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男だった俺の、しっぽのある暮らし  作者: あわいしゅん
第2章「いつもの場所に、今の俺で」

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第19話 質問、俺が答えてもいい?

 講義が始まる前の教室で、俺は原稿の同じ行を三度読んでいる。

 文字は頭に入っている。何なら昨日、家でも読んだ。けれど、人が一人入ってくるたびに顔を上げてしまい、次に目を戻すと、どこまで読んだか分からなくなった。

 椅子の横には、タオルを敷いたもう一脚の椅子がある。そこへしっぽを載せ、机の下では足を揃えている。


「それ、今から覚え直すやつじゃないだろ」


 隣の黒田が小声で言う。


「分かってる。見てると落ち着く」

「落ち着いてる人の読み方じゃないけど」


 言い返そうとしたところで、また教室の扉が開く。俺はそちらを見てしまい、黒田も同じ方向へ顔を向ける。

 入ってきた二人は、俺を見て歩く速さを少し落とす。そのまま後ろの席へ向かうが、座ってからも一度振り返る。


 これを、今日は何度か繰り返している。

 前回、空いた教室で声を出したときとは違う。今は同じ講義を履修している学生が、次々に席へ着いている。


 大学で練習したあと、四人でオンラインでも一度、最初から通した。

 俺が交代したくなったら、大槻へ原稿を寄せる。水を飲みたいだけなら、机の上に置いたボトルを取る。曖昧な合図を増やすと、こちらも向こうも分からなくなるので、動作で区別することにした。

 講義の担当の先生には、今の姿になった原因は調べている途中で、今日は発表するために来ることを伝えた。説明するなら、身体の事情で席を調整しているという範囲にしてほしいとも頼んだ。


 準備したことは、ちゃんとある。

 俺は原稿の端を揃え、机へ置く。


 教室へ入ってきた佐伯が、こちらを見つける。黒田へ手を上げ、それから俺にも同じように手を上げる。


「来れたんだ」

「うん。今日は発表」

「俺ら、そっちの次。先に終わるの、いいな」


 佐伯はそう言って、少し離れた席へ座る。

 先日は俺の名前を聞いて固まっていた人が、今日は発表の順番の話をした。その違いに気づき、俺は初めて、原稿から手を離して座れた。


     *


 講義は、社会調査の読み方も扱う情報系の科目だった。

 今回の課題では、同じ社会的なテーマを扱う複数の調査を選び、調査方法を検討したうえで、記事の結論がデータからどこまで言えるかを論じる。グラフの見た目を比べるだけではなく、調査対象の選び方、質問項目、結果を一般化できる範囲まで説明する必要があった。

 俺たちが選んだテーマは、SNSで接するニュースへの信頼だった。住民を抽出して回答を集めた調査と、ニュースサイトの読者が任意に参加したアンケートを取り上げている。記事の見出しでは、二つが社会全体の意識の変化を示すように並べられている。

 俺の担当は、その比較が成立する条件と、公開された資料では確かめられない部分を整理することだった。


 先生が出席と今日の進め方を確認する間、教室のざわつきは少しずつ静かになった。

 俺の席についても、身体の事情で調整していると短く説明があった。それ以上、耳やしっぽの話には踏み込まず、発表の持ち時間と質問の時間へ移る。

 俺は先生の言葉を聞きながら、顔が熱くなるのを待っている。

 視線が集まったのは分かる。でも、そのあと学生たちがパソコンや配布された資料へ目を戻すところまで、今日は見ていられた。


 俺たちの前のグループが発表した。

 資料のページをめくりながら聞いていると、説明が途中で速くなった。自分もそうなるだろうと思って、原稿へ息を継ぐ印を足しかける。

 黒田が、もう印ある、と指で示す。俺は鉛筆を置く。


 前の発表が終わり、先生に呼ばれた。

 三浦が教卓のパソコンでスライドを開く。黒田と大槻は前へ出て、俺は試した端の席に座ったまま話す。三浦がこちらを見て、画面が切り替わったことを確かめる。


 最初に黒田がテーマを説明した。

 家では語尾の一つで揉めていた男が、教室ではすらすらと話している。少しだけ羨ましくなったが、持っている紙の端が曲がっていたので、向こうも平気ではないらしい。

 三浦が資料の選び方を説明し、画面が次へ切り替わる。

 俺のページだった。


「ここからは、二つの調査の違いについて説明します」


 声は出た。

 後ろの席に届いたかは、まだ分からない。俺は一度顔を上げてから、紙を見る。


 最初に、二つの調査の対象、回答を集めた方法、質問文を一覧にした表を示す。同じ「信頼」という言葉でも、一方は普段読むニュース全体について、もう一方はSNSで見かけるニュースについて尋ねている。割合だけを同じ軸へ置けば、この違いは見えなくなる。

 次に、回答者の年齢構成を出す。読者アンケートには、そもそもそのサイトへ来て、さらに回答することを選んだ人が集まっている。人数が多くても、その偏りが消えるわけではなかった。

 俺たちは公開された年齢別の集計を使い、重なる年代の結果も確かめた。ただし、それでも回答者の選ばれ方や質問文の違いは残る。そのため、信頼が高まったかどうかの判断には使わず、記事の結論に必要な情報が何かを整理した。

 原稿の一文を読み終える前に、教室の後ろで椅子が動く。

 耳がそちらへ向き、フードのない頭の上で動いたのが自分でも分かる。


 誰かが、小さく息を漏らした。

 俺は次の行を見失った。


 紙の上に指を置く。さっき話していたのは、回答者の年齢構成だ。その次は、同じ年代の結果を並べても、回答する人の選ばれ方までは揃わないという話だった。

 大槻がこちらを向いた。原稿を寄せれば、代わってくれる。


 俺は紙を動かさず、顔を上げる。


「すみません。今、音のほうに気を取られました。続けます」


 言ったら、止まっていた場所がはっきりした。

 俺は年代を絞って確かめた部分から続ける。後ろの席の学生が、資料へ目を落とす。今度はその動きを見ても、続きを忘れなかった。


 最後の一文を読み、大槻へ話を渡す。

 彼女は小さく頷いてから、比較するなら必要になる調査設計と、記事の見出しをどう直せば言いすぎにならないかを説明した。

 俺はボトルを取り、水を一口飲む。

 しっぽの先が、横の椅子の上で少し動いている。


     *


 発表が終わったときには、肩から力が抜けた。

 拍手がして、俺も頭を下げる。座って話したことが、変に目立たず終わったように感じる。

 だが、先生はまだ次のグループを呼ばなかった。


「質問や意見はありますか」


 俺は原稿を見る。

 質問の時間があることは知っている。けれど、自分のところを読み終えた時点で、心の中では帰りの準備を始めていたらしい。

 少し後ろに座っていた女子学生が手を上げる。


「年齢構成の違いが問題なら、同じ構成になるように集計し直せば、比較できるんじゃないですか。年代ごとの結果は公開されているんですよね」


 俺は年齢別の表を見る。

 同じ年代を並べて確かめることと、全体を同じ年齢構成になるよう集計し直すことは、同じではない。準備中に俺たちも考え、公開された項目でどこまでできるか調べた部分だった。

 原稿では、年代を絞っても違いが残ると説明している。ただ、それだけでは、相手が提案した方法への答えになっていなかった。


 黒田がマイクのない教卓の横から俺を見る。答えようとしているのは分かったが、ここは俺がまとめたところだった。

 先生に指摘されて、何度も元の文章へ戻ったところでもある。


「質問、俺が答えてもいい?」


 三浦と大槻が頷き、黒田が少し横へ下がった。

 俺は質問した人へ顔を向ける。


「年齢構成による違いだけなら、その方法で確かめられると思います。ただ、同じ年齢でも、そのサイトのニュースを読む人と、読まない人がいます。読者アンケートでは、そのうち回答した人しか入っていないので、年齢を揃えても、ニュースへの関心や使い方の違いは残ります」


 話し始めてから、言いたいことが少しまとまった。

 年齢を合わせる方法が無意味なのではない。確かめられる違いを一つ減らすことはできる。ただ、俺たちが読んだ記事のように、社会全体の信頼が変化したとまで言うには、まだ足りない。

 俺は公開資料に載っていない項目をまとめたページへ、三浦に切り替えてもらった。


「今回の資料では、両方に共通する利用頻度などの集計がなくて、個別の回答データも手に入りませんでした。なので、年齢を調整すれば結論が変わるか、という検証は追加でやる価値があります。でも、それで偏りを全部取り除けたとは言えないです。質問文の違いも残るので」


 質問した女子学生は、資料へ何か書き、頷く。


「分かりました。年齢を調整した比較そのものはできても、全体の変化と解釈するには別の問題が残るんですね」

「はい。単に比較できないとまとめるより、どこまで調整できるか分けて書いたほうがよかったです」


 俺は少し笑う。先生も頷き、補足するとより伝わると話す。

 耳のことは、聞かれなかった。

 女の身体になった理由も、しっぽの仕組みも、答える必要はなかった。

 俺が調べた資料の使い方について聞かれ、俺の言葉で答えられる。


 次の質問は大槻の担当に関するものだった。彼女が答えている間、俺は手元の紙へ、年齢構成の調整で確かめられることと残る限界を分ける、と書く。

 提出する資料に加える修正だった。


 発表を終えて席へ戻ってきた黒田が、俺の机へ指先を置く。


「原稿より、さっきの説明のほうが分かりやすかった」

「それ、褒めてる?」

「褒めてる。原稿は散々直したのにな」


 俺は小さく笑う。しっぽがまた動き、横の椅子へ載せたタオルの端を押す。


「そっちも、終わって安心したらしいな」


 黒田に言われ、俺はしっぽへ目を落とす。止めようと意識すると、今度は教室の前を見る余裕がなくなる。

 俺は手で軽く押さえ、次の発表を聞くことにした。


     *


 最後の発表が終わり、先生が提出方法を画面に出す。俺たちは修正した資料と、質疑で指摘された点をまとめて送ることになっている。締切をスマホへ入れる間にも、近くで小声がした。


「あの子、瀬川って呼ばれてたよね」

「黒田たちと一緒にいた人?」


 全部の会話が聞こえるわけではない。机を畳む音や、鞄のファスナーの音に混じって、言葉の端が届く。そのたび、俺の耳が動く。

 先生が講義を終えると、声は一度に大きくなった。次の教室の話、発表の出来の話、その中に、耳が本当に動いていたという声もある。

 俺は原稿を鞄へ入れたが、すぐには立たなかった。横の椅子に載せたしっぽを抱え直すところまで、何人かが見ている。普段なら何も考えず立つ場所で、どちらを向いて動けばいいか考えていた。


「一緒に出るから。急がなくていい」


 三浦が言い、教卓のパソコンから俺たちの資料を閉じる。黒田は自分の鞄を持って俺の横へ戻り、大槻はタオルをしまう袋を出す。

 机の間が少し空くまで待っていると、佐伯が近づいてきた。


「さっきの質問、聞いてて俺も気になった。答え、助かった」

「そっちの発表、最後のところ速かったな」

「時間、足りなくなったんだよ。瀬川たちは収まっててよかったな」


 佐伯は笑い、黒田と提出の期限を確かめ始める。彼らの少し後ろにいた男子学生が、こちらを見て口を開く。


「瀬川って、先月もこの講義いたよな?」

「いた。同じ瀬川」


 俺が答えると、彼はもう一度顔を見る。説明を続けるか迷ったが、まだ聞かれたこと以上は話せなかった。


「今、身体のことで病院と大学に相談してる。今日は発表だけ出てみた」

「そっか。いや、声も違ったから。……お疲れ」


 彼は少し戸惑ったまま鞄を掛け、佐伯へ先に行くと声をかける。信じてもらえたのかまでは分からないが、俺がどう説明するかを、その場で決められた。

 そのあと、先ほど質問した女子学生が来た。俺たちの周りではまだ何人かが資料をしまいながら、会話の合間に目を向けている。


「さっき、ありがとうございました」

「こちらこそ。直すところ、分かったので」


 彼女は少し迷ってから、俺の頭のほうを見る。


「あと、その……耳、さっき動いてて。ちょっと見ちゃいました。すみません」

「気づいてた。動くんです、音すると」


 自分で答えてから、必要以上に丁寧な声になったと気づく。彼女は、そうなんですね、と頷く。


「かわいかったです。発表中に言うことじゃないですけど」


 俺は返事を失敗した。

 ありがとうございますと言えばいいのか、これは俺の身体なんですと説明したほうがいいのか。迷っている間に、大槻が隣で笑う。


「今、ちゃんと喜んでるよ」

「勝手に決めるな」


 言い返した声が少し高くなった。質問した学生も笑い、ではまた、と教室を出ていった。

 俺は大槻へ顔を向ける。


「喜んでないとは言ってないけど」

「うん。否定しなかったね」


 三浦まで笑っている。俺は鞄を閉め、しっぽを腕へ収めた。大槻が横の椅子からタオルを取り、黒田は椅子を元の場所へ戻す。

 かわいいと言われるつもりで来たわけではない。男だった頃の俺なら、説明が分かりやすかったと言われたところで喜んで、その先の感想までは待たなかっただろう。

 今は、発表の中身を聞いてもらえたことも、女の子として見られて褒められたことも、別々に嬉しかった。耳を見られて行を見失ったところは恥ずかしいのに、最後の言葉まで聞き直したくなっている。そのことは、黒田たちには言わなかった。


 先生に椅子の位置を戻したことと、提出前に資料を直すことを伝える。教室にはまだ学生が残っていて、俺が立ったところで、入口の近くの二人がまたこちらを見る。

 机の間を通ると、一人が鞄を足元へ寄せてくれた。ありがとうと言い、しっぽの先が椅子の背へ擦らないよう、身体へ寄せる。入口では入ってくる人を待ってから外へ出た。


 廊下には次の講義を待つ学生がいた。

 教室の中とは違って、俺の発表を聞いていない人もいる。すれ違った女子学生が、しっぽへ目を向けて友人の袖を引く。二人の視線が追ってくるのを感じたが、俺は黒田の横を歩き続ける。

 曲がり角で人の流れから外れたところで、黒田のスマホが鳴った。

 彼は画面を見てから、俺へ目を向ける。


「別の講義で一緒のやつから。今日の発表、耳ある子がいたって聞いたけどって」


 俺は足を止める。

 自分がいた教室の外へ、もう話が出ている。

 黒田は画面を閉じず、そのまま持っている。


「俺からお前のこと、説明してない。返事、どうする?」


 俺は廊下を歩く人を見る。

 いつまでも誰も気づかず、見た人も何も話さないでいてくれるとは思っていなかった。それでも、実際に言葉になって届くと、少し腹のあたりが落ち着かなくなる。


「今日、一緒に発表したって、それだけでいい。病院とか身体の話は、俺が話す」


 黒田は分かったと答える。返信を打つ前に、向こうからもう一通届く。


「説明、分かりやすかったらしいって」


 俺は画面を見る。

 耳のある子という言葉の下に、発表への感想が続いている。どこで誰が話したのかは分からないが、見た目のことだけが広まったわけではなかった。


「……そっちは、嬉しいな」


 声に出すと、黒田も頷く。


     *


 階段の手前で、俺はしっぽの持ち方を変える。鞄は三浦が持ってくれている。人が途切れたところで下り始め、入口の扉を出ると、ようやく教室の声が遠くなった。

 建物の脇で一度止まり、水を飲む。大槻が次の講義の教室を確かめ、黒田は図書館へ寄ってから昼飯にするという。

 三浦の午後の講義までは時間があった。俺は今日はもう帰ると話し、駅の近くで何か買って、部屋で食べることにした。大槻は俺たちと反対側の講義棟へ行くので、四人で話せるのはここまでだった。


 別れる前に、黒田がまた配信を見てもいいかと聞く。

 俺はその顔を見て、今度はすぐに嫌だとは思わなかった。


「明日の夜、やろうと思ってる。アカウント、あとで送る」

「ほんとに?」

「ただ、本名とか大学の話は書かないで。今日の発表、お疲れとかも、そこで言わないでな」

「分かった。手元の工作を見に行く人として行く」


 工作だけしているわけではないが、その説明で通じるならよかった。

 大槻も見たいと言ったので、二人に送ることにした。俺は今日、他人の前で話すのを終えたばかりなのに、次に話す予定を自分から増やしている。


 大槻と黒田に手を振り、三浦と門へ向かった。学生が通る道を歩いていても、朝ほど視線を避けようとはしなかった。肩は疲れていたが、今日は聞かれたことに答えて帰るところだった。

 駅の近くで弁当を買い、電車を待つ間に、母さんへ発表が終わったと送る。座れたことや質問のことまで書こうとして、帰ってから話すと一行足す。

 電車では三浦に弁当と鞄を預けた。向かいの人がしっぽを見る。俺は膝へ収め直してから、三浦と提出する資料の修正点を確かめる。


 部屋の鍵を開けたのは、それからしばらくしてだった。

 机へ弁当を置き、手を洗い、巻くスカートから部屋着へ着替える。クッションにしっぽを載せて座ると、思っていたより大きな息が出た。

 三浦と昼飯を食べ、彼が午後の講義へ戻るのを見送ったあと、俺は提出用の資料を開く。回答した内容を文章へ直し、年齢構成を調整して確かめられる点と、それでも残る限界を分けて書き足す。

 四人のグループチャットへ修正を送り、確認を頼んだ。


 それから、配信用のSNSを開く。

 明日の夜に、パン屋での買い物と、外でも座れる場所があったことを話すと告知する。長く話すより、まず前の相談の続きを届けたかった。

 黒田と大槻には、配信チャンネルへのリンクを個別に送る。


 すぐに黒田から返事が来る。


『しっぽがある場合、椅子にはどう座ればいいですか、って。初回から切実すぎるだろ』


 非公開にした映像は見られないが、ページに残った配信タイトルは見えるらしい。

 俺は画面を見て笑う。


『笑い事じゃなかったんだよ。本当に座れなかった』


 そう返すと、『今は教室にまで座ったな』と来る。

 俺は椅子の横を見る。しっぽはいつものクッションに収まり、机には今日使った原稿がある。

 最初に相談したときには、自分の部屋で飯を食うだけでも困っていた。


 配信メモへ、今日の質問に答えられたことも書きかけた。

 大学の話を詳しくするつもりはなかったので、人の前で説明できた、とだけ残す。その下へ、褒めてもらえた、と一行足した。

 何を褒められたのかは、今書くと、明日の配信で口が滑りそうだった。


 俺はメモを閉じ、明日使うカメラを机の手前へ置いた。

 告知した時刻を見てから、映る範囲の散らかった紙を片づける。どうせ顔を出さないのに、Tシャツの裾まで直していた。

 気づいて手を止めたが、元には戻さなかった。

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