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なんか、いい雰囲気…?

 44話、美優視点です。


《前回までのあらすじ》

 沖縄へ修学旅行に来た美優達。学校の決めたプログラム行動により、水族館へとやってきていた。…が、未冬の策略(?)により、美優と優陽が予期せず2人きりになってしまった!?

「どうしよ美優」

「さぁ…?どうって言われて困るんだけど…」


 本気で慌てる優陽に対し、困惑気味にそう答える。

 事の発端は未冬のアシスト(だと思いたい)によって、あたし達2人だけが、この広い館内にポツンと残されたということ。一応リーダーである優陽がそれに気付いて、こうして慌てふためいているだけ。

 …まぁ、未冬のジェスチャーからなんとなく察していた展開だし、我ながら白々しい返事だと思うけど。そうはならなくても、既に同じグループだったはずの男子はあたし達の集団から外れていたのだから、今更ではあるんだけどね。順路的にも、なんとなく場所は割り出せるし。


「と、とりあえず…あたし達だけでもまわればいいんじゃない?どのみちみんな同じ時間に集合場所にいないといけないし、まわってるうちになんとかなるって」

「それは…確かに」


 ふゆは矢部さん達と一緒だろうし、と。そう続けて、優陽は頷く。

 この朴念仁は朴念仁なりに考えているのはわかるし、そこも好きではあるんだけど…ふと、それは考えすぎじゃない?ってなることもあるのよね。特に、未冬に対してはだいぶ過保護にも感じるし。…人見知りとはいえ、なんだかんだこなせる親友(あの子)は、優陽が思ってるよりもずっと強い。


 閑話休題。

 自分の思考を振り払うように、勢いよく優陽の手を取る。

 未冬がせっかく整えてくれた舞台だし、ここで攻めなきゃ女が廃るわ。…尤も、未冬のことばっか考えるのは本末転倒なのだし。


「み、美優…?」


 俗に言う当ててんのよって状態。驚くような優陽の声。

 本当はあたしだって恥ずかしいけど、考えるだけ無駄なのは、きっとどっちも一緒だから。目一杯腕を引いて、笑みを浮かべて振り返る。


「さ、行こう優陽!あたしはまだまだ見たいところがいっぱいあるんだから!せっかくだし楽しまなきゃ、ね!」


 そう、こうしてグイグイ攻めるのは恋する乙女の特権なのだ。



ーーー



 優陽と2人、ゆっくりと館内を練り歩く。

 サメに関する部屋とか、アクアルーム的なのとかも地元に無かったもので、これが思いのほか面白い。未冬のことを抜きにして、2人してのめり込んだのはここだけの秘密。


 少し周りに視線を変えれば、数組のカップルが楽しそうにする姿が見えて。あたし達もそんなふうに見えるのかな、なんて。

 勢いで組んだ腕は意外にも振り払われなくて。さっきからうるさい鼓動は、そんなあたしの心を代弁する。これってなんか、いい雰囲気…?


「美優…?」


 ふと、あたしの顔を覗き込んで、爽やかな輪郭を描く優陽の顔が、視界いっぱいに映り込む。


 ──嗚呼、どうしょうもなく、好き。


 鼓動も、雑音も、何もかも消え去って。ただ漠然と、視線が彼に吸い込まれる。好き。

 水族館デート、なんて創作だけで、あり得ないと思っていたけれど。水槽の水面から差し込んだ光が、薄暗いあたし達をそっと包み隠している気がして。

 今なら、あたしだけの優陽。そう、このまま、ずっと。…好き。


 無意識に伸びた腕が、優陽の──



「おーい井口!何タラタラしてんだ、お前探し、て…」


 唐突に響いた声が、あたしの思考を現実へ引き戻す。


 ──あたしは今、何をしようとした…?

 雰囲気に当てられて?いや、でもこんな、だ、大胆にキ──


「あ、いや、これはだな!別にやましいことじゃなくて!…そう!ただこう、美優が急に黙り込んだからどうしたのかと思って──」


 ──カチン、と。全身の熱が冷めて、反射的に伸びた手。優陽が、言葉を言い終えるよりも先に、うめき声と共に蹲る。


 吊り橋効果とか、雰囲気にあてられてとか。本当は、あたしがさせるはずだったのに。


「策士策に溺れる、かぁ…」


 気付けば既に集合時刻。いつの間にか、ひと通り回り終えていたらしい。

 びっこを引きながら、未冬を含む他のメンバーの元へと駆け出す優陽。あたしのそんな呟きは、彼女等の雑音にかき消された。

優陽「違うんだふゆ!俺はその、美優とは幼馴染であってだな!」


未冬「…?何当たり前のこと言ってるの?(ミユちゃん、あれ絶対にキスしようとしてたよね…あとで話聞こーっと)」


↓この辺に今更羞恥心が来た美優


-----壁-----


田中「あの、俺ってやっぱお邪魔虫…」


作者「そうだよ(無慈悲)」

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