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青春詰め合わせパック(9個入り)  作者: 古川ムウ
[学園祭]
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44/52

<44:学園祭への道(5)>

大森昌彦・・・学園祭実行委員長。

斉藤俊也・・・学園祭実行副委員長。

西田・・・学園祭実行委員。

黒崎・・・学園祭実行委員。

加茂文治・・・生活指導教師。

野口優作・・・漫画研究部の部長。

上野正秀・・・陸上部のキャプテン。大森昌彦と斉藤俊也の親友。


 「あれっ、こっちだったかな?」

 掲示されているポスターを見て、野口優作が小さく驚いた。

 それは、女子高生がパンチラしているポスターだ。優作が描いて、加茂に却下されたはずの物だ。

 それがダメ出しを食らったことは、優作も学園祭実行委員会から聞かされている。



 「どうした、優作」

 そこへ、昌彦と俊也がやって来た。

 なぜか昌彦は、ニヤニヤと嬉しそうな表情をしている。

 その隣の俊也は、どこか疲れたような様子だ。


 「いや、ここのポスター、昨日までは確か、上半身だけのバージョンだったはずだと思って。それが、こっちのバージョンになってるからさ」

 「ああ、それなら、貼り替えたんだ。ここだけじゃなくて、お前のポスターは全て、こっちのバージョンに交換した」

 昌彦が得意げに言う。

 「へえ、そうなのか。でも、いつの間に替えたんだ?っていうか、これって大丈夫だったんだな。加茂の奴、考え方を変えて許可してくれのか」

 「いや、許可は出ていない」

 「えっ、でも、こうやって貼ってあるのに」

 首をかしげる優作に、昌彦は胸を張る。

 「それは、この俺が学園祭実行委員長だからこそ許されたことだ」


 「何だか、良く分からないな。どうなってるんだ?」

 「まあ、ちょっとな」

 優作に尋ねられた俊也は、言葉を濁す。

 「そう言えば、パンフの最初に、校長の挨拶文が無かったよな。あれも許可されたんだな。確か、そっちもダメ出しを食らったって聞いてたけど」

 「ああ、パンフにも気付いてくれたのか。あれもやはり、この大森昌彦様の手腕によるものだ」

 「へえ、そんなの加茂が許すはずが無いと思ってたけど」

 「ああ、許すはずが無い」

 「んっ?」

 「いいじゃないか、細かいことは」

 「まあ、俺は最初のポスターを使ってもらって、嬉しいけどな」

 「そうだろう。喜んでもらえて光栄だ」

 「それじゃあ、またな」

 優作は立ち去った。


 昌彦は、改めてポスターを凝視する。

 「これが一番だよな。パンチラしているからって、何だと言うんだ」

 「だけど、やっぱり無茶が過ぎるぜ」

 俊也は不安そうに漏らす。

 「こんなやり方、マズいって。このパンフもそうだし」

 俊也は丸めて持っていたパンフを広げ、最初のページを見せる。

 例年は校長の挨拶文があったページに、昌彦の挨拶文が記されている。

 「何をビクビクしてるんだ。言っただろ、責任は全て俺が取るって」

 「それはそうだけど。だからって、パンフレットやポスターを古いバージョンにするのは、やりすぎだろ」


 学園祭の3日前、昌彦は俊也に協力してもらい、校長の挨拶文を削ったパンフレットを印刷して製本した。

 既に挨拶文の入ったパンフを作成して許可を得ていたが、全て交換した。

 さらに学園祭の前夜になって、漫研のポスターを、許可された物からパンチラ版に全て貼り替えた。


 「アーチのことも、忘れるなよ」

 昌彦は悪びれず、堂々たる態度で言う。

 正門前のアーチには、大きな文字で「くそったれの世界をぶち壊せ!」と書かれていた。

 それも、前夜の内に昌彦がやったことだ。

 全ての作業は、実行委員には知らされておらず、昌彦が独断でやったことだった。


 「あのアーチが立ったのを見た時は、痛快な気分だったぜ。加茂の奴、きっと慌てただろうな。ざまあみろだ」

 「だけど、これだけやったら、ただじゃ済まないぞ」

 「そんなのは分かってる。だけど俺は気付いたんだ。別に怒られたって構わないんだって。これで俺の存在をアピールできれば、それでいい」

 「あのさ、ちょっと思ったんだけど」

 「何だ?」

 「いや、何でもない」

 俊也は喉まで出ていた言葉を引っ込めた。


 そこへ、2人の友人である上野正秀がやって来た。

 「おお、昌彦、こんな所にいたのか。加茂先生がお前のこと、捜してたぞ」

 「ほら来た」

 俊也が顔をしかめるが、昌彦は平然としている。

 「加茂の奴、どこにいる?」

 「たぶん職員室にいると思うけど」

 「そうか。じゃあ、行って来るとするか」

 勇ましい態度で、昌彦は去って行った。


 「あいつ、何かやらかしたのか」

 上野が、いぶかしげな顔をする。

 「加茂に逆らって、却下されたものを無許可で表に出したんだよ」

 「何だ、そりゃ」

 「例えば、ほら、そこのポスター。パンチラを理由に加茂は却下したんだけど、あいつが勝手に貼ったんだ」

 「そんなことがあったのか。たかがパンチラで許可しないなんて、加茂先生も心が狭いな」


 「ほら、やっぱりな」

 上野の言葉を聞いて、俊也は納得する。

 「何が、やっぱりなんだ?」

 「お前、そのポスターが無許可だってこと、知らなかっただろ。じゃあ、パンフの冒頭に校長の挨拶が無いのも、アーチの標語も、本当は無許可なのを昌彦が勝手に入れ換えたって知ってたか?」

 「いや、全然。最初から、そういうものだと思ってた」

 「そうなんだよ。大半の生徒は、そんなこと知らないんだよ。なのに昌彦は、加茂に逆らって無許可の掲示物を押し通したことで、みんなの注目を浴びると思い込んでるんだ」

 俊也は呆れた様子で語る。


 「良く分からないけど、あいつが変な思い込みをしてるってことなのか」

 「その通り。前からバカだったけど、学園祭のトラブル続きで、さらにおかしくなったみたいだ」

 「あいつ、かなり浮かれてたぞ」

 「今は満足してるから、いいんだけどな。自分の間違いに、いつ気付くか」

 「気付いたら、ショックだろうな。お前、その時はフォローしてやれよ」

 「まだ呪いが解けてなかったみたいだから、お祓いに行けとでも言ってみるか」

 二人は哀れむように、昌彦が去った方向を見やった。


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