漫才:春の訪れと融通の利かない男
A: はい、どうもー!よろしくお願いします。
B: お願いします。……あの、最近ようやく暖かくなってきて、「春が顔を出しました」なんて言いますけど。
A: おお、ええな。春の訪れを感じるわ。
B: 怖いですよ。地面のどこから顔を出してるんですか?
A: ……いや、比喩やん。植物が芽吹いたりして、春っぽくなったってことや。
B: 「春っぽくなった」? 曖昧ですね。省略せずに、可視化できるレベルで分かりやすく教えてくれませんか?
A: 固いなぁ!……ええか、冬の厳しい寒さが去って、桜も「今か今かと待ちわびてる」状態なわけよ。
B: 桜に「時間」という概念があるんですか? あと「待ちわびる」には意識が必要ですが、植物の脳機能について詳しく説明してもらえます?
A: 脳の話なんかしてへんねん! 感情のたとえや。……もうええわ、今度みんなで「お花見」行くやろ? あれは「桜を愛でる」っていう風流な行事なわけ。
B: 「愛でる」……。具体的に、一分間に何回瞬きをして、どの角度から視線を送れば「愛でた」と定義されますか?
A: 角度なんかどうでもええわ! 綺麗やなーって言いながら、酒飲んだり団子食べたりするんや。
B: 意味がわからない。花を見るなら視覚に集中すべきです。なぜ消化器官を動かす必要があるんですか?
A: それが「花より団子」ってやつや。
B: (激怒)それは花に対する侮辱ですよ! 比較対象として団子を持ち出す根拠を、一から十まで論理的に説明してください!
A: 落ち着けよ! 「花より団子」っていうのはな、風流よりも実利を取るっていう人間の心理をたとえた言葉なの!
B: では、その団子が「桜の木」でできていた場合はどうなりますか?
A: 食べられるか! 桜の木は「同じ釜の飯を食う」仲間みたいなもんやろ、お花見のメンバーは!
B: ……えっ、炊飯器の中に一緒に入ったんですか? 火傷しませんでした?
A: 入るわけないやろ! 生活を共にして絆が深いって意味や!
B: 絆……。その絆の強度は何ニュートンですか? 物理的に数値化してくれないと、僕、一歩も動けません。
A: 融通利かなすぎやろ! 数値なんか出せるか! 春やぞ! 桜が散って「ピンクの絨毯」になるのを楽しみに待てばええやんか!
B: 絨毯? 誰が敷いたんですか。土足で歩いていいんですか。メンテナンスの業者は?
A: 自然現象や言うてるやろ! もうええわ! お前とは二度とお花見行かん! 桜と一緒に散ってしまえ!
B: ……(不敵な笑みを浮かべて)
A: ……なんやその顔。
B: ……あぁ、ごめんごめん。今の全部、反応を楽しんでただけや。
A: ……はぁ?
B: 「春の浮かれた気分」を、僕なりのジョークで表現してみただけですよ。いやぁ、必死でしたね、「ニュートン」のあたりとか。
A: ……お前、俺が必死に説明してる横で「こいつバカだな」って思ってたんか?
B: 「絨毯の業者探してるわ、この人」って思ってました。
A: ……やってられんわ!




