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山形迅の親友の話。

注意

この話は作者が書きたくなって書いた話です。

俗にいう、番外編とか幕間とかスピンオフみたいなものです。

ただし設定は本編にがっつり噛みます。

本編からは若干ずれるし、時間軸も曖昧です。

それでもいいよって人は読んでください。

俺の親友の話をしよう。

俺が律や達彦と出会ったのは中学1年の春だ。

まあ、入った部活が同じだったという、そこら中に有り余って地べたに転がり落ちているような至極単純明快な理由だ。

俺達3人が入部したのは吹奏楽部だった。

俺は幼稚園の頃から楽器を習わせて貰っていたから、吹奏楽部に入るのは当然の流れだったし、達彦も家が楽器屋をやってるからある種必然かもしれなかった。

だけど律に限っていえば、別に何か楽器が出来るわけでもなく、これといって好きな音楽がある訳でもなく、単に仲の良かった達彦が入部したから、便乗して入った、というような感じだった。

吹奏楽部は大抵、男子の比率がめちゃくちゃ少ない。これは男子校でもない限り、どこの吹奏楽部でも言えることだとは思う。

うちの学校も例に漏れず、その年に入部した男子は俺たち三人だけだった。

見学に来ていたうちの一人、昏く沈んだ橙色の目を持った少年に興味本位で声をかけた。

「なあ、お前、何の楽器吹くの?」

「ごめん、おれ、楽器とかいまいち知らないんだ」

と気まずそうに返した。

それが俺と律の初対面。

お世辞にも、良い印象とは言えない出会い方だった。


「あぁ~、そんなこともあったね...」

「そういやあの時...楽器選択の時、なんでコントラバスを選んだんだよ?」

ハンバーガー屋でポテトをつまみながら、俺は律=由莉に適当に話を振った。

「あぁ、それは...えーと」

由莉は少し考えてから、

「一つ、見た目がかっこよかったから」

と言った。

「最初がそれかよ...」

「いいだろ別に。二つ、管楽器を吹ける気がしなかったから」

「まあ適性検査全落ち、って感じだったもんな」

「初めて楽器触ったんだから仕方ないだろ?それで三つ。体全体で音を感じられるから」

「あぁ...それは」

そうだろう。コントラバスは弾くとき、楽器の胴体の側面を骨盤にあてる。だから、楽器の振動がそのまま体に伝わるのだ。

「あの感じがこう...ビビビーッて来たんだよね」

「昔からフィーリングで決めるタイプだよね、由莉は」

と、ずっと黙ってシェイクのストローを加えていた達彦が急に口をはさむ。

俺と由莉は視線を交わし。

「いたんかお前」

「達彦...居たんだ?」

「いたよ!!!最初からずっと!!!!」

いやぁ、相変わらず殴るといい音がするなぁ。

「俺らの勝ちだな」

ケラケラと笑いながら愉快そうに由莉が言った。

何に勝ったのかさっぱりわからないけど、何か勝った気がしたので由莉とサムズアップを交わしあった。

「そういえば」

俺達を見ていた達彦が、ぽつりと、

「由莉、最近女の子らしくなって来たけど、僕達といるとたまに律の時と同じ言葉遣いになるよな」

と言った。

「あ~、お前らといるとちょっと油断するんだよね...」

今度は達彦と頷きあって、

「俺らの由莉ちゃんは`お前ら`なんて言わない!」

「自分のことを俺って言ったりしない!」

と、全力で茶化した。

「うるせー!!!ばーか!!!」

「ゔっ!?」

語彙力が小学生まで戻ったような雑な罵倒と共に横に座っていた達彦の鳩尾にグーパンを見舞い、そのまま向かいの俺のほうへ手を伸ばそうと...して届かなくて諦めたらしい。ぽすん、と席に座って腕を組んだ。

「なんで僕だけ...」

苦しげに呻く達彦に一瞥もくれず、由莉は

「自業自得、迅は運が良かっただけだから」

と言って頬を膨らませてぷい、とそっぽを向いた。

「お、今のはちょっと女の子っぽい」

「ふん」

「うぎっ」

余計なことを言った達彦は脛を踵で蹴られ再び悶絶することとなった。


帰り道。達彦と別れた俺達は、夕陽で赤く染まったアスファルトの上を歩いていた。

「なあ由莉」

「なに?」

由莉に軽く睨まれた。まださっきのことを根に持っているらしい。が、長い睫毛に縁取られた大きな目を半目にしようと、形の整った唇をへの字に引き結ぼうと、小さな子供が拗ねてるようにしか見えず、可愛らしい以外の感情がなにも浮かんでこないので黙殺。

「どう?女になってから」

その質問は自分の口から出たものとは思えなかった。俺の知っている山形迅は、こんなことを聞く人間ではない。

そしてその質問は由莉にとっても予想外だったらしく、彼女は不思議そうに首を傾げた。

「どう...ってなにが?」

流石にアバウトすぎたか。

「楽しい?」

なんとなく、思い浮かんだ言葉をそのまま口にしてみる。

「うん、楽しいよ。...迅がそんなことを聞いてくるなんてね。明日は槍でも降ってくるのかな」

「由莉が冗談めかして言った言葉に、そうだな、と頷く。

「俺もそう思う、普段の俺なら絶対に聞かない」

「何か心境の変化でもあった?」

「人は変わるんだよ。誰かに変えられるんじゃなくて、自然に、自分から変わることになる」

「...?どういう意味?」

「言葉のままだ。三年前のお前と今のお前、変わっただろ」

「性別と、名前もね」

「そうだけど。俺が言いたいのはそこじゃなくて」

自分の口下手さが鬱陶しかった。

何とか言葉を選んで、口に出す。

「三年前のお前、生きてても死んでるような顔してただろ」

「あー...うん、ごめん」

「謝ることじゃない。むしろ逆に近い」

「逆?」

「俺はお前が変わるところを見てた。それも二回も。だからこそ、人は変わるって気づけた」

そこまで言って、少し恥ずかしくなる。

「まあ戯言だよ、忘れてくれ」

照れ隠しのために言った。

「私はね」

唐突に、由莉が話し始めた。

驚いて由莉の方を振り返る。

「私が私になってから、律が律じゃなくなってから、ずっと隣に居たはずの迅や達彦が遠くに行ってしまうかもって思ってた」

赤く燃える夕陽を眺めながら、もっと遠いものを見据えるように、由莉は続ける。

「でも違った。全然そんな事は無かったよ。二人とも、やっぱり二人のままだね」

「当たり前だ」

見上げるようにして俺の目を見据えた由莉の橙と蒼の双眸が、心の奥底までを見通すかのように透き通った色を持った。

「うん、わかってる。...というかわかったよ。私が今もちゃんと私のままで生きていられるのは、二人がこれまで通りに接してくれているからだって思ってるよ」

だから、ありがとう。そういって、由莉は屈託の無い笑顔を浮かべた。

可愛らしい笑顔だった。それでいて安心させられるような、頼りがいのある笑顔だった。守りたいと思わせるような笑顔だった。

ああ、適わないなぁ。

俺の親友は、小さくてかわいい。

だけどそれ以上に、どうしようもなく格好いいのだ。

前書きでも書きましたが。

これ、作者が迅が好きすぎて書いた話なので、ほかのキャラクターのこういったエピソードを書けるかわかりません。書けそうなら書きます。このキャラのエピソードが見たいとかあればコメントをください。

ここからは作者による迅くん所見です。時間があればぜひ。


迅は飄々としてて、ちょっと中二の入った子なんですが、それなりに考えて行動しているキャラクターとして描きたいなって思ってます。

それでもって、多分この作品において一、二を争うレベルで好きなキャラクターです。この作品における裏の主人公は彼にする予定です。

主人公、由莉(律)

裏主人公、迅

対偶主人公、ゆう

ってイメージです。

迅君は作者がえこひいきするので、なんだかんだ登場回が多いと思います(((

ほかのキャラが好きな方、ごめんね!

このキャラ好きだからこのキャラの話見たいって方、新しくこのキャラの話書けってコメントください、書きます。

なんだかんだで全員愛着があるのです。

まあこれからもゆっくりゆっくり更新していくと思うので飽きるまで、忘れないうちは見てやってください。

長文読んでくださった方、ありがとうございました、また会えたら、次話あとがきとかで会いましょう!

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