彼の詩(うた)3
思い出してしまった。
彼女への想い。
記憶もすべて。
今すぐ彼女の元へ行きたい思いを必死に止める。
俺は、彼女にとっては必要のない存在だ。
彼女を見れば、きっと俺は自分を止められない。
だから、家から出るのをやめてしまった。
病気だと思われた。
病気かもしれない。
あいつ、兄を庇った時、俺は死んだつもりだった。
俺が消えれば、婚約はなくなり、あいつと幸せになれると思った。
まさか、あいつが兄だなんて思うわけがない。
あいつだって、抱えている想いは俺と一緒だったから。
あいつが訪ねてきた。
俺は断ったのに、部屋に入ってきた。
「記憶が戻った?」
あいつはそんなことを聞いてくる。
「彼女は修道院に行くつもりだ。私では止めれない。君が止めてくれないか」
「修道院?なぜだ?そんな必要ないだろう?俺のせいか?俺が長く彼女と婚約を結んでいたせいで?俺が止められるわけがない。彼女は俺が嫌いだ」
「やっぱり記憶が戻っていたんだね。それなら、彼女を止めてくれ。頼む」
「俺にはできない。なぜお前ができないんだ?」
「私は、兄だ。彼女の恋人にも夫にもなれない」
「兄なら止められるだろう」
「だめだ。だから私はこうして君に頼みに来ている。君は彼女を愛しているだろう。私と同じくらい」
同じくらい。
馬鹿言うな。
お前なんかと比べるな。
「一度、彼女と会ってくれないか。それだけでいい」




