<43:悩んで悩んで悩むのだ(6)>
角田雄一・・・3年3組の生徒。
星慎吾・・・角田雄一の親友でクラスメイト。
三上茂輝・・・角田雄一の親友。3年2組の生徒。
柳沢知良・・・角田雄一のクラスメイトで生徒会長。
美濃部昭宏・・・角田雄一の担任教師。
和田律子・・・パン屋のおばさん。
「まだ進路は決まっていないのか」
しかめ面で、担任教師の美濃部が訊く。
「すみません」
雄一は体を小さくする。
「一瞬だけ、耳の後ろの匂いを嗅ぐ占い師になろうかと思ったんですけど」
「何だ、それは」
「いえ、何でもありません。あの時は、どうかしてたんです」
「ふざけたことを言ってる場合じゃないだろ。真剣に考えているのか」
「ええ、だから他のみんなに相談したんです。そしたら、特にやりたいことが見つからないのなら、大学へ行くべきだ、その後で将来のことは考えればいいとアドバイスされたんですけど、先生はどう思いますか」
「ひょっとして、何の目的も持たずに大学へ行くことに、お前は否定的な意見を持っているのか?」
「いえ、否定的というか、何というか」
雄一は言葉を濁す。
「だったら、俺も否定される人間ということになるな」
「先生が?」
「俺は大学に入った時点では、教師になりたいとは思っていなかった。教育実習に行って、そこで初めて、教えることの喜びを知ったんだ。やりがいを探すために大学へ行くのは、そう悪いことじゃないと、俺は思う」
「なるほど……」
雄一は腕を組み、じっと考え込む。
「先生もそう言うのなら、とりあえず、大学へ行ってみるのもいいのかなあ」
「何を言ってるんだ?」
美濃部が眉をひそめる。
「今のは、何の目的も持たずに大学へ行くことに関して、私見を述べたまでだ。お前に対するアドバイスじゃないぞ」
「そうなんですか?でも、結果的に、僕への助言になっていたので」
「いや、助言には、ならないだろう。お前、根本的なことを忘れてないか」
「根本的なことですか」
雄一は考えてみるが、答えは分からない。
すると美濃部が、突き放すように告げた。
「今の成績だと、お前が入れるマトモな大学なんて無いぞ」
「へっ……?」
雄一は呆けた顔になった。




