19話 やっと真面目に仕事する生徒会の面々+α
月の三回目の月曜日。この日は月一で行われる学級集会の開催日だ。体育館に一年A〜E組が集まり、先生の「静かに!」という言葉をかき消すぐらい大きな声でワイワイと盛り上がっている。でも、それも仕方が無いだろう。なぜなら今日は研修旅行の行先が発表される日だからだ。
一年生の生徒会役員が中心となって行き先を決める。毎年違う行き先で、生徒達は『新しい事、やった事無い事にチャレンジする』というスローガンの元に旅行を楽しむ。
因みに、去年は福井で化石発掘体験。一昨年は無人島でサバイバル生活。とんでもない事を毎年している。
「なあ、今年はどこだと思う?」
「そうだな…そろそろ海外とかも有り得るんじゃないか?」
「マジか?! いくらなんでもそれは前代未聞過ぎないか?」
「いや…考えてみろ? 『天才』の篠崎会長。『女王』の結城書記。『鬼』の勇村会計。『慈愛』の稲垣風紀。今年の一年生徒会は神メンツだから有り得る!」
「た、確かに! 有り得るな! 俺イタリア行ってみたいんだよな!」
などを言って盛り上がる生徒達。注意する先生達も「静かにしろ!」から「話してもいいから並べ!」に変更している。実は先生にも旅行の行き先は知らされていない。故に先生側もドキドキしているのだ。
そんな盛り上がる体育館。その舞台の裏で最終準備をしている拓斗と彩那は――
「ぷぷっ! アンタ『慈愛』なの?! アイツら慈愛の意味分かって言ってるのかな!」
「うるせぇ『女王』様?! いや〜俺は恥ずいと思うぜ? クイーンだクイーン。いいと思うぜ姫君〜」
「…よし。女王から命令だ。死ね拓斗」
「残念。俺は概念だから死ねねぇ〜」
「アンタそれでいいの?」
双方顔を真っ赤にしながらディスりあっていた。
生徒会の役員が変な二つ名を付けられることは別におかしくは無い。まあ本人達は死ぬほど嫌がっているが。
舞台裏にいるのは拓斗と彩那の二人だけ。楓と澪はある用事で場を外している。なので――
「…っし。時間だ」
「めんどくさいけど…やりますかぁ」
舞台に出て説明をするのは二人だけ。万能の澪が居ないのでどうなるか分からない。
だが、時間は待ってくれない。渋りながら拓斗と彩那が舞台裏から出て行く。壇上に現れた瞬間から拍手が鳴り、先程までのざわめきは完全に無くなる。まあ「キャー」という歓声は聞こえてくるが。
「(…なんか宗教みてぇ)」
「えっと、生徒会です。今日は会長と会計は別にやる事があるので欠席しています」
「「澪会長がいないだとぉぉ?!」」
「「楓くんもいないよぉぉ?!」」
「「(怖っ!)」」
「アイツら二人はアイドルなのか?」と、二人は苦笑いしながらそう思う。
「静粛に〜」と言うだけでワイワイしていた場は一瞬でシーンとする。魔法使い気分を堪能した拓斗は、プロジェクターに向けてリモコンを向ける。そして、ボタンを押しながら喋り出す。
「今回の行き先は……なんと五通りあります! 俺達生徒会…特に生徒会長が頑張ってくれました! もし廊下で見かけたら崇めといてください!」
プロジェクターの画面が切り替わり、生徒達と先生達から「うぉぉぉ!」と歓声が上がる。拓斗は「うんうん」と頷きながら説明を続ける。
「詳細は後で資料を配るのでそれを見てください。今は時間が無いので場所だけ説明しますね。一箇所目は京都。二箇所は沖縄。三箇所目は北海道です」
一箇所説明する度に「おぉ!」と歓声が上がる。だが、先生達は「待ってくれ…負担が大きくないか?」とちょっと困惑した顔をする。だが、それをガン無視して拓斗は話を続ける。
「えっと…四箇所目は富士登山です。んで、最後の五箇所目が――」
「「?!?!?! ちょっと待て!!!」」
「…え?」
拓斗の言った四箇所目に動揺が広まる。「いきなり何言ってんですか?!」「富士山?! 富士山?!」「おいおいマジか?! 海外より規格外だよ!」と、ワクワクの交じった動揺が広がっていく。
だが、マニュアル通りに進行を進める拓斗は「後日質問枠を設けまーす」とだけ言って進行を進める。拓斗が喋りだした瞬間に皆が黙るのは何度やっても慣れない。
「…えっと、最後の五個目は校舎を作ります」
「「「……は?」」」
唖然。口をポカンと開けて呆然とする生徒&先生達。拓斗は「まあだろうな」と目を瞑る。
「…まあ流石に皆色々思うことあるだろうけど、水曜日までに班のメンバーと、行く所決めてね。決められなかった奴は、強制的に『校長による、上手い株のやり方』を受講させるから」
「「(…逆に受けてみたい)」」
「んじゃ! 旅行の詳細説明に入りま〜す。彩那、頼んだ」
その後、生徒も先生もどこかフワフワした気持ちで彩那の説明を聞いた。だけど、あまりそれに集中出来なくて生徒会に大量の説明が殺到するのだが、それはもう少し後の話――。
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「っはぁ…予想出来た反応だったなぁ…」
集会が終わってから二時間後。生徒会室がある別棟の屋上で、拓斗はギター片手にベンチに座っていた。
学級集会は拓斗の予想通りの展開と反応になった。事前に澪から行き先を伝えられた拓斗は、生徒達と同じ反応をした。何せ都道府県ではなく山と建築が混じっているのだ。いくら新しい事と言ってもやり過ぎだ。
だが、終わった事なのでさっさと頭の中からそれを排除し、ギターを弾き始める。そしたら――
「…拓斗ォ!」
「…澪? どうした? そんな神みたいに崇められたみたいな顔して」
「確信犯だな。よし、現行犯」
「なんで?!」
めちゃくちゃ顔を真っ赤にした澪がやってきた。なんでもここに来るまでの間に「澪様!」と何回も崇められたらしい。その内の数人に聞いてみると、拓斗の名前が出てきた。「どこだアイツは!」と探し回っていると、彩那から「屋上に来て。拓斗もいるよ」とメッセージが来て、生徒会長として絶対NGの全力ダッシュでここまで来た。
「ったく……はい、抹茶オレ。アンタこれ好きだったよね」
「あ、サンキュー。俺これ好き…って、それ澪に言ったか?」
「ううん。萌葉から聞いた。家でやたら緑茶入れてるから、聞いてみたら知っちゃった」
「ははっ。緑茶と抹茶間違えてんのか……うまっ」
澪はそのまま拓斗の隣に座る。空は夕暮れ、いい感じに風が吹いていて、抹茶オレを飲みながら弾くギターの音色が雰囲気を醸し出す。今、二人の姿はまるで青春ラブコメのワンシーン。
澪がここに来た理由は拓斗を捕まえる為でも、抹茶オレを醸し出す為でも無い。「旅行の時一緒の班になりたい」と言う為。
だが――
「……」
その簡単な一言が言い出せない。
拓斗は一切表情を変えずにギターを弾く。音色が風で流れ、校庭で部活をしている生徒まで届く。野球部員とそのマネージャー達は音が流れてくる方向、屋上を見て二人の人影を捉える。「カップル?!」「身長差あるな?!」と興奮しているが、その熱は澪には届かない。
何千回でも説明するが、澪は拓斗が好きだ。普段から話す時は勿論、今こうして横に座っているだけで心臓がはち切れそうなぐらいドキドキしている。だから――
「あ、そうだ。澪、一緒の班にならない?」
「あ、いいよ」
「お、良かった」
大事な場面で集中していなかったりする。
「(……?!?!?!?! 今なんて?!)」
ボシュン! と頭から煙を出しながら「え?! え?! なんだって?!」と超困惑している。それに気が付いた拓斗は「そんな変なこと言ったか?」と、拓斗も逆に困惑している。
「まあ、実は彩那も誘ってあるんだよ」
「……え?」
「男子メンバーは俺と楓、あと莉音先輩の黒服役の霧浜黒江。知ってるだろ?」
「……知ってるけど…待って。恥ずい」
澪にとって楓や黒江、彩那が居るのはどうでもよかった。ただ澪は――
「(私、バリバリ拓斗と二人で旅行に行くと思ってたぁ?!)」
自分がそう思っていた事にめちゃくちゃ驚いた。全然自覚などしていなく、ごくごく普通に「いや〜二人かぁ〜」と思っていた。自分の思考のヤバさに気づき、二度目のボシュン! をする。
「…澪大丈夫? 顔赤いよ? 熱ある?」
「(…?!?!?!?!)」
顔を真っ赤にしてフラフラしている澪をイケメンな拓斗が放って置くわけなく、ごくごく自然に額と額をくっ付ける。
「…うん。熱は無いっぽいな。働きすぎだよ」
「(あ、頭に額が…違う! 額に頭が! あれ?! 違う! なんだっけ?!)」
ここぞとばかりにイケメンを、ここぞとばかりにドジっ子を披露する二人。そして、その二人を少し離れた場所で見つめる邪魔な三人が居た。
「拓斗も鈍感すぎるよな」
「だね。というか、澪さんも中々いい反応するね」
「そこまでにしてやって。私も親友があんなキョドってるの見たく無かった…」
「俺は二回目だぜ? まあ…さっさと合わさるか爆散するか決めればいいのにな。澪も」
「…澪も考えてるよ。多分拓斗も澪の思いに気がついてるんじゃないかな」
「(んじゃあ俺達の存在意義ないじゃんか。モブの役割与えやがって…)」
楓、黒江、彩那が二人を遠くから眺めていた。三人は澪が来る前からそこに居て、行き先とメンバーについて話していた。その中でこのメンバーに澪を加えた五人でいいだろうという結論に至った。
三人は澪と拓斗が謎にイチャついている光景を見ながらいちごオレを飲んでいる。凄くシュールだ。
「…あ、流れ星」
「マジ? どこどこ」
「そう言ってるの間に消えるもんでしょ…」
「そっかぁ…」
「「「……オチがねぇ」」」
だから無理やり終わらせます。ってこで! 次回から『研修旅行編』スタートします!
澪「んで、行き先どこにするの?」
拓斗「校舎作る方」
澪「は?」
『研修旅行編』では無く『校舎建築編』始まります!




