術館にフランスの中世時代の至宝って展示イベントが始まったんだよ」
「かなり大きな展示になるね」
「そう」
蓬介は少し険しい表情になった。
「どうしたのお父さん」
「ひなたはまだ、他のトレジャーハンターさんには遭遇してないよね」
「うん。うち以外にいるの?」
「いるよ。普通に、身近にね」
ひなたは不安げな顔をした。
蓬助は左斜め上を見上げ、何か数えている。
「この町内は多い方だから、僕が知っているだけで10数人いるよ」
10数人だって!?
「多いね」
「結構いるよねぇ」
蓬介はは眉をひそめた。
「大きい美術展や展示イベントは彼らにとっては狙い目だからね。盗んだりは警察沙汰になるので、本物に直に触れて目や感覚を養ったり、悪質なのは模倣品と取り替えて、頂いたりね」
「泥棒さんと一緒じゃん!」
「あれ、でも…私がしてる事も似てる?」
ひなたは首を傾げた。
蓬介はひなたの様子を見て、ひなたが怒りださないまでの加減で笑った。
「うん、だけど悪気はないんだ。彼らの考え方も、皆がそうではなくて、展示品も正規のルートで集まったものばかりではないから、正しい持ち主に、お礼のお金と引き換えに返却したりね。あるいは、粗末に扱う業者から、古美術品を守るという考えの人もいるんだ」
「でも、自分の為に盗む人もいるんだよね」
「まぁね、トレジャーハンターも様々だよ」
「そんな人達に会ったら…」
蓬介は黙って頷いた。
「相手はひなたより、ずっと長い間、それだけをやってきたプロもいるんだ。経験の少ないひなたには危険な事だ」
ひなたの頭の中で、悪い顛末がどんどんと思い浮かんだ。
「怖いかい?ひなた」
蓬介が心配そうにひなたを見た。
ひなたは頭を振ると、フェアリーリングを握って片手で掲げた。
「よーし、全員まとめて、眠ってもらおう!」
「それが無理なら、残りまとめて、吹き飛ばすだけだ!」
ひなたが蓬介に向かって、両手でガッツポーズをした。
「おじいちゃんも、そんな風に前向きだったね」
「うん、初めは怖かったけど…今は、中途半端で投げ出したくない。おじいちゃんが生きていたなら、きっと…そう、前を向いて、やってみるだけやりなさいと言ってると思う…だから、やってみる!」
「ひなた、そうか」
蓬介はひなたの頭を撫でた。
お父さん、ひなたに奮い立たせる力を与えてくれて、ありがとうございます。
自分の気持ちを固めるために、蓬介に向けてガッツポーズをした。
「あっ、そういえば」
ひなたは、ふと思い出した。
昨日の夜に藤森くんにあった事を話した。
「藤森くん、バスケットボールを持ってたし、練習していたみたいだった」
「藤森さんか…」
蓬介は神妙な顔つきになった。
「そうだ、僕と同業者だったね」
「藤森くんもそう言ってた」
「うちの同業者のパーティーで、藤森くんのお父さんが来たことあったね」
「見たの覚えてるよ。藤森くんのお父さんってどんな人なの?」
「近寄り難かった」
「嫌な、感じだね」
「お父さんは先入観で、人を判断しないようにはしているんだよ」
蓬介はひなたにウインクした。
「偉いねー、お父さん。私、無理だもん。藤森くんだって、藤森くんのお父さんがうるさいって言ってたよ」
「そんな雰囲気だね」
蓬介はひなたの肩に手を置いた。
「いいかい、ひなた。藤森くんには悪いけど、藤森くんが夜に練習をしていたとは限らないんだ。ひなたが知らないだけで、もしかしたら…」
「えっ」
「いやいや、考えすぎだね。今日はここまでにしておこう。ずっと、ひなたと2人きりでいると、さやかさんに僻まれてしまう」
「2人ばっかり~ってね」
「お母さんは、お父さんも私も大好きだからね。寂しくなるんだよ。じゃあ、お母さんの所に行ってくるよ」
「ひなた、さやかさんを頼んだよ」
「はい、はい」
「あと、ひなた。明日はくれぐれも気を抜かないで。もし、ひなたが危ないと感じたら、引き返す事だって大切な事だよ」
「わかった~」
ひなたは、さやかのご機嫌をとるために、リビングへ行った。
「お母~さん、私と一緒にお茶を飲もう」
ひなたの声にさやかは喜んで、ハウスメイドに今日買ったばかりの紅茶を淹れるように頼んだ。
ひなたにはミルク多めで。
お茶を飲んだ後、部屋に戻り、明日の昼の下見の準備と、夜の準備をして、ベッドに横になった。
眠りにつく前に、また、ふと頭によぎった。
藤森くん、バスケの練習じゃなかったら…いや、だめだよね。そんなことあるわけないよ。藤森くんみたいな優等生に限ってさ。
ひなたの心の、もやもやしたものを払拭するように寝る事に専念した。
明日は、大変な一日になりませんように。
こんばんは、小桜です。今夜も読んでくださりありがとうございます。
次回更新は明日を予定しております。
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