<27:悩んで悩んで悩むのだ(4)>
角田雄一・・・3年3組の生徒。
星慎吾・・・角田雄一の親友でクラスメイト。
三上茂輝・・・角田雄一の親友。3年2組の生徒。
柳沢知良・・・角田雄一のクラスメイトで生徒会長。
美濃部昭宏・・・角田雄一の担任教師。
和田律子・・・パン屋のおばさん。
「まだ悩んでるみたいだな」
慎吾が軽い調子で言う。
「まあな」
対照的に、雄一の口調は重い。
「お前、色んな奴から話を聞いて解決に向かうどころか、むしろ悩みが深くなってるんじゃないのか」
「分かるか」
「おいおい、マジかよ」
慎吾が額に手を当てる。
「もっと簡単に考えろって。本格的な進路なんて、もっと先になってから考えてもいいじゃねえか。俺なんか、辰見麻美が目当てで京極大学を狙ってるんだぞ」
「誰だよ、それ。お前の好きな女か」
雄一は気の無い言葉を返す。
「好きな女に間違いは無いけど、素人じゃなくてグラビアアイドルだよ。知らないのか」
「ああ、全く」
「それなりに人気があるアイドルだぞ。その麻美ちゃんが、現役の京極大生なんだよ。だから、あの大学に入ったら、彼女に会えるチャンスも増える。上手くいけば、合コンも出来るかもしれない」
「まだ入ったわけでもないのに、浮かれるなよ。しかし、大学選びが、そんな理由だとはなあ」
「不純な動機だとでも思っているのなら、その通りだぞ」
慎吾は堂々と言い切った。
「何だよ、その妙な開き直りは」
「開き直ってるわけじゃないぜ。どうせ大学へ行く理由なんて、特にこれといったものは無いんだ。だったら、そういう理由で進学先を選んでも、別にいいだろうと思ってな」
「確かに不純な動機だけど、それも一つの考え方ではあるな」
少なくとも、何の目的も見つけられない自分よりはマシだと、雄一は思った。
「他人事みたいに言ってるけど、お前だって、そんな形で大学へ行くことを考えてもいいんじゃないのか。雄一は、好きな女性タレントとかアイドルとか、いないのか。その人が大学に通っていたら、そこを目指せばいいじゃないか」
「好きな女性タレントか。いないなあ。男の俳優なら、好きな人がいるけど」
「男かよ。まあいい、それで、その人は大学に行っているのか」
「いや、かなりのオッサンだ」
「それでも、過去に大学へ通っていたかもしれないだろ。その人の出身大学を目指すってのはどうだ?」
「いや、それは無理だよ」
雄一は淡々と告げる。
「どうしてだよ、その人、高卒なのか」
「良く知らないけど、とにかく無理だな」
「何だよ、進路でやたら悩んでいるくせに、俺がせっかく親切心でアドバイスしてやったら、すぐに拒絶かよ」
「そういうつもりじゃないけど。好きな俳優が俳優だけに、無理ってことだよ」
「誰なんだよ、その俳優って」
「サミュエル・L・ジャクソン」
「なるほど、そりゃ無理だわ」
苛立っていた慎吾は、あっさりと納得した。




