彼女の詩(うた)3
修道院入院への手続きを勧めた。
入院する日、馬車を待っていると、彼が来た。
兄だと思って部屋を開けたら、彼がいた。
彼の様子はちょっと違っていた。
「二人で話してみてくれ」
「待って!」
「待て!」
出ていこうとする兄を二人して止めたけど、扉は無情に締まる。
「怖いよな。俺と一緒じゃ」
彼は兄を追って出ていこうとした。
「待って」
そう呼び止めた自分に驚いた。
彼は止まり、ゆっくりと振り返る。
「記憶は戻りましたか?」
私の問いに彼は呆然と佇む。
やっぱり記憶は戻ったの。
そしたら、私への執着も戻ってきたのかな。
私はおかしい。
あんなに彼から解放されたかったのに。
「……すまない。本当にすまない。謝る以外何をしていいかわからない」
彼は床について、謝罪を繰り返す。
「謝る必要はありません。もう」
謝罪はもう十分だった。
時は戻らない。
私の傷ついた心も。
だけど、私の彼の気持ちは戻ってきた。
馬鹿みたいに。
「あなたは、私のことをどう思いますか?」
酷い問いだと思う。
彼は床に跪いたまま、私を見上げる。
その表情は、驚き、戸惑い。
そうよね。
でも私はもう何も怖くない。
「あなたは私を罵り、私をとても傷つけた。だけど、私のことを愛してくれていた、そう思ってました。それは間違ってませんか?」
「……正しい。俺は、お前を愛している。まだ愛している。だけど、お前を傷つけるつもりはない」
彼はゆっくりと話す。
「私を二度と傷つけないと誓ってくれますか?」
「勿論だ」
「私ともう一度婚約してくださいますか?」
「いいのか?」
「はい」
愚かかもしれない。
だけど、私はもう一度彼に囚われたかった。
「俺は誓う。もう二度とお前を傷つけない。お前を愛してる」
彼はゆっくりと立ち上がった。
「触ってもいいか」
「はい」
彼は私の手を取り、片膝をついた。
そして手の甲にキスをする。
「誓いだ」
そう微笑む彼は、私が初めて見た彼の笑顔と同じ。
愚かかもしれない。
だけど、私は彼をもう一度信じることにした。




