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49/52

あたし達の文化祭(美優)

 49話、美優視点です。

 短めdeath。




 ───ホントに二人きりになっちゃった。




 あたしの脳内で声を上げる、『期待』という名の存在。


 時はまたたく間に流れて、気付けば文化祭当日(1日目)。そんな自由時間の最中、優陽(想い人)と並んだあたしは、興奮する脳を抑えて静かに息を吐く。

 …大丈夫、二人きりなのは今がはじめてじゃない。


 あの時、未冬が言っていた決定事項ってやつ。あれを別に、信じていたわけじゃなかったけど。だからこそ、本当に有言実行されるとは思わなかったわけで。


 …一体、どんな手品を使ったのやら。そう簡単に釣られた優陽も優陽だと思うけどさ。


 彼の横顔を盗み見て、釣り上がりそうになる口元を隠す。


「それで美優、どこから回る?」


 あたしの内心など露知らず、呑気にしおりを広げて、距離をつめてくる優陽。さっきまでシフトだったせいか、若干汗ばんだ彼の匂いがあたしの鼻腔を──じゃなくて!


「とりあえず、食べ物系にいきましょ。…これより後だとほら、混んで並びそうだし」

「…それもそうだな」


 一拍遅れて頷いて、朗らかな笑みを浮かべた優陽。

 それっぽく、ついて出た言葉ではあったけど、どうやら納得してくれたらしい。…まぁ、実際時間取れなそうなのは事実だし、あながち嘘ではなかったけどさ。


 兎にも角にも、おおよその行き先を決めて、立ち尽くした彼の手を引く。…ちょっとだけ、大胆かもしれないけど、どのみちもう後には引けない。そう、これははぐれないため。だから、今なら密着したって問題はない。うん。

 誰に内心が聞かれるわけでもなく、自分の中で言い聞かせて、あたし達は人混みへ足を踏み入れた。



ーーー



 時刻は13時過ぎ。飲食用に開放されている、中庭の一角で、あたし達はどちらともなく息を吐く。


 少し早めのお昼ご飯──の、はずだったのに。蓋を開けてみれば、途切れぬ行列があたし達の行く手を阻んでいて。挙句、苦労して買った割高の焼きそばは、量も少なく物足りない。そりゃ文化祭クオリティだし、別に味は気にしなかったけど…気にしないようにしてたけど!

 思い出しそうになった口の中を、自販機で買ったジュースで無理矢理押し流す。


「ぅ…まだ残ってる気がする」

「はは…俺も…」


 二人して苦情を浮かべ、ペットボトルを空にする。


 そもそもこの学校は、飲食物の出し物が少ない!…けど、どこもかしこもコレなら、逆に納得というか。もし未冬が作ってたらこんなことにはならなかっただろうなー…なんて、的外れな考えを、思考の隅に追いやる。


 まずい…そう、色々な意味で非常にまずい。

 このままじゃ文化祭デートで距離を近づけるどころか、思い出したくない文化祭ナンバーワンになってしまいそうな勢い。…だからといって、これ以上何か、あたしが話題を持っているわけでもないし──


「──ん?これって…」


 あたしが一人、ドツボにハマりかけた刹那。不意に、顔を上げて、表情を緩めた優陽。

 あたしが隣にいるのに──なんて、そんな気持ちが沸き上がるよりも先に。ざわついた周囲に紛れて、聴き慣れた声が耳に届く。



『はい。ご紹介に預かりました、保健委員会委員長の柳沢と──』

『副委員長の暁です』

『只今、我々保健委員会では──』



 聴こえてきたのは、校内放送で流れた委員会のブース宣伝。…という名の、未冬(親友にして恋敵)の声。

 奇しくもこの状況──あたしも優陽も疲弊した、この状況で。本来聴きたくなかったはずのその声は、人見知りで上がり性の彼女の、その録音風景がありありと浮かばせて。

 デート的には誠に不本意──そう、不本意ながら!互いに顔を見合わせたあたしと優陽は、どちらともなく笑い合った。

 次回、優陽視点。

 多分また短めになります。

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