55.vs魔女の四重奏⑤
凪が斥候から帰ってきた。
「豪ちゃん。モンスターと獣人の冒険者が戦闘してる」
「え?それって北村君の仲間じゃない?」
「助けてもいい?」
「当たり前だ。急ぐぞ」
「「うん」」
俺達は凪の案内で、北村の仲間の元へ向かう。
モンスターと戦っていたのはメアさんだ。
後ろにはミランさんと【魔女の四重奏】の女が倒れている。
「大丈夫ですか!」
「あ!ナガタさん!!」
メアさんはモーニングスターを振り回している。
戦っているモンスターはゴブリンみたいだけど少し違う種族の様だ。
俺達はすぐに戦闘に加わった。
「ごめんなさい。【魔女の四重奏】のメンバーに襲われて、何とか倒すことはできたんだけど…」
「なるほど」
俺は剣を取り出してゴブリン風を倒していく。
凪や委員長に比べたらペースは遅いけど負ける相手ではない。
「豪ちゃん!たぶんいっぱい来る」
「え?」
凪の指差す方向を見ると、大量のゴブリン風がこちらに向かって来ていた。
「根暗!あいつらは私に殺させろ」
「根暗……」
委員長の裏アカモードは時々ちゃんと傷つく。
委員長は炎を出してゴブリン風に向かって行った。
俺も負けじと剣を振るう。
『剣術』のおかげか倒すことは難しくない。
数分戦い、ゴブリンみたいなモンスターをすべて倒すことができた。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます」
メアは安心したようだ。
「【魔女の四重奏】のメンバーも連れて行こうと思ったんだけど、さすがに2人を引き摺りながら上層には向かえなくて…」
「俺達の方にも【魔女の四重奏】が気絶して倒れてるので、そこに連れて行きませんか?」
「え?」
「オータルさんが倒してくれたんですが、オータルさんも倒れちゃって」
「え!?」
メアさんは驚いていた。
「委員長。メアさんと一緒に、岩佐先生達の所に戻ってくれないか?」
「いいけど、永田くんはどうするの?」
「凪と一緒に進む」
「大丈夫なの?」
「俺も少しは戦えるし、凪が安全なルートを見つける」
「うん」
凪は頷いた。
「メアさん1人だと2人は運べない。それに【魔女の四重奏】がもし目覚めたとき用に戦力は集めた方がいい」
「わ、わかった」
委員長は俺が心配なのだろう。
だが俺と委員長が逆だと意味がない。
【魔女の四重奏】が目覚めても俺では対応できないだろう。
「それじゃあメアさん。行きましょう」
「はい!」
メアさんは自分よりも大きいミランさんを抱えた。
獣人は力が強いようだ。
「じゃあ俺達も行くぞ」
「うん」
俺と凪も上層を目指した。
▽ ▽ ▽
俺はスカイサーペントに苦戦していた。
そこそこ強いので時間は掛かるけど倒すことは出来る。
でも数はどうしようもない。
遺跡の中を飛び回る大きなヘビ。
邪魔すぎる。
「ジル師匠!」
「数に文句言うな!」
「まだなんも言ってないですよ」
「予想はできる」
ジル師匠はキングロックコブラを相手にしていた。
俺はひたすら筆剣を振り回した。
シラユキは温存しようとしていたが、選択を間違ったか。
「ジ~ル!!」
「え?」
女性の声が響き渡った。
「ジルジルジル!!」
声の出所を見ると、さっき倒したドラレがなぜかジル師匠に抱き着いていた。
「おい!なんだ!邪魔だ!」
「えーヤダヤダ!離れたくない!」
「なんだこいつは…」
俺も混乱したが、ジル師匠はもっと混乱している。
そんな2人にキングロックコブラは攻撃を仕掛けた。
シャアアアア!
「ねー邪魔しないで。サイクロンピアサー!」
高速回転した風の槍のようなものがキングロックコブラ達だけでなくスカイサーペント達の体に穴をあけて消滅した。
俺は一瞬過ぎて理解が出来なかった。
「あーもうジル好き!!結婚して!!ジルー」
ドラレのこの急変はどういうことなんだ。
「おい!離れろ!結婚もしない!」
「えーなんでよ。傷物にした責任取ってー」
「うるさい。離れろ」
ドラレの勢いにジル師匠は苛立ち始めていた。
「えーっと。ドラレさん」
「ん?ああ。君か」
ジル師匠を見ていたトロトロの目が一瞬に無関心の目に変わった。
「一旦話をしませんか。ジル師匠も困惑してますし」
「えージルの弟子なの?言ってよー」
師匠の弟子と言ったら少し目が緩んだ。
「まずは敵なのかどうかを聞きたいです」
「えーもう敵じゃないよ。うちはジルの婚約者だよ?」
「ちがう。勝手に言うな」
ジル師匠は困惑中。
「いいんですか?仲間を裏切って」
「仲間?まあ仲間だけど。強い人と戦いたいから誘いに乗っただけだし、トシハルを抱けとか言われるの嫌だったし」
やっぱり藤井先生はそういう使い方みたいだ。
「てかトシハルを抱くより、ジルに抱かれたいし!」
「はぁ?」
どうしよう。
まさかの方向で思春期の俺が殺されそうだ。
「じゃあ俺達に協力してくれるってことですか?」
「うーん。ジルがお願いしてくれるなら?」
「は?」
「ジルが目を見て、「ドラレ!お前がいないとダメだ!」って言ってくれたら協力するし、ミュワーズの計画とか話しちゃうよ」
ジル師匠は嫌そうだが悩んでいる。
実際あの風魔法の攻撃は強かった。
ジル師匠の方が強いけど、普通に戦ってたら結構めんどくさい相手ではある。
「師匠。どうします?」
「あーうん」
ジル師匠は頭を掻きむしっている。
「俺は離れておきます?」
「弟子くんは気が利くなー」
「いらん!そんな気遣いするな!」
ジル師匠は本当に嫌そうだ。
「ドラレ」
「なーに?」
ジル師匠はドラレさんの目を見た。
「協力してくれ!これ以上は言わない」
「うーん。まあ今回はそれでいいよー。今後はもっとデレデレしてくれてもいいんだからねー」
ドラレさんはそう言って再びジル師匠に抱き着いた。
▽ ▽ ▽
順調に進めている。
最後の砂漠エリアにはほとんどモンスターがいなかった。
いても凪のおかげで接敵せずに済んだ。
「豪ちゃん。この階層も形が変なスライムだけ。敵対もしてこなそう」
「わかった」
俺達は進む。
「凪、もしかしたら……」
「大丈夫。わかってる」
「そうか……」
「邪魔はしないから」
「ありがとう」
凪は俺がしたいと思っていることを理解してくれているみたいだ。
本当に凪には助けられている。




