民泊、そして修学旅行の終わり
45話です。
※作者は正確な方言がわからない為、各種ツール(AIを含む)を用いて変換をしています。誤字脱字誤用等ございましたら指摘していただけるとありがたいです。(適宜修整します)
水族館に行った翌日の、修学旅行3日目。
ホテルを後にして、男女別に別れて、民家で1泊終えた後。民泊体験と言う名の通り、農業や漁などひと通りの流れを体験したあたし達4人は、民泊先の老夫婦に促され、海岸沿いへとやって来ていた。
「たんめー、ゆーばんぬしこーいしっちくぃらんが」
「はいわかたん。さちんかいけーとーんさぁ」
奥さんの言葉にそう返して、1人来た道へ戻る旦那さん。水面に反射する夕陽に照らされ、伸びゆくあたし達の影が、そんな背中を覆い隠す。
「さてぃ、くまからーみやらびぬだきぬ話とぅいちゃびらやー」
「「え?」」
ふと、振り返り言うお婆さんの言葉に、あたしと矢部さんの声が重なる。
沖縄の方言はわからない、けど。なんとなく、女同士で話をしよう、的なことを言っている気がする。…まぁ、そうでもなきゃ、わざわざお爺さんだけ帰す理由も無いし、あくまで昨日から見たメタ読みなんだけど。
2人して固まって、矢部さんとどちらともなく顔を見合わせる。
彼女の背後から、何やらテンションの高い未冬と西条さんの姿が見えるけど、これは無視だ。うん。…というか、あの2人もしかして翻訳できてたりするの?
「アハハ、うんぐとぅくふぁらんなてぃしむんどー。ただ、たいしかたくじらうむいるみやらびぬちらやたくとぅやー。初々しさんなーんでぃうむてぃやー。…あんやさ、あったにちちゅしんわっさい、まじぇーわんとぅうぅとぅぬ話やてぃんさなやー」
バシバシ、と。どこか勢いのまま、背中を叩いて話し出すお婆さん。視界の端で、未冬と西条さんが戯れる中、捕まったあたし達は、ぎこちない笑みを浮かべ合う。
──曰く、それはかなり前の話で。当時人気だった男を巡って、女同士の醜い恋争いが起こったらしい。彼女の言う話では、よくある陰湿な嫌がらせ以外にも、当時ですら色々とあったのだとか。そんな長い紆余曲折─前置きを置いて。結論として、一番最初に告白した女が彼を射止めたんだ、と。
一息に語り終え、満足気に微笑むお婆さん。
方言はよくわからないはずなんだけど、話の節々に何故か共感できるような気がして。あたしも矢部さんも聞き入ってしまったのは、思わぬ誤算だったのだけども。
ふと視界の端で、ウンウンと頷く矢部さんが映る。
あたしと同じように、わからないなりに、何か感じてるんだろうか。尤も、あたしの場合は言葉がわからなくても、お婆さんの話しからしてそう勝手な翻訳を付けただけなんだけど。もしかしたら、そう言っててほしいって独り善がりな願望かもしれない。
ぬーんでぃ、と。再びあたし達の肩を叩いて、笑みを浮かべるお婆さん。
あたし達の顔を交互に見た彼女は、不意に頭を撫でてくると、優しい声音で口を開ける。
「しちやれーまたんかーから、堂々とぅ「しち」ちてーれー。結果がちゃーでぃあり、ちてーらんだれー実たるはじぬくいん実れーさんさぁ」
なんて言ったかはわからない。でも、きっとあたしに必要な言葉な気がして。
月明かりを反射する水面が、彼女の顔をそっと照らし出した。
ーーー
「ユウヤ見て見てー!じゃん!シーサー!」
「プッ、アハハ!なにそれ無駄にクオリティ高ぇ」
「へへーん!宿泊先のお爺さんに教えて貰ったのだ!」
未冬がタオルで作った置物らしきモノを目に、お腹を抱えて笑い転げる優陽。
民泊体験を終え、那覇空港にて再集結した班一同。2日ぶりに再会した彼は、日焼け跡の残る自らの腕を抱き留めると、落ち着かせるように深呼吸をいれている。
思えば、あの水族館以降、特に接点らしい接点も無く修学旅行も終わりになってるし。いつもより少し黒くなった彼は、これはこれでかっこいいんだけど。
というか、未冬はいつの間にあんなの教えてもらってたのよ…
「真田さん。私も、負ける気はないから」
「え?」
あたしが思いふける最中。不意に耳打ちをして、通り過ぎていく矢部さん。
──負ける気はない。
この言葉が反芻して、動こうとした足が止まる。
いや、わかってはいるのよ。矢部さんも、優陽が好きなことは。…まぁ、西条さんに言われて以降、確かになって思う場面は多かったし、今回のでそれが核心に変わっただけのようなものだけど。
立ち止まるあたしと対照的に、未冬の逆─優陽の隣に陣取る彼女の姿。一瞬だけ目が合った彼女は、口角を釣り上げたような気がして。優陽と、そして猫のように威嚇する未冬との輪の中へ、当然のように溶け込んで見える。
「はいはい静かに!…お話していいですか?」
ガヤガヤとした音が、担任の声によってピタリと止まる。
見れば、集合予定時刻の少し過ぎ。これからの流れ、と称して、一度グループ内で並び直すよう指示されたのは不幸中の幸いか。あたしは優陽の隣に並び立って、一連の説明を聞く。
青春の代表格──修学旅行。無慈悲にも、その終わりを告げる帰りの挨拶が、あたし達の耳に届く。
まぁ、話してる内容としては、空港を出た後の今後の流れとか、提出しなきゃいけない宿題の話とかなんだけど。…それはそれで、現実に戻された気がして、落差で風邪を引きそう。
兎にも角にも、ゲートを潜り、進んでいく同級生達の列。それぞれのお土産を片手に、案内に従い飛行機に乗り込んでいく。
『しちやれーまたんかーから、堂々とぅ「しち」ちてーれー。結果がちゃーでぃあり、ちてーらんだれー実たるはじぬくいん実れーさんさぁ』
民泊先のお婆さんの、あの言葉。
ふと、彼女のあの顔が過って、優陽の表情を盗み見る。
焼けても尚カッコイ─じゃなくて!特に深く考えてなさそうな、純粋に終わってしまう修学旅行を惜しんでるようなそんな顔。気づいたように微笑む彼は、本当にいつも通り。
…だから、何処か感じる焦燥も、このままなら大丈夫、なんて。そんなことを思い込んで。ただ、そんな思考を振り払って、あたし達は飛行機の中へと乗り込んだ。
次回、文化祭編開始──
作者「√分岐(小声)」
美優「え?」




