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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
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第93話 よっぽど効率的だと思うけど

書いててキャラクターが自分の手から離れていく感覚ってありません?

 ~フォーリン・カーズ:路地裏の空き地~


 ローゼは放られた二挺の拳銃の間を潜り抜け、駆ける。普通、獲物を自ら手放す場合には何かしらの意図がある。負けたい人間でもないかぎりは、だが。

 そしてブラックはそのタイプではない。即ち、これは隙ではない。ならば何故、ローゼは駆け出したか。その答えはすぐに明かされる。


「マリオネッテ・スレイヴ!」

「! 銃が!?」


 ブラックの掛け声と、セリオの声と共に、中空浮かぶ銃は自然の摂理を放棄し、その銃口をローゼに向け、マズルフラッシュと共に鉛の弾丸を放つ。そしてローゼは中空を足場にして跳ぶ。結果として銃弾は空を切り、ブラックの真横を掠めていった。

 ブラックはそれを意にも介さず腕を振るうて銃口どころか銃そのものを移動させる。


「Hum,大掛かりな即興カラクリ屋敷か。器用だねぇ」

「流石に初見でばれたのは初めてだけどな、っとぉ!」


 変幻自在にシュートポイントを変える弾丸をローゼは中空を蹴り、中空をつかみ、中空にぶらさがり、まるで空を飛ぶかのように躱していく。

 そんな駆け引きを見て、セリオは目を細めた。


「なによ、あれ、見えない糸でもあるみたいな」

「да、ビンゴ、その通り。ああ、回ってたのはワイヤーの中継ポイントを作ってたのか。それで蜘蛛の巣のように張り巡らせた」

「それで、あいつはそれに気付いて逆に利用? ハン、中々にふざけたやり方ね」


 セリオの吐き捨てるような台詞にハルは首を傾げる。


「よっぽど効率的だと思うけど」

「元々のあいつのファイトスタイルでもあるけれど、相手の策、技術を否定してんのよ。『それがどうした』『無駄だ』ってね。あいつ自身は好きだけれど、あの戦い方は好きになれない」

「……セリーが言う? それ」

「まあ、確かにそれもそうなんだけれど」


 セリオの煮え切らない態度にハルは首を掻く。


「真正面からぶつかるやり方のどこが理想的な戦い? 腕力の強いほうが、早いほうが勝つ。そんなものTCGでもやっておけばいい。小賢しかろうが何だろうがこっちが無傷、相手はズタボロ。それが理想的な戦いだよ。俺はそれで構わない」

「……落とし穴に嵌って負ければいいのよ」

「そんな策を使わなければならないほど評価されてるってことだ。気分がいいね」


 外野のそんな与太話の中、戦いの展開は推移していく。外野の険悪さとは裏腹に両者とも笑みを浮かべて攻撃、防御の駆け引きを楽しんでいた。


「さあ、これは通じるか!? 通じなければどう切り返す! 僕を高めてくれ! ローゼッ!」

「構造が瞬間ごとに複雑になっていくか! どう捕らえる!? どう絡め取る!? 答えてみろブラァック!」


 主語述語が所々で抜け落ちる。そんなやり取りの中でも言葉は通じる。息遣い、表情のわずかな変化、極度の緊張状態による無意識の筋肉の痙攣。

 それら総てを取り込み、判断し、隙を見つけて果敢に飛び込み、危機を見つけて咄嗟に飛び退く。銃弾が飛び交い、イトの迷宮は複雑を増していき、互いの体に裂傷が刻まれていく。

 わずかな違和感一つ逃さず戦うのだから痛覚どころが感覚を遮断など僅かたりともしてはいないだろう。それでも鋭い痛み、鈍い痛み、それぞれを体中に響かせながらも二人の表情から笑みが消えることはない。

 そして、状況が動く。


「ワイヤーストリングス、聖者の十字架(ゴルゴダ・クロス)!」

「くぉっ!」


 ブラックの操る糸がローゼを捉え、ローゼは十字架に貼り付けられたかのように空中で静止する。


「終わりだ! ワイヤーストリングス、大・圧・殺ァァァツ!」


 ブラックが交差した腕を広げ始めると糸が纏わりついたローゼの体の節々に裂傷が浮かび始める。


「ッ!?」

「決まりか?」


 セリオが息を呑み、ハルが淡々と呟いたその瞬間、異常は起こる。

 徐々に開いていたブラックの腕が止まり、開くどころか逆に己が身を抱きしめるかのように閉じたのだ。

 それがブラック本人の意思でないことなどブラックの表情を見たなら一目瞭然であるし、その異常が起こった瞬間からその空間全域から破裂音が響き渡る。破裂音とはいっても風船などではなく、銃弾が空気の壁を突き破り音速を超えたときのような、そんな音が。


「……相性、というのもあるんだろうが。初めてな気がするな、このゲームの中、ここまでする羽目になったのは」


 ローゼがポツリと呟くと、破裂音はいっそう強く響き、ローゼの身体は宙に浮いた状態からそのままの体勢で着地した。別に拘束されたままというわけではない。ローゼ本人がなんとなくそのままの体勢でいたというだけ。


「な、何を……ッ!?」

「昔はやってたらしいけど今はやらないらしいね」


「蛙の筋肉に電流流して動かす実験」


「!?」


 ブラックはそのローゼの言葉で総てを察した。


「まあ俺もそういうのやったのはカレッジ行ってからなんだけど。まあ、あれだよ。君の敗因は」


 ローゼはゆっくりと固まったブラックに銃口を向けて言い放つ。


「ワイヤーが電導性だったこと」


 そして、引き金が引かれ、ブラックの眉間に紅い華のエフェクトが舞った。

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