<47:恋愛熱血少女(6)>
戸川春菜・・・高校3年生。
柱谷秀彦・・・戸川春菜の担任教師。
能登奈緒美・・・戸川春菜の親友でクラスメイト。生徒会副会長。
春菜と奈緒美は、クレープを食べながら校庭を歩いていた。
奈緒美は人ごみの向こうに、柱谷先生が歩いているのを見つけた。
「あれって、メラ谷じゃない?」
「うん、そうだね」
春菜はチラッと一瞥しただけで、すぐにクレープへ視線を戻した。
「声、掛けなくていいの?」
「近くに来たら、掛けるわよ。でも、こっちに来ないんだったら、わざわざ行かなくてもいいでしょ」
「そのリアクション、やけにクールね」
奈緒美は、不思議そうに春菜を見る。
「そうかな」
「そうよ。前の春菜だったら、クレープなんかそっちのけで、メラ谷の所へ駆け寄っていたわよ」
「前の私ならね」
春菜は、すました顔で言う。
「相談室で、何かあったの?成功とは言えないけど、フラれたわけじゃないってアンタは説明したけど、詳しいことは全く教えてくれないし」
「まあ、色々とね」
そんなことを話していると、柱谷との距離が近くなった。
柱谷も二人に気付いたらしく、パッと視線を向けた。
「先生」
春菜は、涼やかな笑顔で声を掛けた。
「お、おう」
柱谷は、意図的に目を逸らしながら答えた。
相談室の出来事があって以来、柱谷の春菜に対する態度は、どこかギクシャクしたものになっている。
「どこへ行くんですか」
「え、いや、特に目的は。適当にブラブラしているだけだ」
「このクレープ、美味しいですよ。先生も食べてみたらどうですか」
「ああ、そうか、クレープな」
「3年3組で売ってますよ。かなり人気みたいですけどね。それじゃあ、私達は別の場所に行きますから」
そう告げると、春菜は柱谷と別れて歩き始めた。
「やっぱり変わったよね」
奈緒美はまじまじと春菜を見つめる。
「今のだって、私はてっきり、自分のクレープをメラ谷にあげるもんだとばかり思ったのに」
「へえ、そうなんだ」
「何があったの?オススメ本を紹介してもらうのも、やめたんでしょ」
「うん、もう終わりにした」
「相談室の一件以来、メラ谷へのアタックも、まるで無いし。もう作戦は終了ってわけ?」
「ううん、違うわよ、作戦を変更したの」
春菜は意味ありげに微笑した。
「作戦変更?」
「これまで熱烈に追い掛けていたのに、告白を境にピタッと止まったら、先生の方が私のことを気になるはず。そうやって、私に気持ちを向けさせようとしてるのよ」
そこで春菜はクレープを食べ終わり、さらに言葉を続けた。
「そして卒業してから、また積極的なアタックを再開するの。卒業したら、もう教師と生徒の関係じゃないから、堂々と付き合えるしね」
「アンタ、すごいね。執念さえ感じるわ」
奈緒美は、呆れた気持ちと感心が入り混じったコメントを発した。
「愛は女を強くするのよ」
春菜は、余裕の笑みを浮かべた。




