準備期間こそドキドキしない?
47話です。
何事も本番よりも本番直前の準備期間のほうがドキドキすると思います。えぇ、私だけかもしれませんが。
文化祭を来週に控え、忙しなく動く校内の空気。
実行委員同士の話し合いの結果、掲示物の顔抜きパネルに決まったあたし達のクラスは、デザイン・装飾・裁断などの役割へと分かれ、各々の作業を進めていた。
「あ、真田さん。そこの緑使い終わったらこっちによこしてくれなーい?」
「ん、了解。ちょっと待っててね」
一緒に作業をしていたクラスの女子に、そう返事をして刷毛を滑らせる。
この文化祭において、あたしの担当はパネルにつける装飾の色塗り。デザインが比較的早く終わってくれたからよかったものの、これが思った以上に大変で。ただ塗るだけじゃ寂しいよね、と。誰かが発した言葉を皮切りに、立体感を追求、パーツばかり増えたソレは、ようやく折り返しに差し掛かっている。
「はい、これ緑。…次は?」
「うーん…これ終わったら一旦、私らは休憩かな?まだ裁断終わってなあみたいだし」
「…だね」
周囲を軽く見渡して、深い息と共に言葉を交わす。なんでこんなに多いんだろ、と呟く彼女を背に、あたしはその場をあとにする。まぁ…手に持った冷たいペットボトルは、ちょっとしたあたしの下心だったり。
あてはない、けど。…なんとなく、己の足に従って向かった先。ちょうど教室前に差し掛かった瞬間、不意に出てきたいつも通りの優陽。こちらに気付いた彼は、朗らかな笑みと共にこちらへ手を振ってくれる。
「お疲れ様、優陽。もう少しかかりそう?」
「いや、一先ずこっちは終わりだな。間違って切ってさえなければ、の話だけど」
苦笑いに切り替えて、タオルで滴る汗を拭う優陽。そんな艶かし──じゃなくて、汗だくなその姿から、よっぽどの肉体労働だったことは想像に難くない。
閑話休題。
あたしは色塗り、優陽は土台部分の裁断を任されているクラスの出し物──顔抜きパネル。観光地とかによくあるアレなら、そんなに手間な作業じゃなさそう…と、そう思っていた時期があたし──というかクラス全体にあって。1週間前になっても尚、まだ完成していないのには、その発案者とデザイン担当の悪ノリ(?)にまで行き着く。
「──で、当の本人達はどこに行ったんだ?」
呆れた声で呟いて、視線を彷徨わせる優陽。流石に考えることは同じらしい。…いや、同じことを考えていたことに対して以心伝心、相性がいいんじゃないだなんて思ってない。そう、断じて思ってないけど!
とにかく!わざとらしく息を吐いて、あたしも倣って視線を彼から逸らす。
「──見つからないね」
「──だな」
待ち人来ず…ではなくて。教室内にいない2人を思い浮かべて、どちらともなく為息を吐く。
この『顔抜きパネル』の発案者──西条さんと、指名されたイラスト担当──未冬。
イラストに関して、なんだかんだクラスで未冬のスケッチブックの中身を知らない者はいなくて。故に、彼女の意思すら関係なく満場一致で決まったのはまだいい。ただ、人見知りを拗らせた彼女からすればまぁ、こうなるのはある意味必然というか。意趣返しとばかりに、その日のうちにとてつもない情報量のイラストを納品して、それ以降文化祭準備に姿を現したことが無いのだ。
「まぁ、これに関しては持ち上げたあたし達が悪い節もあるからね…」
「はは…笑えねぇ」
言葉とは裏腹に、乾いた笑いが重なる。
…尤も、この仕事量に関しては、そのイラストに感銘を受けた西条さんが原因みたいなものだし。『どうせなら立体的にしょう!』とか、そんな軽い一言が、次の日の設計図持参とかいう行動に変わっていたのだから、それがもう手に負えなくて。でも、2人はちゃんと高クオリティで与えられた仕事を既にこなしているわけで。反論できるような人も技術も他の誰も出せなかったから、こうして今に至る。
うん、なんだろう…この身内の不始末感。
いずれにせよ、なんだかんだクラス一丸となって進んだパネル作成。予定では、明日エントランスで組み立てられることになっていて。言外に確認したあたし達は、どちらともなく微笑み合う。
「とりあえず、少し休んだらまた俺は作業に戻るから」
「うん。頑張って」
おうよ、と。差し出したペットボトルを受け取って、再び室内へ消えて行く優陽。なんか今の、夫婦みたいでなんかいい雰囲k──じゃなくて!
このドキドキはきっと、納期とか不安的なものなの。うん。あたしは断じて!そんなにチョロくなんかない!
文化祭を誰かと一緒に回るどころか、そもそもそんなものは無かった。
仮にあったとしても一緒に回る人はいなかったしね。全員マスクをした高校生活、隣の席だった友人の顔すら正確に覚えられてないのだわ。(作者の独り言)
ちなみに、
掲示→本作品の√
飲食→ED2
演劇→ED3
と言った感じで想定しています。
(他のやつは転載時にかこうかな、なんて思ってたり)




