↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
85/131

第84話 ああ、なんて素晴らしきマイラの森

※この物語はフィクションです。悪しからず

 ~武田山~


 数時間車を走らせて、辿り着いたのは広島県にある第四期火山のうちの一つ、武田山。その麓にある登山客用の駐車場は空いていた。

 その理由は簡単で、数年前、噴火事故が起こったからだ。その噴火によって元々あった建物も溶かし流され、その残骸は山肌に残ってその被害を物語る。

 山を登り、中腹に至ると流れたマグマが固まったごつごつとした岩がログハウスの残骸を押しつぶしているのが見える。ログハウスの癖に妙に耐火性に優れている。

 その残骸を横目で見ながら葉楽は士狼に問うた。


「噴火、しませんよねぇ?」

「サイクルを信じればまだせんわ。まあ、溶岩だまりに怪獣が突っ込んだとかがあれば別じゃがのぉ」

「嫌ですよ俺ぇ、初老のオッサンと混じりあって死ぬのぉ」

「……なんかキミ、毒が強くなっとらんか?」


 士狼は嫌そうな顔でさらっと吐かれた罵倒の言葉に顔を顰めながら山道を登っていき、葉楽もそれについていく。

 しばらく登った後、川のせせらぎが聞こえ始め、遠めにだが生い茂った木々が見え始める。しかしそれと同時に何かを焼いたような臭い、それに腐った卵のような臭いも香る。


「おお、前に来たのは噴火の前じゃったが、やっぱりのこっとったか」

「木? 川? 噴火してまだ数年しか経ってない火山に?」


 それを確認して駆け出す士狼だが、葉楽は、頭の中の知識と矛盾する目の前の光景に首を傾げていた。

 山道を登る最中、明らか過ぎる噴火の跡を眺めて登ってきたのだから、木々も押し流された可能性が高い。地下水脈だって火山灰やその他もろもろで埋まっていることだろう。まあ、川はいい、が、生い茂る木には明らかに数年でここまで育ちきらないものばかりで噴火の時も巻き込まれなかったことが不思議なほどだ。当然、葉楽が拾われたのは噴火した後のことなのでこの山のことは資料でしか知らない。だが、葉楽が資料の写真を思い返してみても噴火して流れ出た溶岩の流れ道には中腹でこんなに木々が生い茂るほどの隙間などなかったはずだ。

 葉楽がいぶかしんでいると先々進んでいた士狼は振り返って葉楽に向かって大きな声で呼びかける。


「おぉい! 不思議がるのも当然じゃがの、もっと不思議なものを見せに来たんじゃ、はよぉきんさい!」

「これより不思議なものぉ? 氷漬けの怪獣の子供とかですかぁ?」

「最近瀬尾さんとこの娘の影響受けすぎちょらんか? 葉楽君」


 士狼は渋い顔をしながら手招きすると、葉楽は首を傾げながら山道を登っていく。真っ直ぐ頂上へと向かっている上に勾配も急で山道と呼称していいものなのか非常に困るが、周りの山肌はごつごつとしていて比較的なだらかな山肌が一本線を引いたようにある、といえば山道と呼称するしかない。なにせ、登るための唯一の道のようなものだからだ。士狼は途中途中で足を滑らせそうになるが、葉楽は不安定な足場をものともせず士狼が体制を崩すたびに支えながら山道を登っていく。森と呼称すべきほど生い茂った木々の元に到着すると、士狼は息も絶え絶え、葉楽はけろっとした顔でぴんぴんしていた。まあ、鍛え方が違うし年齢も違うので仕方がないのだが。


「しばらく休みますかぁ?」

「え、ええよ、心配要らん。見ながら休憩すればええじゃろうて」

「山道滑りますよぉ? 森の中になるから葉っぱとか根っことかで余計にぃ」

「まぁだそんなに歳食っちゃおらんわい。ええからほら」

「大丈夫かなぁ」


 息を整えた士狼に連れられ葉楽は森の木々を掻き分けながら奥へ奥へと進んでいく。やはり士狼は葉楽の懸念どおり時々足を滑らせたり引っ掛けたりして体勢を崩し、葉楽に支えられる羽目になっていたが。

 そうこうしながらしばらく進むと、川が流れ、光が降り注ぐ開けた場所へと辿り着く。恐らく先ほどから葉楽の耳に入ってきていた水音のもとなのだろうが、それより何より目を惹くものがあった。


「川の上に火が……?」


 そう、川の上にポツ、ポツ、と火がついたり消えたりを繰り返していたのだ。あまりにも非現実的な光景に葉楽は言葉を失い、その様子を見た士狼は息を切らしたまま笑った。


「不思議じゃろう? 昔、巨人と怪獣が戦った跡に出来ておってのぉ。その時巨人の味方をした怪獣の名前から、ここは『マイラの川』と呼ばれておる。なんでもこの川の水源から揮発性のある可燃性のガスが水に溶け込んでおるらしくてのぉ、しかもこの下に温泉の水源があって温められ、水底で水流で常に岩が削られできた石がぶつかり合って火がついておるそうじゃ。濡れとるのによぉやるよの。あぁ、これ触った瞬間大火傷確定じゃから注意じゃの」

「川上の火も、不思議ですけれど、今さっきまでまるでなかった風がやまない……これは」


 葉楽が風に揺らめく服を押さえながら呟くと、士狼は更に笑みを強くする。


「おお、よぉ気がついた。風の大雑把な仕組みはわかるな? 言ってしまえば空気の温度差で生まれるわけじゃが……温度差が生まれるわけは目の前にある」

「川上の、火」

「そう、河川の上の火が大気を熱し、上昇気流を生み出し、上に登ってあいた隙間を周りの空気が埋めに動く。それがこの風じゃ。夏でも止まらん凪知らず。そしてその風が木の葉を落し、木の葉は微生物に分解されて大地となり、大地は川に削られ流され、そしてぶつかり合って火を生み、火は大気を熱して風を生む。ここは循環しておるのよ。まあ、ずっとずっと残るわけじゃあないんじゃろうが」


 士狼はそういいながら手近な座れそうな石に腰掛け、膝に肘を突いて頬杖をつく。


「その総エネルギーはいくらになるのか。元々馬鹿げたエネルギーで出来たんじゃろうがそれでも重力っちゅうエネルギーを借りて動かしとるわけじゃし始動エネルギーよりも……」


 その言葉を聞いた瞬間葉楽の脳裏に稲妻に似た閃きが迸った。トールの必殺技、『ゼータ・ブラスター』を上回る技の秘策を。


「それだ! 循環してエネルギーの勢いを増す、ああなんで気がつかなかったんだ! 何か書くもの、ええい、その辺の木でいい!」

「ああ!? 綺麗な循環の要素が!?」


 葉楽は辺りを見回すと躊躇なく近くの木の枝をへし折って子供が地面に落書きをするように振るい、士狼の断末魔にも似た悲鳴を無視して地面に仮定数やら変数やらが躍る数式を組み立てていく。


「四属性の魔法エネルギーをそれぞれこれくらいの出力、それぞれ自分の出した最高出力、一つ本当に予想だけの仮定だが、を組み合わせ、加速定数をこの数式に当てはめてそれぞれの出力を計算、更に相乗効果も考えて、コストパフォーマンスは消費MPと発揮するであろう威力で求めて……! ブルーミン・ストリームが霞むぞこれ! ああ、何で気付かなかったんだこんな単純なことに! まあ、これ反動求めてないな、それは……この反動を軽減するために……」


 がりがり地面を削っていく葉楽に声を掛けようにもトリップ決めてるマッドな雰囲気醸し出す科学者にちょっかいを出すと手酷く咬まれることを士狼は知っていた。どころか己の身で体験したことがあった。御察しの通り相手は帰国して間もない頃の葉楽である。そんな士狼が手をこまねいていることをいいことに葉楽は更にヒートアップしていく。


「思わぬ欠点もあるが、それは思索の醍醐味、高威力だから仕方ない、で、奴の光線の詠唱をまるっと信じたとしてそこから概算される威力は……」


 葉楽は少し考え込んだと思ったらいきなり士狼のほうへと向き直り、木の枝を川へ投げ込み士狼の手を両手で握り締める。


「ここへ連れてきてもらい、本当にありがとうございます! まだ仮定の段階ですが、奴の光線の威力を約50%上回る技を思いつきました!」

「お、おぉ、よかった、のぉ?」

「そう、四大属性、アクア、テッラ、フィアー、ヴェント! 水、土、炎に風! 五行思想にも通じるそれは循環を司る属性であり増すことが出来る! その循環を無限の字を描くようにして加速させ、一気に放射! なれば天裂く光となる! ああ、なんて素晴らしきマイラの森! 恐らく俺の守護獣なのだろうマイラ! Thanks!」

「久しぶりに見たのぉ、この論理が勢いよくすり替わっていく言語。聞いたの方がええのかもしれんが」

「つまりこれは世界が俺の勝利を後押ししているも同然であり次の戦いで俺の負ける余地など」


 葉楽が高らかに気の早すぎる勝利宣言を上げようとしているところに思わぬ邪魔が入った。葉楽の胸ポケットの中にある携帯端末が着信音を響かせたのだ。


「何だいったい人の気分がいいときに、あ、出ても?」

「ええよ、気にせず出んさいよ」


 士狼の許可も得たところで、葉楽が携帯端末を取り出し液晶の発信者の名前を見ると『学校事務』とだけ表示されていた。


「ん? ゼミも講義も、手続きは大体済ませたはずだけれど」


 葉楽は首を傾げながら通話ボタンをタップすると耳に当て通話を始める。


「もしもし、どうしましたぁ? 何か手続きに不備でもぉ?」


 葉楽が不満げに用件を問うと、電話の向こうの事務員がペンを走らせながら葉楽にとある一言を告げる。それは葉楽のテンションを絶頂状態からどん底に突き落とすには十分な一言であった。


『ええ、ゼミの中間発表のことなんですけれど、まだスサノト教授のゼミは概要すら提出されていないので確認を』

「えっ、中間発表?」


 葉楽の脳裏に色々な情報が駆け巡るが、その中にゼミの中間発表などどこにも存在はしなかった。葉楽は震える声で聞き返す。


「中間発表、って、俺、知らないんですけど何かの間違いじゃあ」

『ああ、そういえばスサノト教授はゼミ受け持つの今年度が初めてでしたっけ。誰かから聞きませんでした?』

「い、いえ、全く」

『まあ、そういうことはありますよね。で、発表はどうしますか? 不参加、ってのも出来ますが』

「あー、えーっと」


 葉楽は不参加にしようか悩むがとりあえず、とあることを確認せねばならなかった。


「矢沢教授は?」

『矢沢教授ですか? えっと、参加、です「参加でお願いします」あ、はいわかりました、締め切りは三日後の昼までですので。それでは失礼します』

「失礼します」


 葉楽は食い気味で答え、電話が切られたのを確認すると迷いなく電話帳から灰羅を選択し、通話ボタンを押す。

 灰羅が数コール音で電話に出ると、葉楽は情けない声で叫んだ。


『もしもし?』

「灰羅、ゼミの研究発表できるレベルまででっち上げるの手伝って! 中間状況だから未完成で良いからぁ!」

『はぁ……? ッ! アンタ! もしかしてゼミの研究発表のこと忘れてたの!?』

「立て込んでたから! ついうっかり!」

『ゲームする余裕あったでしょうがこの弩間抜け! エルにも言うわよ、良いわね!?』


 ここから3日間、葉楽がクリエイト・ワールドにログインすら出来なかったのはいうまでもない。

さぁて、全く予定になかったことを忘れてたハルのメイン話かかないと空気になるな、これ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。