58.ダンジョンからの脱出
ジル師匠とミュワーズの意識はない。
「どうしようか…」
「みんながいるのは25階層だな」
「そこに戻るにしても30階層のボスモンスターが復活する可能性があるからな」
「30階層のボスモンスターって?」
「サンドドラゴン。さっきはジル師匠が瞬殺してたけど…」
「戦えるのは俺と北村と凪、それと…」
永田はそう言いながらドラレさんを見る。
「うちはもう動けるよ。弟子くんからもらったポーションの効き目が良かったみたい」
ドラレさんの脚はいつの間にか治っていた。
ライル商会のポーションの効き目は凄いみたいだ。
「ドラレさん、俺達とこのまま最上層まで進めると思いますか?」
「うーん。無理じゃない?うちもこのダンジョンよく知らないし、ジルとミュワーズを連れて行くんでしょ?多分誰かしら死ぬと思うよ」
「ですよね…。サンドドラゴンは倒せます?」
「どうだろう。そこの勇者2人がどれだけ戦えるかだなー」
ドラレさんは永田と神山さんを見た。
「俺はほとんど戦えないです。凪は戦えるけど隠密特化なんで火力はないです」
「じゃあ厳しいかもね」
ドラレさんにそう言われて俺は悩んだ。
「あ!」
俺は自分の腕を見て思い出した。
俺の腕には再会の腕輪が装備されていた。
「永田!メアはみんなと一緒にいるんだよね?」
「ああ。25階層に向かってもらった」
「これを使って25階層に行って、動ける人で頑張って20階層まで降りて、ボスモンスターのリビングアーマーを倒せばダンジョンから出れる」
「ん?どういうこと?」
永田は困惑していた。
俺はみんなに再会の腕輪について説明をする。
「凄いなこれ」
「このダンジョンの宝箱で見つけたんだよね」
みんなに俺に触れるように伝える。
俺はジル師匠を担ぎ、ドラレさんはミュワーズを担いだ。
俺は目を閉じて、念じる。
「わ!え?イツキ!」
目を開けると、目の前にはメアがいた。
▽ ▽ ▽
メア達と合流ができ、一旦休憩のため食事をしている。
「イツキ、これからどうするの?」
メアは心配そうに聞いてくる。
「動けない6人をどうにか運んで、20階層のボスモンスターを倒して街に戻りたい」
俺がそう言うと、ドラレさんが口を開く。
「うちの魔法なら6人運べるよ」
「本当ですか」
「うん。でも街にこのまま戻るの?」
「え?どういうことです?」
俺はドラレさんの言っている意味が分からなかった。
「ミュワーズはそれなり有名だよ?気絶したミュワーズを運んで移動なんかしてたらすぐに情報が回るね」
「あ!そういうことか」
他の冒険者からの目を考えていなかった。
俺は少し悩む。
すると永田が口を開く。
「凪のスキルなら姿を認識されないように出来る」
「それって人数制限ってある?」
「いままで凪とプラスで1人しかやったことがない」
「食事が終わったら試してみよう。ドラレさんが魔法で持ち上げている状態でやってみて」
「わかった」
神山さんは無言で頷いた。
食事が終わり、ドラレさんは気絶している【魔女の四重奏】の3人を風で包んで持ち上げた。
「さすがに触れていないと出来なそうだな」
永田がボソッと呟いた。
神山さんがドラレさんに触れる。
すると神山さんとドラレさんの姿が消えた。
それにドラレさんが持ち上げてた3人の姿も消える。
「お!成功だ」
「姿が消えた人の魔法まで消えるのか」
永田はまた何かを考えていた。
「これで帰れそうだ。ドラレさん、その状態で戦闘は難しいですよね?」
「ミュワーズ達以外も運んだ方がいいんでしょ?じゃあ難しいかもね」
「戦えるのは俺とメア」
俺は永田を見る。
「こっちは凪と委員長と岩佐先生と鈴原だな」
「シラユキとゴウキももう少ししたら呼べるはず、20階層のリビングアーマーなら倒せるかもしれない」
少し希望が見えた。
「弟子くん。街に戻ったらどうするの?」
「え?」
「あー。それは愛しのジルが起きてからでいいか」
「すみません」
自分の頼りなさを痛感した。
「なんか詳しくはわかんないけど、弟子くんも勇者達と同じところから来たんでしょ?」
「は、はい」
「めんどくさい内容だし、愛しのジルなら解決してくれるから無理しなくていいからね」
ドラレさんは敵だったはずなのにすごく優しい。
恋の力は恐ろしい。
「とりあえずミュワーズ達にはこれを付けておくね」
ドラレさんは腰の巾着から首輪を取り出した。
「それは?」
「ミュワーズにもらったんだけど、結局使わなかった惰性の首輪」
「惰性の首輪?」
「奴隷にしたい人にこれを付けると拉致がしやすくなるのよ」
「え!?」
「獣人ちゃん達には気分のいい話じゃないと思うけど、襲った相手に装備して無力化するの。それで静かな状態で闇奴隷商に連れて行くの」
「なるほど」
メアはその首輪に見て、顔を引きつらせた。
「戦おうとも逃げようとも思えなくなるから」
「そんな効果が」
「うん。簡単な指示なら聞くし、食事も摂ってちゃんと生きようとする」
「なるほど……」
異世界の文化過ぎて何も言えなかった。
俺の表情を見て、ドラレさんが口を開く。
「ジルがすぐに起きなかった場合、これを付けないと3人が暴れだしちゃうよ。ミュワーズは微妙だけど、他の2人は魔法使いとしては優秀だから」
「わかりました。つけてください」
「はーい」
ドラレさんはミュワーズ達に惰性の首輪をつけた。
俺は力不足を痛感しつつ、最適な行動をとれるようにドラレさんに質問する。
「他に不安点はありますか?」
「うーん。勇者達は街に戻ってどうするの?」
ドラレさんは永田に聞く。
「まずは宿に戻ろうかと」
「ダンジョンについてきていた兵士は死んじゃったけど。またゼネバースに戻りたいの?」
「いえ…」
永田は黙って何かを考え始めた。
「このまま別の国とかに移動はできると思いますか?」
「この子が起きないと無理なんじゃない?」
「そうですね。どうすればいいんだ…」
永田は霧崎さんを見ていた。
俺は2人の話を聞いて、いい案を思いついた。
メア呼んで耳打ちをする。
「変化茶を宝箱で見つけたって言ったら、みんなに飲ませてもいい?」
「いいと思うよ。薄めたものは売ってるし、原液はどう頑張っても手に入れられないと思うから」
「そうか。でも念のため宝箱から手に入れたことにするね」
「わかった。話を合わせるね」
僕はドラレさんと永田の話に参加する。
「あの!」
「弟子くん、どうしたの?」
「永田達がミュワーズ達の変装をするのはどうですか?」
「変装?」
俺は変化茶を取り出す。
「宝箱から手に入れたんですけど、これ想像した姿に変わる飲み物なんです」
「そんなものが?」
「はい。効果は3日間です。これを使って【魔女の四重奏】に変装してれば、一時的ですが色々問題が解決すると思うんですが」
「そうね…」
ドラレさんは何かを考え出した。
「第2皇子陣営が接触してくる可能性があるけど、それはうちが対応すればどうにか?」
「もし喋らなくてはいけないなら、これもあります」
俺は変声の岩砂糖を出す。
「これは想像した人物の声になれるアイテムです。効果は1時間ですが」
「あーすごいね。このダンジョンがこんなに面白いものが出るって知らなかった」
ドラレさんは2つのアイテムを面白そうに見ていた。
「どうですか?」
「うん。ありだね。勇者達もそのままミュワーズの宿で生活すればいい」
「いいんですか?」
永田が心配そうに言う。
「バカみたいに高い宿で、部屋も多すぎるくらいなんだよ」
「そうですか。じゃあ今話した作戦にしましょう」
「そうだね」
僕達は街に出るまでの算段を付け、20階層に向かうことにした。
向かおうとすると永田が話しかけてきた。
「北村、その飲み物ってもっとないのか?」
「え?」
「色々使えそうじゃん」
「あーごめん。これしかない」
「そうか。残念だ」
永田はそう言ってみんなの元に向かった。




